吸収 (化学)
化学における吸収(きゅうしゅう、英語 absorption)とは、物質がある相から別の相に移動する現象、または人為的にそれを利用する方法である。
概要
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似た現象に吸着︵きゅうちゃく、adsorption︶があるが、吸着は物質が2相の界面に集積する現象なのに対し、吸収はバルク中に移動する点が異なる。
吸収も、吸着の場合と同様、ファンデルワールス力などによる物理吸収と、共有結合による化学吸収に分けられ、一般に物理的吸収は可逆的であり、化学的吸収は不可逆的なものが多い。
理論
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ある物質xに関して物理吸収が平衡に達した場合、その物質の2つの相における濃度[x]1と[x]2の比は一定である︵濃度が極度に高い場合などを除く︶。則ち
の関係が成り立つ。濃度比KN(x,12)は分配係数である。気体の吸収に関して、理想気体を仮定すれば、濃度の代わりに分圧を用いて同じ式が成り立つ。
特にKN(x,12)の値が1から遠い場合には、物質xの選択的な抽出に応用できる。
物理吸収はこの平衡に向けて自発的に進む︵則ち自由エネルギーが減少する︶。吸着は一般にエントロピー減少過程なので発熱反応となるが、物理吸収はエントロピー増大過程なので吸熱反応もある。
吸収可能な最大量は以上の性質によるが、吸収の速度は2相間の界面の面積にもより、固体の場合は多孔質の方がより速く進む。