民事保全法

民事保全に関する手続の原則を定める法律

民事保全法(みんじほぜんほう)は、民事保全に関する手続の原則を定める法律である(同法1条)。

民事保全法
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 民保法
法令番号 平成元年法律第91号
種類 訴訟法
効力 現行法
成立 1989年12月15日
公布 1989年12月22日
施行 1992年1月1日
所管 法務省
主な内容 保全命令に関する手続、保全執行に関する手続、仮処分の効力
関連法令 民事訴訟法、民事保全規則、民事保全法施行令、民事執行法
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概要

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371

使44[1][1]

構成

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  • 第1章 総則
  • 第2章 保全命令に関する手続
    • 第1節 総則
    • 第2節 保全命令
    • 第3節 保全異議
    • 第4節 保全取消し
    • 第5節 保全抗告
  • 第3章 保全執行に関する手続
    • 第1節 総則
    • 第2節 仮差押えの執行
    • 第3節 仮処分の執行
  • 第4章 仮処分の効力
  • 第5章 罰則
  • 附則

仮差押え

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金銭債権(または金銭債権に換えうる請求権)についての執行保全のために債務者の財産を仮に差し押さえること。

要件

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被保全権利
仮差押えの被保全権利は、金銭の支払いを目的とする債権である(20条1項)。
保全の必要性
強制執行をすることができなくなるおそれがあること、又は強制執行をするのに著しい困難を生じる恐れがあることである(20条1項)

手続

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不動産の仮差押え
本案の管轄裁判所、又は不動産の所在地を管轄する地方裁判所に対して申し立てる(12条1項)。
動産の仮差押え
本案の管轄裁判所、又は動産の所在地を管轄する地方裁判所に対して申し立てる(12条1項)。
目的物を特定しないで申し立てることも可能である(21条但書)
債権の仮差押え
本案の管轄裁判所(12条1項)、又は第三債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所に対して申し立てる(12条4項)。
申立てにあたり第三債務者を特定することが必要である(規則18条1項)。債権の種類及びその額その他債権を特定するに足りる事項を明らかにする必要もある(規則19条2項)

仮処分

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「係争物に関する仮処分」と「仮の地位を定める仮処分」がある。

係争物に関する仮処分

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金銭債権(または金銭債権に換えうる請求権)以外の請求権についての執行保全のために物的状態の現状の維持を命ずること。

要件

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被保全権利
係争物に関する仮処分の被保全権利は、係争物に対する給付請求権である。
保全の必要性
係争物の現状の変更により債権者が権利を実行することができなくなる、または著しい困難を生ずるおそれがあることである(23条1項)。

手続

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不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分
建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分
占有移転禁止の仮処分

仮の地位を定める仮処分

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要件

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被保全権利
保全の必要性

手続

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その他の手続

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起訴命令

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債権者が保全命令を取得したのに本案の訴えを提起しない場合には、保全命令を発した裁判所は、債務者の申立てにより、債権者に対し、一定の期間内に本案の訴えの提起を証する書面を提出するか、既に本案の訴えを提起している場合にはその係属を証する書面を提出するよう命じる(37条1項)。これを講学上「起訴命令」と呼ぶ[2][注釈 2]

債権者が、裁判所の指定した期間内に前述の各書面を提出しない場合(同条3項)または提起しても取り下げられもしくは却下された場合(同条4項)には、裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消さなければならない(同条3項)。

債務者は、債権者による一方的な疎明により本案訴訟まで一定の権利制限を受けることになり、不安定な立場に置かれることになる。起訴命令の申立ては、債務者の側からこのような不都合・不安定な状況を打破する手段となるものである[3]

脚注

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注釈

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(一)^ 2004(( et al. 2010)), p. 261.)

(二)^ 

出典

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  1. ^ (稲葉 et al. 2010), p.p. 266 - 267.
  2. ^ "起訴命令". ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. コトバンクより2021年9月15日閲覧
  3. ^ 中野貞一郎 2013, p. 303.

参考文献

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20134ISBN 978-4-641-13651-9 

, , , , 22010ISBN 978-4-641-17915-8 

外部リンク

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