咸北線
咸北線(ハムブクせん)は、朝鮮民主主義人民共和国咸鏡北道清津市浦港区域にある班竹駅から、北上して会寧市より中華人民共和国の国境線と並行する形で豆満江沿いに南下して、羅先特別市羅津区域にある羅津駅までを結ぶ鉄道路線である。
咸北線 | |
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基本情報 | |
起点 | 班竹駅 |
終点 | 羅津駅 |
駅数 | 51 |
開業 |
1916年11月5日 1935年11月1日全通 |
運営者 | 朝鮮民主主義人民共和国鉄道省 |
路線諸元 | |
路線距離 | 325.1 km |
軌間 |
1,435 mm (洪儀~羅津間は1524mmとの四線軌条)[1] |
線路数 |
複線 (輸城駅 - 古茂山駅) 単線 |
電化方式 | 直流3000V |
咸北線 | |
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各種表記 | |
ハングル: | 함북선 |
漢字: | 咸北線 |
発音: | ハムブクソン |
日本語読み: | かんほくせん |
英語: | Hambuk Line |
概要
前述した通り、北朝鮮と中国の国境線に並行する形で同国の北東部を3/4周する路線となっている。清津青年と羅津の間は平羅線が海岸沿いに81.2kmで結んでいるが、その3.8倍もの迂回ルートである。
現在咸北線と呼ばれる路線は、日本統治時代に建設された咸鏡線・南満州鉄道北鮮西部線・北鮮東部線・雄羅線を原型としている。すなわち、現在の咸北線のうち
●班竹~三峰間‥咸鏡線︵咸鏡本線︶の一部
●三峰~南陽間‥南満州鉄道北鮮西部線
●南陽~先鋒間‥南満州鉄道北鮮東部線
●先鋒~羅津間‥南満州鉄道雄羅線
にあたる。その路線形成の経緯は複雑で、まず日本統治時代に朝鮮総督府鉄道局咸鏡線の延伸として1916年に清津~蒼坪間を開業させ[2]、南満洲太興→図們鉄道という軽便鉄道会社が会寧から上三峰・潼関までを建設、1927年に上三峰から満州︵中国東北部︶側の天図鉄道とを直接結ぶ豆満江橋梁が完成し、満州連絡鉄道の一つとなった。しかし軌間が異なっていたことから、他の朝鮮鉄道とは直通運転ができなかった。
1929年には図們鉄道を朝鮮総督府鉄道局︵鮮鉄︶が買収し、会寧~潼関間を図們西部線とする。そしてほぼ同時に、図們東部線として日本海に面した港の雄基︵現‥羅先︶を起点とし潼関に至る、日本と満州東部を結ぶ短絡ルートの一つとなる路線の整備も薦められ、1929年に雄基~新阿山間が開業したのを皮切りに、1932年に南陽まで、1933年までに潼関までが開業し全通、図們線となった。同時に上三峰~潼関間も改軌された[3]。同年には、満州国︵1932年建国︶の首都新京︵現‥長春︶から図們︵南陽の対岸︶までを結ぶ満州国有鉄道︵実際の経営は南満州鉄道、通称‥満鉄に委託︶京図線が開業し、同年10月には豆満江︵当時は図們江と呼称︶に2本目の鉄道橋がかけられ、雄基~新京を結ぶ鉄道線が完成した。
1934年10月には、清津~雄基間の鉄道は満州との結び付きが強いという事情もあり、南満州鉄道北鮮鉄道管理局に運営が移管された。1935年には満鉄の手で、雄基に代わる日本との接続港となる羅津港︵後、雄基が改名した先峰と共に統合され、羅先となる︶が整備され、同時に北鮮鉄道も雄基~羅津間が延伸された。これらの港へは清津と共に、日本の門司・敦賀・新潟などの港から連絡船が運航されており、満鉄ではそれらの航路に接続する形で、羅津~新京間を結ぶ急行列車﹁あさひ﹂を1936年に運行開始している。
1940年、清津~上三峰間の路線については再び鮮鉄に経営移管され、元山~上三峰間が咸鏡線となった。この頃になると、朝鮮の中心都市京城︵現‥ソウル︶より満州東部黒竜江省の牡丹江を結ぶ急行列車も運行されるようになり、戦前の最盛期を迎えることとなった。
