ブリストル スカウト
用途 :戦闘機、偵察機
分類 :複葉機
設計者 :フランク・バーンウェル
製造者 :ブリティッシュ&コロニアル(ブリストル飛行機 )
運用者
初飛行 :1914年 2月23日
生産数 :374機
生産開始 :1914年
運用開始 :1914年
ブ リ ス ト ル ス カ ウ ト ︵ B r i s t o l S c o u t ︶ は 民 間 の レ ー ス 機 と し て 作 ら れ た ロ ー タ リ ー エ ン ジ ン 単 発 、 単 座 の シ ン プ ル な 複 葉 機 で あ る 。
黎 明 期 の 軽 量 飛 行 機 の 例 に も れ ず 、 イ ギ リ ス 海 陸 軍 の 航 空 隊 に よ っ て 索 敵 機 ︵ S c o u t ︶ な い し 高 速 偵 察 機 と し て 採 用 さ れ た 。 初 期 の 単 座 機 の ひ と つ と し て 戦 闘 機 と し て も 使 用 さ れ た が 、 当 時 は 効 果 的 な 武 装 を 取 り 付 け る こ と が で き ず 、 ま た イ ギ リ ス で 同 調 式 機 銃 が 使 用 で き る よ う に な っ た こ ろ に は 本 機 は 時 代 遅 れ と な っ て い た 。 イ ギ リ ス で は 1 9 2 0 年 代 初 期 ま で 、 単 座 戦 闘 機 の 事 を ス カ ウ ト と 呼 ん で い た 。
ブ リ ス ト ル ス カ ウ ト が 活 躍 し た 1 9 1 4 年 か ら 1 9 1 6 年 の 時 期 は 、 戦 闘 機 と い う 機 種 が 明 確 な 形 を 取 り 始 め た 時 期 で あ り 、 イ ギ リ ス の ﹁ 牽 引 式 ﹂ 航 空 機 に 武 装 を 施 す 初 期 の 多 く の 試 み が 、 ブ リ ス ト ル ス カ ウ ト に 対 し て 実 地 に 行 わ れ た 。
最 初 に 試 み ら れ た の は 2 機 目 の ス カ ウ ト B ︵ R F C ナ ン バ ー 6 4 8 ︶ へ の 2 丁 の ラ イ フ ル 装 備 で 、 左 右 に 各 1 丁 ず つ 、 プ ロ ペ ラ 回 転 面 の 外 側 に 前 方 に 向 け て 装 着 さ れ た 。
イ ギ リ ス 陸 軍 航 空 隊 ︵ R o y a l F l y i n g C o r p s ︵ R F C ︶ ︶ 第 6 飛 行 中 隊 の ラ ヌ ー ・ ホ ー カ ー ︵ L a n o e H a w k e r ︶ 大 尉 が 使 用 し た 2 機 の ス カ ウ ト C ︵ ナ ン バ ー 1 6 0 9 お よ び 1 6 1 1 ︶ に は 、 そ れ ぞ れ 、 ホ ー カ ー 大 尉 の 考 案 し た 架 台 に よ っ て 胴 体 の 左 側 に 1 丁 の ル イ ス 機 銃 が 装 着 さ れ た 。 そ れ は 2 機 目 の ス カ ウ ト B に 試 み ら れ た ラ イ フ ル の 装 着 方 法 と ほ ぼ 同 じ も の だ っ た 。 ホ ー カ ー は 1 9 1 5 年 7 月 25 日 、 パ ッ シ ェ ン デ ー ル と ジ ル ビ ー ク ︵ Z i l l e b e k e ︶ の 上 空 で 、 1 6 1 1 号 機 に よ っ て 2 機 の ド イ ツ 軍 機 を 撃 墜 し 、 3 機 目 を 戦 闘 不 能 に さ せ た 。 そ の 功 績 に よ り 、 彼 は イ ギ リ ス 軍 の パ イ ロ ッ ト と し て 初 め て 、 空 中 戦 の 戦 果 に 基 づ い て ヴ ィ ク ト リ ア 十 字 勲 章 を 与 え ら れ た 。
