無効試合
無効試合︵むこうじあい︶とは、試合中に選手が何らかのルール違反を起こした場合、または何らかの原因で試合続行不能になった場合に適用されることがある措置で、その試合中の全ての記録は﹁無かったこと﹂として扱われる。ただし、格闘技などで無効試合の当事者となった選手の戦績にはNC︵No Contest:ノー・コンテスト︶として記録される。
概要
大きく分けて、進行中の試合が続行不能の状態に陥ったため審判員その他立会人の判断で打ち切る場合と、一度決着ついた過去の試合について統括組織の判断で勝敗を取り消す場合がある。
プロレスにおいては、第三者の乱入やレフェリーの負傷によって試合が収拾不能に陥った場合がほとんどであるが、ごくまれに試合がガチンコになってしまって無効試合が宣告される場合がある︵1986年4月29日の前田日明VSアンドレ・ザ・ジャイアント戦など︶。
ボクシングや総合格闘技などでは誤審や運営面の不手際、ドーピングなどの違反行為が発覚したり、公正な試合運営が不能な状況となった場合で無効試合にされる。なお、偶然のバッティングで規定ラウンドより前に試合が停止した場合は無判定と呼ばれ、無効試合とは異なる扱いになる︵日本国内では引き分け扱い︶。また、エキシビションを無効試合扱いで戦績に含める場合もある。
なお、タイトルマッチが無効試合となった場合、王者の防衛となるが防衛回数には数えられない。一方、無効試合となった要因が王者側にある場合は王座剥奪に至ることもある。
格闘技以外でも、何らかの理由によって公正な試合運営が不能な状況となった場合は無効試合にされることがある。
無効試合となった主な試合と選手
●2015年5月1日、ネバダ州ラスベガスで行われた粟生隆寛対レイムンド・ベルトランは、ベルトランが2回1分29秒TKOで勝利︵当初この試合はWBO世界ライト級王座決定戦として予定されていたが、前日計量でベルトランに体重超過があったため粟生が勝利した場合のみ王座獲得とされており、この結果を受け王座は引き続き空位となった︶。しかし、ネバダ州アスレチック・コミッションが実施した薬物検査で違反薬物のスタノゾロールに対する陽性反応が出た為、ベルトランの勝利を取り消して無効試合とし、併せてベルトランに対してファイトマネーの30%にあたる罰金25,500ドルと9ヶ月間の出場停止処分が科せられた。
●2015年2月22日、スターダム後楽園大会メインイベントのワールド・オブ・スターダム王座タイトルマッチにおいて、挑戦者安川惡斗が王者世IV虎に対してパンチを繰り出したことからノーガードの殴り合いに発展。激昂した世IV虎が安川の顔面に執拗にパンチを見舞う一方的な展開となり、7分45秒に安川側セコンドの木村響子が和田京平レフェリーの求めに応じてタオルを投入したことでTKOで世IV虎の防衛となった。しかし、流血してもなおマウントを取り攻撃を加えるという世IV虎の常軌を逸した行為およびタイトルマッチにもかかわらず一切の組み合い・技の出し合いすらないままに試合が終わるというプロレスらしからぬ決着に批判が続出。安川が頬骨骨折などの重傷を負ったこともあり、2月25日に世IV虎の勝利を取り消しての無効試合と王座剥奪が発表された。
●2014年1月3日、IBF世界スーパーフェザー級タイトルマッチは、挑戦者ランセス・バルテレミーが王者アルヘニス・メンデスを2回KOで破ったが、フィニッシュブローがラウンド終了後にヒットしたため、メンデス側が猛抗議。ビデオ判定の結果、ミネソタ州アスレチックコミッションは1月30日、﹁バルテレミーのパンチは2ラウンド終了ゴング後﹂と発表し、無効試合に改めた[1]。
●2010年6月20日、SRC13の大澤茂樹VS戸井田カツヤ戦において、戸井田の蹴りが大澤の股間に当り、戸井田の反則負けとなっていたが、戸井田が不服として提訴。協議の結果、股間に当たっていたかどうかの判断が難しいため無効試合となった。
●2010年6月5日、ハワイ州ブレーズデル・アリーナで行われたX-1 WORLD EVENTSの石井慧VSマイルス・ティナナス戦で石井は1回反則負けを喫したが、石井がダウンを奪っており、その後はレフェリーの動きや判断を考慮した上で、無効試合となった。
●2009年7月9日、オーストラリア・シドニーで行われたWBOアジア太平洋フェザー級暫定王座決定戦の山口賢一VSビリー・ディブ戦で山口は1回TKO負けを喫したが、ディブの2度のダウンのうち1度目をスリップと判断され、逆に山口がスリップ気味にダウンしたところを加撃されたのに反則を取らずレフリーストップとなった。このため山口陣営は試合直後に猛抗議。8月4日にビデオ判定の結果、無効試合となった。
