技巧︵クラフト︶が芸術︵アート︶を可能にする
﹃ゲド戦記﹄﹃闇の左手﹄のアーシュラ・K・ル=グウィンによる小説家のための手引き書
人々は小説を書く。書き方は知らない。
心はあらすじや教訓を求め、目は文体を捉えない。
この紹介文で使われている文体が、本書の第五章の練習問題を意識したものだと気がつく人には、小説の姿が見えている。
――円城 塔︵作家︶
﹁芸術には運もある。それから資質もある。それは自分の手では得られない。ただし技術なら学べるし、身につけられる。学べば自分の資質に合う技術が身につけられる。﹂︵本書﹁はじめに﹂より︶
ハイファンタジーの傑作﹃ゲド戦記﹄や両性具有の世界を描いたフェミニズムSF﹃闇の左手﹄などの名作を生み出し、文学史にその名を刻んだアーシュラ・K・ル=グウィン。
本書は、ル=グウィンが﹁自作の執筆に励んでいる人たち﹂に向けて、小説執筆の技巧︵クラフト︶を簡潔にまとめた手引書である。
音、リズム、文法、構文、品詞︵特に動詞、副詞、形容詞︶、視点など、ライティングの基本的なトピックを全10章で分かりやすく解説。
各章には、ジェイン・オースティンやヴァージニア・ウルフ、マーク・トウェイン、チャールズ・ディケンズなど偉大な作家が生み出した名文が︿実例﹀として収録され、ル=グウィン自身がウィットに富んだ︿解説﹀を加えている。また章末に収録されている︿練習問題﹀を活用することで、物語のコツと様式について、自らの認識をはっきりと強固にすることが可能になる。
小説の執筆は、技芸︵アート︶であり、技巧︵クラフト︶でもあり、物作りでもある。
執筆の楽しみを満喫することができる一冊。
関連リンク
メディア掲載
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『京都新聞』 2021年7月21日号
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『毎日新聞』 2021年9月4日号 評者:若島正
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ENGLISH JOURNAL ONLINE
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『産経新聞』 2021年9月26日
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『日刊ゲンダイ』 2021年11月6日
目次
はじめに
第1章 自分の文のひびき
第2章 句読点と文法
第3章 文の長さと複雑な構文
第4章 繰り返し表現
第5章 形容詞と副詞
第6章 動詞――人称と時制
第7章 視点︵POV︶と語りの声︵ヴォイス︶
第8章 視点人物の切り換え
第9章 直接言わない語り――事物が物語る
第10章 詰め込みと跳躍
付録‥合評会
用語集
訳者解説