太平洋戦争の末期にはソ連軍︵赤軍︶の攻撃もあり、路線の一部が運休となった。終戦後、北緯38度線を境にして朝鮮半島北部にはソ連軍が進駐することとなるが、ソ連軍の圧力と人民委員会の確執もあり、復興はなかなか進まなかった。更には朝鮮戦争︵1950年~1953年︶による破壊も加わった。
同戦争後、中国とソ連の支援もあり、両国との接続路線となる咸北線は優先的に復興が行われることになった。1959年にはソ連の援助によって、豆満江の朝ソ国境に親善橋が開通、1965年に開業した平羅線とともに羅津~洪儀間︵洪儀駅から親善橋の対岸にある豆満江駅に至る洪儀線が分岐︶は、ソ連︵現‥ロシア︶への重要ルートとしての使命をも帯びることとなる。
運行概要
2002年現在、上三峰と対岸の中国国鉄開山屯を結ぶ鉄道のレールは撤去され、南陽と図們の間も貨物列車のみの運行となっている。羅津~洪儀︵実際には手前より短絡線が分岐︶間はシベリア鉄道と接続する重要ルートであり、平壌からモスクワへ向かう直通列車も経由する。江原線の葛麻駅を起点とし、咸北線の全区間を走破して羅津に至る列車も2002年当時は設定されており、全線を規定通りならば13時間27分で走破していた。
また、中国・韓国・北朝鮮の鉄道が採用している標準軌︵1435mm軌間︶と、ロシアの鉄道が採用している広軌︵1524mm軌間︶のレールを、ハサンから羅津までの全長55kmを四線軌条で改修する工事が2008年から行われた。この事業はロシアと北朝鮮の合資で行われた[4]。2012年10月に全区間の改修が完了し、試運転が行われた[5][6]。2013年9月22日に完成式典が行われ、石炭輸送等の直通運転が開始される予定である[7]。ロシア側はゆくゆくは韓国の釜山までの日本海側の鉄道路線をロシアと直結する構想をもっている[8][9]。
駅一覧
駅名 | 駅間キロ (km) | 班竹 からの 累計キロ (km) |
元山 からの 累計キロ (km) |
接続路線 | 所在地 | 線籍上の路線名 | ||||
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日本語 | 朝鮮語 | 英語 | ||||||||
清津青年駅 (清津駅) |
청진청년역 (청진역) |
Ch'ŏngjin Ch'ŏngnyŏn (Ch'ŏngjin) |
0.0 | -3.1 | 531.0 | 北朝鮮鉄道省:平羅線 | 咸鏡北道 | 清津市 | 浦港区域 | ※ |
班竹駅 | 반죽역 | Panjuk | 3.1 | 0.0 | 534.1 | 北朝鮮鉄道省:平羅線 | ||||
咸北線 | ||||||||||
輸城駅 | 수성역 | Susŏng | 4.7 | 4.7 | 538.8 | 北朝鮮鉄道省:康徳線 | 松坪区域 | |||
石幕駅 | 석막역 | Sŏngmak | 5.6 | 10.3 | 544.4 | 富寧郡 | ||||
章興駅 | 장흥역 | Changhŭng | 7.8 | 18.1 | 552.2 | |||||
兄弟駅 | 형제역 | Hyŏngje | 6.0 | 24.1 | 558.2 | |||||
富寧駅 | 부령역 | Puryŏng | 8.5 | 32.6 | 566.7 | |||||
古茂山駅 | 고무산역 | Komusan | 6.3 | 38.9 | 573.0 | 北朝鮮鉄道省:茂山線 | ||||
石峰駅 | 석봉역 | Sŏkpong | 5.8 | 44.7 | 578.8 | |||||
蒼坪駅 | 창평역 | Ch'angp'yŏng | 6.7 | 51.4 | 585.5 | |||||
