浄水場
概要
編集浄化・消毒処理
編集処理過程
編集一般的な急速ろ過方式を用いた浄水場の処理過程を以下に示す[7]。
取水塔
編集取水塔(しゅすいとう)のような取水施設によって、自然環境から水を浄水場に取り入れる。このように取水口から取水された水は「原水」(げんすい)と呼ばれる[8][7]。
沈砂池
編集原水には砂や土が含まれるため、沈砂池(ちんさち)に導いて緩やかな流れの途中で沈殿させることでそれらを取り除く。取水塔や沈砂池での原水の流れは自然な勾配によって作られる[9][7]。
取水ポンプ
編集沈砂池から流れてきた原水は、取水ポンプ(しゅすいポンプ)によって汲み上げられ、着水井へ向けて送水される[7]。
着水井
編集着水井(ちゃくすいせい)は、原水にとって浄水場での最初の水槽であり、送水されてきた勢いによる原水の圧力変化を抑えて、以降の過程へ向けて水位を一定に保つ役割を担う[10][7]。
凝集剤注入設備
編集凝集剤注入設備では、水に混ざっている細かい砂や土などを沈めるため、着水井から出た原水にポリ塩化アルミニウム等の凝集剤が注入される[11][7]。
薬品混和池
編集凝集剤が加えられた原水は、薬品混和池でよく混ぜられる[7]。
フロック形成池
編集フロック形成池では、凝集剤の混ざった原水をゆっくりと攪拌する。 「フロック」とは、それまで水に浮遊していた細かい砂や土などが、凝集剤の働きで寄り集まりかたまりとなったものである。 フロックが作られることで、砂や土などの粒子が比較的大きくなり沈みやすくなる[7]。
沈でん池
編集沈でん池に導かれた水は、静かな流れの中でフロックが沈められ、砂や土が水から除かれる[12][7]。
塩素注入設備 (1)
編集塩素注入設備では、アンモニア態窒素や鉄などを取るため、沈でん池から出た水に塩素が注入される[7]。
ろ過池
編集(登録有形文化財)
ろ過池によって、砂や砂利の層で水を濾して、微細な粒子状のものを除く。
塩素注入設備 (2)
編集2つ目の塩素注入設備で、消毒のための塩素を入れる。
配水池
編集配水池に、きれいになった水を溜めておく。
送水ポンプ
編集送水ポンプ(そうすいポンプ)によって、配水池の水を給水所に送り出す。水は各配水場・配水池へ配水管を用いて送られ、各家庭や施設へ給水される[13]。
「おいしい水道水」への挑戦
編集運営方式
編集日本の浄水場は、県営・市営・町営・村営などの運営形態があり、県営浄水場で浄化した水を市町村営の浄水場や配水場に配水する。アメリカ合衆国では、1990年代から民間委託が進んでいるがアトランタのように、民間業者の過度なコスト削減が水道料金の上昇や水質の悪化を招き、公営へ運営形態を再変更する揺り戻しも見られる[15]。
テロの攻撃目標として
編集2021年2月、アメリカ合衆国フロリダ州オールズマー市の浄水場のシステムに何者かが不正侵入、水道水に加える水酸化ナトリウムの濃度を100倍以上に高めようとした事件が発生した。管理者が不正アクセスを発見して、速やかに正常値へ戻したことから市民への被害はなかったが、発見が遅れれば数千人に健康被害が出かねない事態だった[16]。
脚注
編集参考書籍
編集- 高堂彰二著、『水道の本』、日刊工業新聞社、2011年11月16日初版1刷発行、ISBN 9784526067808、64-65頁