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[[File:Lumbar vertebrae anterior.png|thumb|ヒトの腰椎の位置(赤で示した)。5つの骨からなり、上から下へL1, L2, L3, L4, L5と呼ばれる。]]
[[File:Gray93.png|thumb|典型的な腰椎]]
人体解剖学における'''腰椎'''︵ようつい、lumbar vertebrae︶は、[[胸郭]]と[[骨盤]]の間にある5つの[[椎骨]]。[[脊柱]]の最大の部位であり、横突起内に[[横突孔]]がないこと︵[[頸椎|頸部]]にのみ存在する︶および椎体の側面に関節面がないこと︵[[胸椎|胸部]]にのみ存在する︶を特徴とする。上からL1-5と書かれる。体の重量を支え、動きを可能にする役割がある。 == ヒトの解剖学 ==
=== 一般的な特性 ===
[[File:Lumbar vertebrae.jpg|thumb|left|腰椎]]
左の図は第1から第4腰椎の一般的特性を示している。第5腰椎には以下で詳述する特有の性質がある。
他の椎骨と同様に、腰椎は椎体と椎弓からなる。一対の椎弓根と一対の椎弓板からなる椎弓は椎孔を囲み、7つの[[突起 (解剖学)|突起]]を支持する。 ==== 椎体 ====
各腰椎の[[椎体]]は大きく、前後よりも左右に幅が広く、後ろより前の方が少し厚い。平ら、もしくは上下にわずかに凹であり、後ろに凹み、正面と側面で深くくびれている<ref name="Gray's">''[[Gray's Anatomy]]'' (1918), see infobox</ref>。 ==== 椎弓 ====
[[椎弓根]]は非常に強く、椎体の上部から後方に向いている。この結果、下椎切痕はかなり深くなっている<ref name="Gray's" />。椎弓根の形態は上の腰椎から下の腰椎にかけて変化する。[[矢状面|矢状]]の幅は9mmからL5では18mmに大きくなる。軸平面の角度は10度からL5で20度に増える。椎弓根は椎弓根スクリューによる固定、または[[経皮的椎体形成術|椎体形成術]]と同様の[[骨セメント]]の配置のための椎体への入り口の開始点として使われることがある。 椎弓板は幅が広く、短く、強い<ref name="Gray's" />。椎弓の後部を形成する。腰椎の上部では椎弓板は幅よりも高さがあるが、下部では高さよりも幅がある。椎弓板は棘突起を椎弓根に接続する。 椎弓内にある[[椎孔]]は三角形で、[[胸椎]]の椎孔より大きいが[[頸椎]]の椎孔より小さい<ref name="Gray's" />。
==== 突起 ====
棘突起は厚く、幅広く、やや四辺形である。後方に突出しており、粗く平らでない境界線で終わる。この境界線はときおり切痕がある部分が最も厚い<ref name="Gray's" />。 上下の関節突起ははっきりと定義されており、椎弓根と椎弓板の関節からそれぞれ上向きと下向きに突出している。上突起の関節面は凸状であり、後方内側に向いている。下突起のものは凹状であり、前方外側を向いている。下関節突起は下にある椎骨の上突起に囲まれているため、前者は後者よりも幅が広い<ref name="Gray's" />。 ''横突起''は長細い。上3つの腰椎では水平であり、下2つの腰椎では少し上向きに傾いている。上3つの椎骨では椎弓根と椎弓板の接合部から生じるが、下2つではさらに前方にあり、椎骨の椎弓根および後部から生じる。胸椎のように関節突起の後ろではなく前に位置し、肋骨と[[相同]]である<ref name="Gray's" />。 下の腰椎の横突起では、3つの部分や小結節がある︵横もしくは肋骨状突起(''costiform process'')、[[乳頭突起]]、[[副突起]]︶<ref name="Postacchini99p19">Postacchini, Franco (1999) ''Lumbar Disc Herniation'' [https://books.google.com/books?id=i-An_XbHpJcC&pg=PA19 p.19]</ref>。肋骨状突起は横、乳頭突起は上︵頭部︶、副突起は下︵尾部︶である。乳頭突起は腰部で上関節突起の後部に接続されている{{clarify|date=September 2012}}。副突起は横突起の基部の後ろにある。最も長く最も厚い肋骨状突起は通常L5のものである<ref name="Postacchini99p19"/>。 === 第1腰椎と第5腰椎 ===
[[File:Gray94.png|thumb|上から見た第5腰椎]]
第1腰椎は[[第9肋骨]]の前端と同じ高さにある。この高さは胃の[[幽門]]があることから重要な[[幽門横断平面]]とも呼ばれる。他にも、胆嚢の底、腹腔動脈、上腸間膜動脈、脊髄の末端、[[終糸]]の始端、腎血管、中副腎動脈、腎門など重要な構造がこの高さにある。 第5腰椎の特徴は、椎体が後ろよりも前の方がずっと深いこと(仙椎骨の関節の突出と一致する)、棘突起が小さいこと、下関節突起の間隔が広いこと、横突起の厚さ(椎体と椎弓根から生じる)である<ref name="Gray's" />。
第5腰椎は、[[脊椎分離症]]および[[脊椎すべり症]]が最も良く起こる部位である<ref>Eizenberg, N. et al. (2008). ''General Anatomy: Principles and Applications'', p. 17.</ref>。
ほとんどの人の腰椎は5つであるが、4つ、6つある人もいる。これらの人では、L5に普通影響する腰椎障害は、L4やL6に影響する。 === 部位ごとの動き ===