全巨里駅 | 전거리역 | Chŏn'gŏ-ri | 7.3 | 58.7 | 592.8 | 会寧市 | ||||
豊山駅 | 풍산역 | P'ungsan | 6.1 | 64.8 | 598.9 | |||||
昌斗駅 | 창두역 | Ch'angdu | 4.6 | 69.4 | 603.5 | |||||
中島駅 | 중도역 | Chungdo | 7.0 | 76.4 | 610.5 | |||||
大徳駅 | 대덕역 | Taedŏk | 6.0 | 82.4 | 616.5 | |||||
会寧青年駅 (会寧駅) |
회령청년역 (회령역) |
Hoeryŏng Ch'ŏngnyŏn (Hoeryŏng) |
7.1 | 89.5 | 623.6 | 北朝鮮鉄道省:会寧炭鉱線 | ||||
金生駅 | 금생역 | Kŭmsaeng | 3.7 | 93.2 | 627.3 | |||||
高嶺鎮駅 | 고령진역 | Koryŏngjin | 5.7 | 98.9 | 633.0 | |||||
新鶴浦駅 | 신학포역 | Sinhakp'o | 5.4 | 104.3 | 638.4 | 北朝鮮鉄道省:細川線 | ||||
鶴浦駅 | 학포역 | Hakp'o | 2.9 | 107.2 | 641.3 | |||||
新田駅 | 신전역 | Sinjŏn | 9.4 | 116.6 | 650.7 | |||||
間坪駅 | 간평역 | Kanp'yŏng | 6.4 | 123.0 | 657.1 | |||||
三峰駅 (上三峰駅) |
삼봉역 (상삼봉역) |
Sambong (Sangsambong) |
6.9 | 129.9 | 664.0 | 穏城郡 | ||||
三峰から 0.0 | ||||||||||
鍾城駅 | 종성역 | Chongsŏn | 9.1 | 139.0 | 9.1 | 北朝鮮鉄道省:東浦線 | ||||
江岸里駅 | 강안리역 | Kangal-li | 8.2 | 147.2 | 17.3 | 北朝鮮鉄道省:城坪線 | ||||
水口浦駅 | 수구포역 | Sugup'o | 5.9 | 153.1 | 23.2 | |||||
江陽駅 | 강양역 | Kangyang | 6.7 | 159.8 | 29.9 | |||||
南陽駅 | 남양역 | Namyang | 6.1 | 165.9 | 36.0 | 北朝鮮鉄道省:南陽国境線 | ||||
図們から 3.3 | ||||||||||
豊利駅 | 풍리역 | P'ungri | 3.9 | 169.8 | 7.2 | |||||
世仙駅 | 세선역 | Sesŏn | 6.1 | 175.9 | 13.3 | |||||
穏城駅 | 온성역 | Unsŏng | 4.5 | 180.4 | 17.8 | |||||
豊仁駅 | 풍인역 | P'ungin | 5.5 | 185.9 | 23.3 | |||||
黄坡駅 | 황파역 | Hwangp'a | 9.6 | 195.5 | 32.9 | |||||
訓戎駅 | 훈융역 | Hunyung | 9.6 | 205.1 | 42.5 | 慶源郡 | ||||
下面駅 | 하면역 | Hamyŏn | 5.4 | 210.5 | 47.9 | |||||
慶源駅 (セビョル駅) |
경원역 (새별역) |
Kyŏngwŏn (Saebyŏl) |
4.3 | 214.8 | 52.2 | |||||
農圃駅 | 농포역 | Nongp'o | 7.3 | 222.1 | 59.5 | |||||
龍堂里駅 (承良駅) |
동당리역 (승량역) |
Ryongdang-ri (Sŭngryang) |
