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[[File:Dementia Prevalence in OECD.svg|thumb|right|400px|OECD各国の人口千人あたり認知症者]]
'''認知症'''︵にんちしょう、{{lang-en-short|Dementia}}、{{lang-de-short|Demenz}}︶は[[認知障害]]の一種であり、[[ヒトの脳]]の[[後天性|後天的]]な器質的障害により、いったん正常に発達した[[知能]]・[[知性]]が'''不可逆的に'''低下する状態である。初期段階は周囲にも、'''[[老化]]による[[健忘|物忘れ]]と混同'''されやすいが、どれかが並行して起きる︵物忘れに自己対処出来ない、物忘れしたこと自体を忘却、[[妄想]]・[[幻覚]]、依存、徘徊、攻撃的行動、[[睡眠障害]]、[[介護]]への抵抗、異食・過食、[[抑うつ]]状態など︶。人によって症状は様々であり、発症前より怒りっぽくなったり、不安な性格になったり、異常な行動が見られるようになる{{Sfn|世界保健機関|2012|loc=DEM}}<ref name="Kaplan">{{Cite |和書| |author=B.J.Kaplan |author2=V.A.Sadock |title=カプラン臨床精神医学テキスト DSM-5診断基準の臨床への展開 |edition=3 |publisher=メディカルサイエンスインターナショナル |date=2016-05-31 |isbn=978-4895928526 |at=Chapt.21.3}}</ref><ref name="nia">{{Cite report|df=ja|title=Alzheimer's Disease Fact Sheet |publisher=[[アメリカ国立老化研究所]] |date=August 2016 本項では主に[[ヒト]]︵人間︶について記述するが、認知症は人間以外の動物︵[[イヌ|犬]]や[[ネコ|猫]]など︶でも発症する。狭義では﹁知能が後天的に低下した状態﹂の事を指すが、医学的には﹁知能﹂の他に﹁[[記憶]]﹂﹁[[見当識]]﹂を含む[[認知障害]]や﹁人格変化﹂などを伴った[[症候群]]として定義される{{Sfn|世界保健機関|2012|loc=DEM}}{{r|nia}}。これに比し、先天的に脳の器質的障害があり、運動の障害や知能発達面での障害などが現れる状態は[[知的障害]]、先天的に[[認知]]の障害がある場合は[[認知障害]]という。単に[[老化]]に伴って物覚えが悪くなるといった誰にでも起きる現象は含まず、'''病的に能力が低下して性格の先鋭化、強い承認欲求、理性的思考力衰退、被害妄想を招く症状'''を指す<ref>{{Cite news|title=﹁突然キレる﹂﹁同じ昔話を繰り返す﹂――親に感じ始める﹁なぜ?﹂の原因と付き合い方 - Yahoo!ニュース 2018年8月31日}}</ref>{{Sfn|世界保健機関|2012|p=4}}。 日本において、この病はかつて'''痴呆'''︵ちほう︶と呼ばれていた。しかし、日本では、[[2004年]]に[[厚生労働省]]の用語検討会によって﹁認知症﹂への言い換えを求める報告がまとまった。これを受けて、まず[[行政]]分野および[[高齢者]]介護分野において﹁痴呆﹂の語が廃止され﹁認知症﹂に置き換えられた。各医学会においても2007年 認知症は70歳以上人口において2番目に多数を占める障害疾患である{{Sfn|OECD|2015|loc=Chapt.1}}。全世界で3560万人が認知症を抱えて生活を送っており{{Sfn|世界保健機関|2012|p=4}}、その経済的コストは全世界で毎年0.5-0.6兆[[アメリカ合衆国ドル|米ドル]]以上とされ、これは[[スイス]]の[[国内総生産]] (GDP) を上回る{{Sfn|OECD|2015|loc=Executive summary}}{{Sfn|世界保健機関|2012|p=4}}。患者は毎年770万人ずつ増加しており{{Sfn|世界保健機関|2012|p=4}}、世界の認知症患者は2030年には2012年時点の2倍、2050年には3倍以上になるとWHOは推測している{{Sfn|世界保健機関|2012|p=v}}。 23 ⟶ 24行目:
予防も、知的活動や他人とのコミュニケーション、身体運動などにより試みられており、日本では日本認知症予防学会が組織され、[[アルツハイマー症]]に名を残すドイツの医学者[[アロイス・アルツハイマー]]の誕生日である6月14日を﹁認知症予防の日﹂と定めている<ref>[https://www.sankei.com/article/20220602-N6FHSTISQRPTNHJCADCNPIZ7ZU/ 認知症、自分のこととして14日﹁予防の日﹂発症まで30年 現役世代も]﹃[[産経新聞]]﹄朝刊2022年6月2日︵生活面︶同日閲覧</ref>。 老化に伴う脳の器質的障害とともに、身体のいずれかが機能不全を起こすことが多かったため[[社会問題]]化することはなかった。近年では身体の老化による障害は投薬などにより機能をある程度維持することが可能になったが、脳の機能は投薬
{{TOC limit|3}}
== 症状 ==
以前よりも脳の機能が低下
=== 中核症状 ===
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主な症状としては[[幻覚]]︵20-30%{{r|Kaplan}}︶、妄想︵30-40%{{r|Kaplan}}︶、徘徊、異常な食行動︵[[異食症]]︶、睡眠障害、抑うつと[[不安]]︵40-50%︶、焦燥、暴言・暴力︵噛み付く︶、性的[[羞恥心]]の低下︵異性に対する卑猥な発言の頻出など︶などがある{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2006|loc=Introduction}}{{Sfn|世界保健機関|2012|loc=DEM}}。 発生の原因としては中核症状の進行に伴って低下する記憶力・見当識・判断力の中で、不安な状況の打開を図るために第三者からは異常と思える行動におよび、それが周囲との軋轢を生むことで不安状態が進行し、さらに症状のエスカレートが発生することが挙げられる。前述の通り、中核症状と違い一定の割合の患者に見られ、必ずしも全ての患者に同一の症状が見られると かつては'''中等度'''になると {| class="wikitable" style="font-size:80%; margin:1em auto"