部位の動きの範囲は、個人間でばらつきがあるだけでなく年齢や性別にも依存するため、臨床的に測定するのは難しい。さらに腰椎の屈曲と伸長は、各椎骨間の矢状面での回転と平行移動の組み合わせにより生じる<ref>{{cite web|url=http://www.medscape.com/viewarticle/542466_2 |title=Anatomy and Biomechanics of the Back Muscles in the Lumbar Spine With Reference to Biomechanical Modeling |publisher=Medscape |author=Hansen |year=2006 |display-authors=etal |url-status=dead |archiveurl=https://web.archive.org/web/20101114135151/http://www.medscape.com/viewarticle/542466_2 |archivedate=November 14, 2010 |accessdate=2020-03}}</ref>。 腰椎の部位の動きの範囲(White and Punjabi, 1990)は以下の通り<ref>{{cite web|url=http://www.medscape.com/viewarticle/542466_Tables#T1 |title=Ranges of Segmental Motion for the Lumbar Spine |publisher=Medscape |author=Hansen |year=2006 |display-authors=etal |url-status=dead |archiveurl=https://web.archive.org/web/20150705203826/http://www.medscape.com/viewarticle/542466_Tables |archivedate=July 5, 2015 |accessdate=2020-03}}</ref>
{| class="wikitable" style=text-align:center
! || L1-L2 || L2-L3 || L3-L4 || L4-L5 || L5-[[Sacrum|S1]]
|-
| 屈曲/<br />伸長 || {{val|12|ul=deg}} || 14° || 15° || 16°
|| 17°
|-
| 横屈曲 || 6° || 6° || 8° || 6° || 3°
|-
| 軸回転 || 2° || 2° || 2° || 2° || 1°
|}
===先天的異常===
{{Main|{{仮リンク|先天的脊椎異常|en|Congenital vertebral anomaly}}}}
[[先天的脊椎異常]]は脊柱管の変形や不安定性を引き起こすことにより[[脊髄]]の圧迫を引き起こす可能性がある。
<gallery>
File:Lumbarization of S1.jpg|仙椎1の腰椎化。[[肋骨]]に接続していない6つの椎骨として見られる。
File:Sacralization of the fifth lumbar vertebra.jpg|L5椎骨の仙椎化。画像の右下に見られる。
File:Blockwirbel CT VR frontal.jpg|腰椎の先天的塊状椎。CTボリュームレンダリング。
</gallery>
==他の動物==
[[魚類]]・[[両生類]]・[[爬虫類]]において腰椎は定義されていない。哺乳類では、[[肋骨]]が関節する椎骨を[[胸椎]]と定義することにより、その後方に位置する、腰肋が椎体と癒合して横突起を形成している骨が腰椎と定義される<ref name=犬塚2014>{{Cite journal|和書|title=脊柱と椎骨の形態学 |author=犬塚則久 |year=2014 |journal=脊髄外科 |volume=28 |issue=3 |url=https://doi.org/10.2531/spinalsurg.28.239 |doi=10.2531/spinalsurg.28.239 |pages=239-245}}{{フリーアクセス}}</ref>。つまり、哺乳類の腰椎は肋骨を持たない。従って四足歩行の哺乳類においては内臓が肋骨による保護を受けずに重力に晒されてしまうため、哺乳類の多くは腰椎の横突起を発達させて腹壁を吊り上げて内臓を懸垂して保持している<ref name=遠藤2014>{{Cite journal|和書|title=脊椎の多様な形態学的適応 |author=遠藤秀紀 |year=2014 |volume=28 |issue=2 |pages=122-127 |journal=脊髄外科 |url=https://doi.org/10.2531/spinalsurg.28.122 |doi=10.2531/spinalsurg.28.122}}{{フリーアクセス}}</ref>。 アフリカの類人猿には3,4個の腰椎があり([[ボノボ]]は脊柱が長く、追加の椎骨がある)、ヒトには普通5個ある。この違いは絶滅した''[[Nacholapithecus]]''(尾がなく6個の腰椎を持つ[[中新世]]のヒト類)の腰椎が初期の[[アウストラロピテクス]]と初期のヒト属のものと類似しているため、チンパンジーとヒトの最後の共通祖先も長い腰椎の領域を持つ長い脊柱を持ち、腰椎の数の減少はそれぞれの類人猿の[[系統群]]で独立に進化したと推測されている<ref>{{Cite journal
| last1 = McCollum | first1 = MA
| last2 = Rosenman | first2 = BA