3.8 | 225.9 | 63.3 | |||||
新乾駅 | 신건역 | Singŏn | 8.4 | 234.3 | 71.7 | 北朝鮮鉄道省:古乾原線 | ||||
新阿山駅 | 신아산역 | Sinasan | 10.6 | 244.9 | 82.3 | 慶興郡 | ||||
松鶴駅 | 송학역 | Songhak | 7.3 | 252.2 | 89.6 | 北朝鮮鉄道省:チュンドゥ線 | ||||
鶴松駅 (阿吾地駅) |
학송역 (아오지역) |
Haksong (Aoji) |
5.9 | 258.1 | 95.5 | 北朝鮮鉄道省:灰岩線 | ||||
青鶴駅 | 청학역 | Ch'ŏnghak | 8.7 | 266.8 | 104.2 | 羅先特別市 | 先鋒郡 | |||
四会駅 | 사회역 | Sahoe | 9.7 | 276.5 | 113.9 | |||||
洪儀駅 | 홍의역 | Hong'ŭi | 6.0 | 282.5 | 119.9 | 北朝鮮鉄道省:洪儀線 | ||||
ムルゴル駅 | 물골역 | Mulgol | 1.0 | 283.5 | 120.9 | 北朝鮮鉄道省:豆満江線 | ||||
九龍坪駅 | 구룡평역 | Kuryongp'yŏng | 6.1 | 289.6 | 127.0 | |||||
雄尚駅 | 웅상역 | Ungsang | 8.0 | 297.6 | 135.0 | |||||
先鋒駅 (雄基駅) |
선봉역 (웅기역) |
Sŏngbong (Unggi) |
12.3 | 309.9 | 147.3 | 北朝鮮鉄道省:勝利線 | ||||
先鋒から 0.0 | ||||||||||
寛谷駅 | 관곡역 | Kwan'gok | 6.2 | 316.1 | 6.2 | 羅津区域 | ||||
雄羅駅 | 웅라역 | Ungra | 6.1 | 322.3 | 12.3 | |||||
羅津駅 | 라진역 | Rajin | 2.8 | 325.1 | 15.1 | 北朝鮮鉄道省:平羅線・羅津港線 |
- ※:清津青年駅~班竹駅間は平羅線であるが、全列車が清津青年駅まで乗り入れる。
廃止された支線
廃駅
●東先鋒駅(동선봉역) - 雄尚駅と先鋒駅との間に存在した。廃止当時は羅先特別市に位置していた。旧駅名は東雄基駅(동웅기역)。︵班竹起点305.0km、図們起点142.4km︶
脚注
(一)^ 2013年9月22日に四線軌条化された。
(二)^ 朝鮮総督府官報 大正1259号, 1916年10月12日
(三)^ 朝鮮総督府官報 昭和1963号, 1933年7月26日
(四)^ “ハサン・羅津間鉄道が10月13日︵予定︶試運転へ!”. ロシアNOW (2011年10月4日). 2011年11月20日閲覧。
(五)^ “ロ朝結ぶ鉄道で初試験運行 補修完了、記念式典開く”. MSN産経ニュース (2011年10月13日). 2011年11月20日閲覧。
(六)^ ロシアと北朝鮮結ぶ鉄道、商業運行10月開始予定 MSN産経ニュース
(七)^ 西村大輔 (2013年9月23日). “ロ朝鉄道 思惑乗せ走る”. 朝日新聞︵朝刊︶: p. 3面
(八)^ 2008年10月31日放送﹃NHKニュースおはよう日本﹄
(九)^ “露朝鉄道が試験運転、全面開通は来年に”. 読売新聞 (2011年10月13日). 2011年11月20日閲覧。[リンク切れ]
(十)^ 南満州鉄道株式会社全路線
参考資料
- 国分隼人(2007年). 『将軍様の鉄道 北朝鮮鉄道事情』, 新潮社. ISBN 9784103037316
- 鉄道省 編, 『鉄道停車場一覧. 昭和12年10月1日現在』, 1937, p503〜505