夏目アラタの結婚
﹃夏目アラタの結婚﹄︵なつめアラタのけっこん︶は、乃木坂太郎による日本の漫画作品。﹃ビッグコミックスペリオール﹄︵小学館︶にて、2019年14号から連載中。連続殺人事件を巡る人間たちの虚実まじえた駆け引きや、交錯する思惑をサスペンスフルに描く。﹁次にくるマンガ大賞 2020﹂でU-NEXT特別賞を受賞した[1]。
夏目アラタの結婚 | |
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ジャンル | ミステリー |
漫画 | |
作者 | 乃木坂太郎 |
出版社 | 小学館 |
掲載誌 | ビッグコミックスペリオール |
発表号 | 2019年14号 - |
巻数 | 既刊7巻(2022年5月25日現在) |
テンプレート - ノート | |
プロジェクト | 漫画 |
ポータル | 漫画 |
あらすじ
児童相談所に勤務する夏目アラタは、連続殺人事件の被害者遺児である山下卓斗から﹁父を殺した犯人に代わりに会って欲しい﹂という依頼を受ける。卓斗は未だ発見されていない父親の首の隠し場所を聞き出そうと、アラタの名を騙って犯人の品川真珠と文通しており、直接会って話す事を真珠から求められた為だった。小中学校で落ちこぼれのいじめられっ子だったという真珠のプロフィールから、エリート公務員ぶればマウントが取れると思っていたアラタだったが、逮捕時の﹁太ったピエロ﹂とはまるで別人の華奢な少女のような姿で現れた真珠に驚き、つい地が出てしまう。アラタが手紙の主では無いと見破ったらしい真珠が面会を打ち切るのを何とか止めようと焦ったアラタは﹁俺と、結婚しよーぜ!!﹂と口走る。
元々アラタは結婚には何の夢も持っておらず、真珠と本気で結婚する気もまったく無かったのだが、真珠の巧みな駆け引きと真珠の無実を信じる弁護士・宮前の真珠への協力もあって、婚姻届を提出して正式に真珠と夫婦となった。
1審で黙秘を貫いていた真珠だったが、控訴審では自分につきまとっていたストーカーが真犯人であり、そのストーカーが自分の父親なので庇う為に今まで黙っていたのだと主張する。宮前と違って真珠の無実を信じないアラタだったが、真珠が虐待された子供だったこと、婚姻届を渡された時に心を開いた子供のような笑顔で嬉し泣きした姿を目の当たりにした事などから、徐々に心を動かされて真珠に惹かれてゆく。その一方で、真珠が宮前やアラタの同僚の桃山、被害者遺族である卓斗まで巧みに篭絡している事には気づいており、しおらしかったりはすっぱだったりと様々な顔を使い分ける真珠の本心をつかめずにいる。
真珠が8歳で施設に保護された時と21歳の逮捕時で30もIQが上昇した謎、母親の環が真珠を決して歯医者に行かせず高カロリーな食事で太らせていた理由、1審で真珠が早く起訴されたがった真意、そして事件の真犯人は誰なのか…
様々な謎が交錯する中、真珠にまつわる重大な秘密が明らかになり、事態は大きく動き出す。
登場人物
夏目アラタ
児童相談所に勤務する30代の公務員。不幸な子供を救いたいという気持ちの余り虐待する親に暴力的な態度を取ってしまう事があり、その外見や態度から周囲からは﹁狂犬﹂﹁チンピラ﹂﹁経済ヤクザ﹂と評される。
小学生の時にトラック運転手だった父親を事故で喪い、その後母親が再婚・離婚を繰り返した事が影響したのかかなりグレた子供時代を送っており、﹁児相一の問題児﹂だった。
子供を虐待する親は﹁ぶっ殺してやりたい﹂と言うほど虐待された子供への同情心が強いが、亡くなった実父との関係は良好で、継父たちから虐待を受けたらしき描写は一切ない。享楽的な母親の事も恨んではいないと言っており、現在の関係はそれなりに良好である。
女性の好みは﹁年上のポッチャリ﹂であるが、去る者は拒まずで実際に付き合った女性たちは好みとは異なる。
品川真珠
3人の男性を殺し、遺体をバラバラに切り刻んで遺棄した罪状で死刑判決を受けた女性。逮捕時にピエロのメイクをしていた為、マスコミなどから﹁品川ピエロ﹂とあだ名された。
子供の頃、母親が一切歯医者に行かせなかったせいで非常に歯並びが悪く、1審ではボサボサの髪に汚い格好で出廷し、完全に黙秘を貫いていた。が、控訴審では清楚なワンピース姿や中学時代の制服姿で現れ、その可憐な少女のような姿で傍聴人を魅了した。
小中学校で学業不振、高等看護学校を2年で中退した後はその日暮らしをしていたが、そのプロフィールが不自然に思われるほど地頭がよく、人の心を見透かす洞察力がある。
母親の話題や写真に激しく動揺し、赤ん坊の話題でも強い嫌悪感を示すなど、母親と赤ん坊が何らかの弱点となっているらしい。
桃山香
アラタの先輩にあたる児相職員。ややふくよかな体形で、そのことを気にしているらしく他人から﹁ポッチャリ﹂と言われると﹁うすポッチャリです﹂と訂正する。
アラタが桃山を好みのタイプだと発言したことから興味を持った真珠から手紙を受け取り、宮前に相談。﹁会ってあげてほしい﹂と宮前に頼まれた事もあり、真珠と面会する。
面会の場では真珠にしぐさや言葉遣いを真似されて不気味に思い、結婚できない女として見下されて憤慨したが、その後真珠からしおらしい手紙を受け取って面会時の真珠の行動は試し行動[注1]だったとして理解を示し、﹁真珠ちゃん﹂﹁パール﹂と呼ぶほど親身になる。
宮前光一
真珠の弁護士。1審で弁護団の一人として真珠の弁護を担ったが、真珠が幼かった頃に明らかな虐待をうかがわせる姿を何度か見かけており、同情していた。そのせいあってか再会した真珠の無実を信じ、控訴審では手弁当で弁護を申し出た。
品川環
真珠の母。両親を亡くした後、遠縁の家に引き取られていたが、駆け落ち同然で上京した。未婚のまま真珠を出産し、真珠が中学の時に病死。
真珠に似た可愛らしい外見だが、高校時代はかなりの発展家で、いわゆる清楚系ビッチ。
山下卓斗
真珠に殺害されたとされる3人目の被害者の息子。父親の首の行方と、父親が真珠に惹かれた理由を知りたいと思い、アラタの名を騙って文通していた。
裁判を傍聴してレオンのマチルダを彷彿とさせる真珠の姿を目にし、真珠に惹かれる。
書誌情報
- 乃木坂太郎 『夏目アラタの結婚』 小学館〈ビッグコミックス〉
脚注
- ^ “次にくるマンガ大賞 2020”. 2022年5月25日閲覧。
- ^ 子供が親・里親・教師などの保護者に対して、自分をどの程度まで受けとめてくれるのかを探るために、わざと困らせるような行動をとること。