| last3 = Suwa | first3 = G
| last4 = Meindl | first4 = RS
| last5 = Lovejoy | first5 = CO
| title = The vertebral formula of the last common ancestor of African apes and humans
| journal = Journal of Experimental Zoology Part B: Molecular and Developmental Evolution | date = March 15, 2010 | volume = 314 | issue = 2 | pages = 123–34
| pmid = 19688850 | doi=10.1002/jez.b.21316
}} (Abstract)</ref>。
[[チンパンジー]]や[[ゴリラ]]は腰椎の数が限られており、腰椎を曲げる︵{{仮リンク|前弯|en|Lordosis|label=脊椎前弯|redirect=1}}、ロードシス︶ことができない。これは[[オナガザル科]]や''Nacholapithecus''、[[プロコンスル (霊長目)|プロコンスル]]とは対照的であり、最後の共通祖先が以前考えられていたようにショートバック("short-backed")ではないことを示唆している<ref>{{Cite journal | last1 = Lovejoy | first1 = C. Owen
| last2 = McCollum | first2 = Melanie A.
| title = Spinopelvic pathways to bipedality: why no hominids ever relied on a bent-hip-bent-knee gait
| journal = Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci | date = October 27, 2010 | volume = 365 | issue = 1556 | pages = 3289–99
| doi = 10.1098/rstb.2010.0112 | pmc = 2981964 | pmid=20855303
}} (Introduction)</ref>。
== ギャラリー ==
{{Gallery|lines=8
|File:Lumbar vertebrae animation.gif|腰椎の場所(赤で示す)。アニメーション。
|File:Lumbar vertebrae animation4.gif|左と同じ。腰椎の周りの骨は半透明にしている。
|File:Lumbar vertebrae - close-up - animation2.gif|腰部の形(青と黄で示す)。アニメーション。
|File:Human lumbar vertebra.stl|腰椎の3D画像
|File:Gray_111_-_Vertebral_column-coloured.png|脊椎
|File:Gray430.png|腸骨および前大腿部の筋肉。上から2番目の高さにある椎骨が第1腰椎である。
|File:Orientation.PNG|脊椎を表皮で示した図。T3は肩甲棘の中間部分にあり、T7は肩甲骨の下角にある。L4は[[腸骨稜]]の最も上の点にある。S2は[[上後腸骨棘]]の高さにある。さらにC7は首の下部に突出部として簡単に局在化される<ref>Anatomy Compendium (Godfried Roomans and Anca Dragomir)</ref>。 |File:Illu vertebral column.svg|脊椎
|File:Blausen 0618 LumbarSpine.png|腰椎をハイライトしたイラスト
|File:Gray92.png|横から見た腰椎
|File:Gray106.png|腰椎の骨化
}}
== 関連項目 ==
*[[腰椎症]]
*{{仮リンク|ベルトロッティ症候群|en|Bertolotti's syndrome}}
*[[椎間板ヘルニア]]
*[[腰部脊柱管狭窄症]]
*[[変性椎間板疾患]]
== 脚注 ==
{{Gray's}}
{{Reflist}}
== 外部リンク ==
{{Commons category|Lumbar vertebrae}}
* {{cite web
| title = Lower Back Pain Condition, Treatment and Exercise
| publisher = SpineUniverse
| url = https://www.spineuniverse.com/conditions/back-pain/low-back-pain/lower-back-pain-condition-treatment-exercise
| accessdate = 2017-02-15
}}
* {{cite web
| title = Virtual Spine — Online Learning Resource
| publisher = Toronto Western Hospital Department of Anesthesia and Pain Management
| url = http://pie.med.utoronto.ca/VSpine/index.htm
| accessdate = 2017-02-15
}}
{{Authority control}}
{{DEFAULTSORT:ようつい}}
[[Category:脊椎]]
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