放送利権
概説
根本は日本の国土条件から派生しているものである。電波を利用して地上波放送を行う場合︵放送局の開設を行なう場合︶には免許が必要である。全世界的に、放送に利用できる電波は限られているが、特に国土が狭く、地形変化に富む日本では多くの中継局を必要とし、混信を起こさないためにこの限られた電波を特に中継局用としてフルに使わざるを得ず、1980年代には、新規に割当できる周波数がおよそなくなってしまった。
従って今日、所轄官庁である総務省から新規に地上波放送局の免許を得ることは至難、よって新規事業者の参入がおよそできない状態にあり、日本の放送局は既得権益化しやすい[1]。
日本放送協会︵NHK︶を含め、地上波放送は基本的に都道府県ごと︵県域放送︶であり、民間放送局︵民放︶であれば、これより派生して、東京にある放送局が事実上地方局を支配しているキー局制度、新聞社が放送局の株式を保有するクロスオーナーシップ[1]、放送局が番組の著作権をもち、制作会社や制作者には著作権があたえられにくい映画の著作権、記者会見を記者クラブ加盟社が独占している記者クラブ制度なども放送利権としてあげられている。また日本の放送局は、いわゆる﹁電波オークション﹂によるものではないことや、諸外国に比べ格段に安い電波利用料なども近年、議論の対象となっている。
利権による弊害例
中立性の阻害
- 放送局に都合の悪い意見を封じ、情報操作する。
媒体(放送電波)の私物化
- 特にキー局の社屋および所在地周辺を観光地化させるための宣伝や紹介。
- 放送局による自社コンテンツ(自社制作映画など)、自社商品の宣伝。宣伝番組。
- 看板番組をもつ有力タレントなどによる自身経営の店舗の番組内宣伝。
看板ねらい
世襲・コネ
- 民放では、「縛りの効く」局員の子弟、持株会社社員の子弟、自局に関係のある有力者の子弟などを優先的に局員採用する。「ジャーナリスト」としての能力・常識はあまり問われない。結果、経営側の意図に反して番組制作費を横領、児童買春を行うといった不祥事も起きている。
排他と集中化の進行
総務省の放送行政の積み重ね、すなわち、キー局優遇、安い電波利用料︵携帯電話会社に比較して安い︶[1]。、経営難救済を理由とする持ち株会社の解禁などが根底にあり、結果、マスメディア集中排除原則と逆の事態も招いている。
●買収に対し﹁放送局はある種、聖域。﹂という主張。
●ハードウェアとソフトウェアの一致。︵放送局による放送コンテンツの独占。︶
●公共の電波と編集権の二重構造。
●地方局などが視聴者︵特に地方に住んでいる者︶の意見を無視して県域放送を守ろうとする[1]。
●茨城県︵これ以前は県域放送が全国で唯一行われていなかった︶におけるNHK総合テレビジョンの県域放送開始前の日本民間放送連盟、関東民放キー局、関東独立UHF放送局の反対。
●CATV︵ケーブルテレビ︶事業者の区域外再送信に対する地方局やキー局の反対[1]。
●BSデジタル放送局開設時の地方局排除。
●BSデジタル放送局の持株比率の大幅な緩和によるキー局による支配強化。