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|}
激しすぎる周辺症状が発生した場合、[[向精神薬]] === その他の症状 ===
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以下は原因疾患による認知症のおおよその分類
* [[脳血管性認知症]]‥[[w:Vascular dementia|Vascular dementia]] (VaD)<ref group=" ** 多発梗塞性認知症広範虚血型(Binswanger型白質脳症を含む)
** 多発脳梗塞型
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**: 幻視・認知機能の急激な変動などが特徴的な認知症。[[パーキンソン病]]で見られるレビー小体が脳内に認められ、パーキンソン病の症状も見られる。認知症を合併したパーキンソン病との境界はあいまいである。 ** {{Anchors|パーキンソンPDD}}認知症を伴う[[パーキンソン病]]:Parkinson's disease with dementia (PDD) {{r|Kaplan}}
**: パーキンソン病は、高率に認知症を合併する。27の研究の[[メタアナリシス]]によると、パーキンソン病の約40%に認知症が合併していた<ref>Cummings, JL (1988), “Intellectual impairment in Parkinson's disease: clinical, pathologic, and biochemical correlates”, J Geriatr Psychiatry Neurol 1: 24-36, {{PMID ** [[前頭側頭型認知症]]:Frontotemporal dementia (FTD)
**: かつて[[ピック病]]と呼ばれていた若年性で初期から性格変化をきたす認知症は現在はFTDと呼ばれている。また広義の概念として[[前頭側頭葉変性症]] (Frontotemporal Lobar Degeneration、FTLD) があり、[[意味性認知症]] (Semantic Dementia、SD) や[[原発性進行性失語|進行性非流暢性失語]] (Progressive nonfluent aphasia、PNFA) ︵特発性進行性失語 (Primary progressive aphasia、PPA) と近縁︶、[[進行性核上性麻痺]] (Progressive supranuclear parsy、PSP) なども含まれる。 106行目:
=== 軽度認知障害 ===
[[軽度認知障害]]︵Mild Cognitive Impairment‥'''MCI'''︶とは、正常[[老化]]過程で予想されるよりも認知機能が低下しているが、認知症とはいえない状態。認知症の前段階にあたるが、[[認知]]機能低下よりも[[記憶]]機能低下が主兆候となる。主観的・客観的に[[記憶障害]]を認めるが、一般的な[[認知]]機能・日常生活能力はほぼ保たれる。﹁認知症﹂の診断ができる程度に進行するまで、通常5〜10年、平均で6〜7年かかる。医療機関を受診した軽度認知障害では、年間10% 認知症における疾患修飾治療︵disease-modifying therapy︶、いわゆる根治療法を企図した100以上の臨床試験がすべて失敗に終わり、少なくともMCIの段階からの治療開始が望ましいと考えられている。しかし、MCIから認知症への進行を確実に食い止める治療法はまだ見つかっておらず、認知症治療薬の効果はないとする研究が多い<ref name=kouroushou></ref>。そのため予防的観点から、認知機能を維持する成分︵DHA、イチョウ葉エキス、[[エルゴチオネイン]]など︶を含んだ[[機能性表示食品]]の研究も活発に行われている。 118行目:
=== 3型糖尿病 ===
[[アルツハイマー型認知症]]は[[糖尿病]]と深い関連があることから、別名として﹁[[3型糖尿病]]﹂と呼ばれる<ref>Kandimalla R, Thirumala V, Reddy PH. Is Alzheimer's disease a Type 3 Diabetes? A critical appraisal. Biochim Biophys Acta Mol Basis Dis. 2017 May;1863(5):1078-1089. {{doi == 原因 ==
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; 遺伝因子
: 神経保護に関与するApolipoprotein Eの遺伝子型e4などがアミロイド沈着に関係すると言われる。他の遺伝子で危険因子として確定しているものはない。
; 各種薬物(医薬品や漢方薬、サプリメントなど)による薬害
* [https://toyokeizai.net/articles/-/325612 認知症の数十万人「原因は処方薬」という驚愕 危険性指摘も医師は知らず漫然投与で被害拡大(東洋経済オンライン2020年1月22日記事)]
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; ベンゾジアゼピン短期使用