最 初 に 製 作 さ れ た 24 機 の イ ギ リ ス 海 軍 航 空 隊 ︵ R o y a l N a v a l A i r S e r v i c e 、 ︵ R N A S ︶ ︶ の ス カ ウ ト C の 武 装 は ほ と ん ど が ル イ ス 機 銃 1 丁 で 、 何 機 か に は ニ ュ ー ポ ー ル 11 に 倣 っ て 上 翼 の 中 央 に 装 備 さ れ た が 、 イ ギ リ ス 軍 パ イ ロ ッ ト の 多 く は 、 ル イ ス 機 銃 を 前 部 胴 体 に 装 着 す る と い う 、 よ り 不 適 切 な 方 式 を 採 用 し た 。 そ れ は ま る で 後 の プ ロ ペ ラ 同 調 機 銃 の よ う に プ ロ ペ ラ の 回 転 面 を 通 し て 前 方 に 発 射 す る も の だ っ た が 、 当 時 は ま だ 同 調 が な さ れ て お ら ず 、 そ の た め し ば し ば プ ロ ペ ラ の 深 刻 な 破 損 事 故 が 起 き る こ と と な っ た 。 ロ ー ラ ン ・ ギ ャ ロ ス が モ ラ ー ヌ ・ ソ ル ニ エ N 単 葉 機 で 試 し た 弾 丸 偏 向 用 楔 の プ ロ ペ ラ へ の 装 着 も 1 機 の ス カ ウ ト C ︵ N o . 5 3 0 3 ︶ で 試 験 さ れ た が 、 そ の 場 合 に は モ ラ ー ヌ N と 同 様 の 巨 大 な シ チ ュ ー 鍋 の よ う な ス ピ ナ ー を 必 要 と し 、 そ れ を 使 用 す る こ と は ス カ ウ ト C の 80 馬 力 ル ・ ロ ー ヌ ・ ロ ー タ リ ー エ ン ジ ン に 十 分 な 冷 却 気 を 供 給 で き な く な る 結 果 を も た ら し た 。 そ の た め 、 弾 丸 か ら プ ロ ペ ラ を 守 る た め の 偏 向 楔 の 装 着 は そ れ 以 上 検 討 さ れ る こ と は 無 か っ た 。
戦 争 の 初 期 に は 、 ド イ ツ の ツ ェ ッ ペ リ ン 飛 行 船 を 撃 墜 す る た め に 、 イ ギ リ ス 海 軍 航 空 隊 の ス カ ウ ト D に よ り ﹁ ラ ン ケ ン ・ ダ ー ト ﹂ と い う 特 殊 な 武 器 の 使 用 が 試 み ら れ た 。 そ れ は ひ と つ に つ き 1 ポ ン ド の 爆 薬 が 装 填 さ れ た 、 空 中 投 下 可 能 な 矢 型 の 爆 弾 だ っ た 。 C ・ T ・ フ リ ー マ ン 飛 行 大 尉 の 操 縦 す る ス カ ウ ト D ︵ N o . 8 9 5 3 ︶ は 、 飛 行 甲 板 を 装 備 し た マ ン 島 蒸 気 船 ヴ ィ ン デ ッ ク ス ︵ 民 間 時 代 の 船 名 ﹁ ヴ ァ イ キ ン グ ﹂ ︶ の 前 半 部 分 か ら 飛 び 立 ち 、 1 9 1 6 年 8 月 2 日 、 ラ ン ケ ン ・ ダ ー ト に よ る ツ ェ ッ ペ リ ン L 1 7 の 撃 墜 を 試 み た 。 ラ ン ケ ン ・ ダ ー ト は ス カ ウ ト D の 胴 体 の パ イ ロ ッ ト の 足 の す ぐ 後 ろ に 垂 直 に 置 か れ た 2 本 の 筒 状 の 容 器 か ら 発 射 さ れ た 。 し か し ラ ン ケ ン ・ ダ ー ト は ツ ェ ッ ペ リ ン 飛 行 船 に 損 害 を 与 え る こ と が 出 来 な か っ た ば か り か 、 フ リ ー マ ン は ス カ ウ ト D を ヴ ィ ン デ ッ ク ス に 着 艦 さ せ る こ と が 出 来 ず 、 陸 地 か ら も 遠 く 離 れ て い た た め 、 海 面 に 着 水 し 、 機 体 を 放 棄 し な け れ ば な ら な か っ た 。
陸 軍 航 空 隊 の ス カ ウ ト へ の 同 調 機 銃 ︵ 後 に ソ ッ ピ ー ス パ ッ プ 戦 闘 機 で 大 成 功 を 収 め る マ キ シ ム タ イ プ ・ ウ ィ ッ カ ー ス 機 銃 の 空 冷 バ ー ジ ョ ン に 類 似 し た も の ︶ 装 備 の 試 み は 、 ま ず 1 9 1 6 年 3 月 ス カ ウ ト C の 後 期 生 産 型 N o . 5 3 1 3 に 対 し て 行 わ れ た 。 そ し て 、 他 に ス カ ウ ト C 後 期 型 と ス カ ウ ト D 前 期 型 の 合 計 6 機 に も N o . 5 3 1 3 と 同 様 の 装 備 が 行 わ れ た が 、 こ れ ら す べ て に 用 い ら れ た 大 型 の ビ ッ カ ー ス = チ ャ レ ン ジ ャ ー 同 調 装 置 は ビ ッ カ ー ス 機 銃 を 安 全 に 発 射 す る に は 不 都 合 を 抱 え て い た 。 こ れ ら の ス カ ウ ト の 1 機 が 、 テ ス ト に お い て す べ て の 弾 丸 を プ ロ ペ ラ 回 転 面 を 通 し て 発 射 し た の は 1 9 1 6 年 5 月 の こ と だ っ た 。