●UEFA EURO 2008予選で、アルメニア対アゼルバイジャンは、政治的・治安上の理由から行われないこととなった。勝ち点の付与はなく、無効試合の1種といえる。
●2007年12月31日、やれんのか!大晦日! 2007で三崎和雄に1RKO負けを喫した秋山成勲が試合後に﹁四点ポイント中に顔面を蹴られたからルール違反である﹂と抗議文を提出。秋山側の抗議が認められる形で2008年1月22日にノーコンテストとされた。
●2007年12月15日、メキシコ・カンクンにて行われたWBC世界フェザー級王座挑戦者決定戦の松田直樹VSルディ・ロペス戦が、一時的に松田の8回TKO勝利と発表されたものが、規定どおりならば負傷判定に至るものであったことがわかり無効試合となった。
●2007年9月8日、メキシコで行われたアマチュアボクシング大会グアンテス・デ・オロのバンタム級少年の部の3回戦に出場した亀田和毅が現地の13歳ギゼルモ・トレロに判定1-2で敗れたが、試合後に亀田サイドが猛抗議し、一転して無効試合となった。アマチュアでこのような措置が行われるのは極めて異例である。
●2006年12月31日、K-1 PREMIUM 2006 Dynamite!!で桜庭和志と対戦した秋山成勲がスキンクリームを全身に塗布するルール違反を犯した。桜庭サイドの猛抗議により、試合後秋山は失格とファイトマネーの全額没収となった。
●2006年11月4日、ラスベガスのマンダレイベイ・イベントセンターで行われたIBF世界フェザー級タイトルマッチのロバート・ゲレーロVSオルランド・サリド戦、3-0の判定勝ちでサリドが王座を奪取したが、試合後のドーピング検査で陽性反応が出たため無効試合となり王座剥奪に至った。
●2006年10月23日、﹁XFS II﹂で、坂井澄江がエイミー・デイビスからタップを奪い勝利したが、タイムキーパーのミスがあったため無効試合となった。
●2005年12月31日、K-1 PREMIUM 2005 Dynamite!!において、ヒース・ヒーリングがゴング前に中尾芳広を殴り反則負けとなったが、後に挑発行為を行った中尾芳広にも原因があるとし両者失格の無効試合となった。
●2003年12月31日、K-1 PREMIUM 2003 Dynamite!!で行われたアレクセイ・イグナショフVS中邑真輔戦は、レフリーストップによりイグナショフの3回KO勝ちと宣告されたが、中邑はダウン後に立ち上がっていたなどを理由に、大会後に中邑及び上井文彦新日本プロレス執行役員が猛抗議。協議の結果、無効試合となり、その後K-1 ROMANEXで再戦が行われ中邑が勝利した。
●2001年3月17日、﹁K-1 GRADIATORS 2001﹂で行われたジェロム・レ・バンナVSマイク・ベルナルド戦で、ベルナルドが1回KO勝ちしたが、大歓声で1R終了のゴングが聞こえなかったこと、さらにKOしたパンチがゴング後であったとして後日無効試合となった。
●1995年12月9日、IBF世界ヘビー級王座決定戦でフランソワ・ボタがアクセル・シュルツに12回判定で勝利し王座を獲得したが、試合後の尿検査でドーピング反応が出たため、当事者のボタは王座剥奪と罰金5万ドルの処罰を受けた。
●1986年4月29日、新日本プロレスにおける前田日明VSアンドレ・ザ・ジャイアント戦。不穏なムードの中、アンドレが唐突に前田の怪我を狙った﹁プロレスの限度を超えた﹂攻撃を仕掛ける。これに対し前田も膝を狙ったローキックで応戦。完全にガチンコでの応酬となり、最終的には無効試合の裁定となった。
●1968年10月25日、WBA・WBC世界ミドル級タイトルマッチのサンドロ・マジンギVSフレディ・リトル戦で、マジンギが劣勢にあった8回にレフェリーが突如無効試合を宣告した。これはその後﹁地元判定﹂︵ホームタウンディシジョン︶と判断され、マジンギは王座を剥奪された。
●1947年4月18日、ニューヨーク州聖ニコラスアリーナでマリオ・ラモンVSボビー・ウィリアムズの4回戦にて1回途中でレフェリーのベニー・レナードが心臓発作で倒れ死亡したため、無効試合となった。
脚注
- ^ IBF・S・フェザー級戦は無効試合に、メンデス王者残留 Boxing News 2014年2月1日