ブ リ ス ト ル ス カ ウ ト を 受 領 し た イ ギ リ ス 陸 軍 ま た は 海 軍 の 飛 行 隊 の う ち 一 つ と し て 最 後 ま で ス カ ウ ト を 使 い 続 け た と こ ろ は な か っ た 。 1 9 1 6 年 夏 の 終 わ り の 時 点 で は 、 陸 海 軍 い ず れ の 部 隊 に も 新 し い ス カ ウ ト は 供 給 さ れ て お ら ず 、 陸 軍 で は 推 進 式 の エ ア コ ー D H . 2 単 座 戦 闘 機 に 交 替 し た も の が 多 か っ た 。 少 数 の ス カ ウ ト は 中 東 ︵ エ ジ プ ト 、 マ ケ ド ニ ア 、 メ ソ ポ タ ミ ア 、 パ レ ス チ ナ な ど ︶ に 送 ら れ た 。 軍 用 最 後 の ス カ ウ ト は か つ て イ ギ リ ス 海 軍 航 空 隊 に 所 属 し て い た ス カ ウ ト D ︵ N o . 8 9 7 8 ︶ で 、 オ ー ス ト ラ リ ア の メ ル ボ ル ン 近 郊 の ポ イ ン ト ・ ク ッ ク の 基 地 に 1 9 2 6 年 10 月 ま で 在 籍 し て い た 。
ブ リ ス ト ル ス カ ウ ト は 最 前 線 で の 任 務 か ら 引 退 し た 後 は 公 式 に は 練 習 機 に 分 類 さ れ た が 、 実 際 に は ほ と ん ど 訓 練 部 隊 に は 送 ら れ ず 、 上 級 士 官 の 個 人 用 ﹁ 乗 用 機 ﹂ と し て 部 隊 に 残 っ た 。 ス カ ウ ト の 快 適 な 飛 行 特 性 ゆ え に 、 こ の 目 的 の 飛 行 機 と し て は 大 変 人 気 が あ っ た 。
フェリックストウ ポートベイビー の上部に搭載されたブリストル スカウト寄生戦闘機(1916年)
1 9 1 4 年 5 月 に 初 め て 公 開 さ れ た タ イ プ は 、 そ の 後 、 当 初 の 22 フ ィ ー ト ︵ 6 . 7 1 m ︶ の 幅 を 24 フ ィ ー ト 7 イ ン チ ︵ 7 . 4 9 m ︶ に 広 げ 、 か つ 上 反 角 を 1 . 7 5 度 に 設 定 し た 主 翼 に 交 換 し て 、 ﹁ ブ リ ス ト ル ・ ス カ ウ ト A ﹂ と 呼 ば れ た 。 ま た 方 向 舵 は 増 積 さ れ 、 80 馬 力 の グ ノ ー ム ・ ラ ム ダ ・ ロ ー タ リ ー エ ン ジ ン は 、 前 の 開 い た 円 形 を し た よ り 一 般 的 な 形 式 の ﹁ 6 分 割 ﹂ カ ウ リ ン グ に 収 め ら れ て い た 。 イ ギ リ ス 軍 が 1 9 1 4 年 5 月 14 日 、 フ ァ ー ン ボ ロ 飛 行 場 で 最 初 に テ ス ト し た と き 、 ス カ ウ ト A は 9 7 . 5 m p h ︵ 1 5 7 k m / h ︶ の 最 高 速 度 を 記 録 し た 。
ス カ ウ ト A は ま た 、 そ の 夏 2 つ の エ ア レ ー ス に 参 加 し た 。 そ れ は イ ギ リ ス の カ ー ベ リ ー 卿 が エ ン ジ ン 無 し で 4 0 0 ポ ン ド で 購 入 し た も の に 80 馬 力 の ル ・ ロ ー ヌ 9 C ・ 9 気 筒 ロ ー タ リ ー エ ン ジ ン を 取 り 付 け た 機 体 で あ っ た 。 こ の ス カ ウ ト は 2 回 目 の エ ア レ ー ス 参 加 時 、 イ ギ リ ス の ヘ ン ド ン と フ ラ ン ス の ヴ ェ ル サ イ ユ 近 く の ビ ュ ー ク ︵ B u c ︶ 飛 行 場 を 往 復 す る 途 中 で 、 燃 料 不 足 の た め イ ギ リ ス 海 峡 に 不 時 着 水 し た 。 フ ラ ン ス で 誤 っ て タ ン ク の 半 分 し か 給 油 さ れ て い な か っ た こ と が そ の 原 因 で あ っ た 。
スカウトBは、2機のスカウトAにエンジンのル・ローヌ 80 hp ロータリーエンジンを装備した改良型として作られ、翼の下面に半円形の「そり」を装着し、方向舵の増積が図られていた。これは第一次世界大戦が勃発したことに対応して、軍用の仕様として作られたものである。これら2機のスカウトBは、イギリス陸軍航空隊のシリアル644と648として1914年9月20日 から用いられたが、シリアル644の機体は、その年の11月20日 、不時着に失敗して修理不能な損傷を受けた。
「タイプ1 スカウトC」はスカウトBとほぼ同じであり、イギリス政府から、1914年11月5日 に陸軍航空隊用の12機、同年12月7日 に海軍航空隊用の24機の発注を受けた。両者とも、スカウトBと異なり、スカウトAと同じ80馬力のグノーム・ラムダ・ロータリーエンジンを装備していた。これら36機のスカウトCは、スカウトBの6分割カウルより正面開口部が大幅に狭い「ドーム・フロント」カウルを装備していた。これら初期のスカウトCはまた、主燃料タンクをパイロットの肩の部分の真後ろに置いていた。そしてタンクとその給油口の蓋に対応するために、パイロット席直後の背部に高いフェアリング が設けられていた。
海軍航空隊向け50機と陸軍航空隊向け75機からなるスカウトC後期製作型は、グノーム・ラムダ・エンジンが用意できない場合は80馬力のル・ローヌ9Cエンジンに変更することができるように、カウルを正面がフラットで奥行きのあるタイプに変更していた。また、重量配分を改善し、エンジン駆動の信頼性を増すために燃料タンクをパイロットの前に移した。残りのスカウトCのカウルは、前部開口部の狭いドーム型のままだったが、冷却効果を上げるために、しばしばカウル下部の後端が切り取られた。
最後の、そして最も多く生産されたタイプはスカウトDで、スカウトCへの一連の改善の結果として登場し、徐々に旧型と交替した。スカウトDへの変化のうち最初にあげられるのは75機の海軍用スカウトのうちの17機に適用された翼上反角の1.75度から3度への増加である。海軍用75機のうちのそれ以外の機体については尾翼面積の増大、補助翼幅の短縮およびエンジンカウルの前面開口部の増大が行われた。変更後のカウリングはスカウトBに類似していたがワンピースのものであり、また右舷下部にふくらみを持つものもあった。そのふくらみは、性能向上のためスカウトDの最後のバッチに導入された強力なグノーム・モノスーパープ・ロータリーエンジン(9気筒・100馬力)を納めるためのものだった。スカウトDは約210機が作られたが、その内訳は海軍航空隊発注分が80機、空軍発注分が130機であった。
● S . S . A . : フ ラ ン ス 政 府 向 け の 武 装 単 座 複 葉 機 。 1 機 の み 。
● G . B . 1 : 単 座 レ ー サ ー 。 製 作 さ れ ず ︵ ま た は 未 完 成 ︶ 。
● S . 2 A : ス カ ウ ト D の 複 座 戦 闘 機 型 。 練 習 機 と し て 2 機 の み 製 作 。
乗員: 1
全長: 20 ft 8 in (6.30 m)
全幅: 24 ft 7 in (7.49 m)
全高: 8 ft 6 in (2.59 m)
翼面積: 198 ft2 (18.40 m2 )
空虚重量: 789 lb (358 kg)
全備重量: 1,195 lb (542 kg)
エンジン: ル・ローヌ 9C ロータリーエンジン 80 hp ×1
最高速度: 94 mph (151 km/h)
上昇限度: 16,000 ft (4,900 m)
上昇率: 10,000ft (3,048m)まで18分30秒
面積重量比: 6.03 lb/ft2 (29.43 kg/m2 )
重量出力比: 0.067 hp/lb (0.11 kW/kg)
戦闘行動時間: 2.5時間
武装: ルイス機銃 またはヴィッカース機銃 ×1
Bruce, J.M. The Bristol Scouts (Windsock Datafile No.44). Berkhamsted, Herts, UK: Albatros Publications, 1994. ISBN 0-948414-59-6 .