: ベンゾジアゼピンの短期使用は、認知症やアルツハイマー病のリスクを少し増加させる。しかし、長期使用はリスク増加に関連付けられていない。このことから、短期使用とリスク増加の関連は、前駆症状の治療を表した可能性が示唆される<ref name="pmid26837813">{{cite journal |author=Gray SL, ''et al''. |title=Benzodiazepine use and risk of incident dementia or cognitive decline: prospective population based study. |journal=[[:en:The BMJ]]. |volume=352 |issue= |page=i910 |date=2016-02-02 |url=http://www.bmj.com/content/352/bmj.i90 |doi=10.1136/bmj.i90 |pmc=4737849 |pmid=26837813}}</ref>。 *[http://www.yakugai.gr.jp/topics/file/BDZyoubousho20151028.pdf ベンゾジアゼピン系薬物に関する要望書(薬害オンブズパースン会議 2015年10月28日)] ※ 主に欧米各国においては、ベンゾジアゼピン系薬物の長期連用による依存を防止するために、何らかの方法により継続処方期間に規制をかけている
*[https://toyokeizai.net/articles/-/325700 睡眠薬で高齢者を「寝かせきり」病院・施設の闇 人手不足で現場は疲弊、危険性が伝わらない(東洋経済オンライン2020年1月26日記事)] ※ 記事では医療や介護の手間を省くため入所の高齢者にベンゾジアゼピン系の薬剤が恒常的に投与されている実態が報じられている。
; Z薬(アルファベットのZで始まる名称のものが多いことからの俗称。[[Z薬]]を参照。)
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:介護者による精神症状を評価するための方法。妄想、幻覚、興奮、うつ、不安、多幸、無感情、脱抑制、易刺激性、異常行動の10項目につき、それぞれの頻度を1〜4の4段階で、重症度を1〜3の3段階で評価する。 ;Behavioral Pathology in Alzheimer's Disease (Behave-AD)
:ADに特徴的な妄想、盗癖、孤独への恐怖、睡眠障害
;Cohen-Mansfield Agitation Inventory (CMAI)
:叩く、足踏みする、叫ぶ
===== 抑うつ状態を評価する尺度 =====
;Geriatric Depression Scale (GDS)
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== 管理 ==
治療可能と判明しているタイプ以外の認知症 「治療可能な認知症 (treatable dementia)」の場合は原因となる疾患の治療を速やかに行う。[[慢性硬膜下血腫]]または[[正常圧水頭症]]が原因の場合は手術で治す事ができる。
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介護者には、認知症の介護はもどかしく非常にストレスになることを[[心理教育]]し、[[ネグレクト]]にならないよう陰性感情を認識させる{{Sfn|世界保健機関|2012|loc=DEM}}。介護者についてもうつ病を罹患している可能性を診察する{{Sfn|世界保健機関|2012|loc=DEM}}。 [[介護保険]]、[[障害年金]]、[[デイケア]]通所など社会資源の利用も有用である{{Sfn|世界保健機関|2012|loc=DEM}}。専門医︵老年内科、[[精神科]]、[[神経内科]]など︶、介護職︵[[介護福祉士]] === 心理療法 ===
325 ⟶ 323行目:
患者の不安感など精神状態の影響を受ける周辺症状は、介護者がそれらを取り除く事で発症を抑制することが可能となることもある([[ユマニチュード]])。
BPSDに対して、多数の非薬理学的な介入の手法があるが、[[音楽療法]] 認知症患者の睡眠障害に対して、薬物を用いない方法では、[[光療法]]が有効だとするランダム化比較試験が複数存在する<ref name="pmid28360513">{{cite journal|author=Dimitriou TD, Tsolaki M|title=Evaluation of the efficacy of randomized controlled trials of sensory stimulation interventions for sleeping disturbances in patients with dementia: a systematic review|journal=Clin Interv Aging|pages=543–548|date=2017|pmid=28360513|pmc=5364002|doi=10.2147/CIA.S115397|url=https://www.dovepress.com/evaluation-of-the-efficacy-of-randomized-controlled-trials-of-sensory--peer-reviewed-fulltext-article-CIA}}</ref>。 338 ⟶ 336行目:
[[大うつ病]]を併発する認知症については、NICEは教育を受けた専門家によって抗うつ薬を投与すべきであるとしている{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2006|loc=Chapt.1.8.2}}。 * {{仮リンク|米国老年医学会|en|American Geriatrics Society}} (AGS) は、2014年に、認知症状改善と消化器系の副作用についての定期評価なしには、AChEを処方してはならないとしている<ref name="AGS">{{Cite report|df=ja|author=American Geriatrics Society|title=Ten Things Physicians and Patients Should Question |publisher=ABIM Foundation | * オーストラリア総合医学会の2006年のガイドラインでは、AChEを投与しても最初の6か月間にて状態が安定・改善しない患者については、投与を続けても利益を得られる可能性は低いとされている{{Sfn|王立オーストラリア総合医学会|2006|p=32}}。 * [http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=504 抗うつ、抗パーキンソン、泌尿科領域などの抗コリン剤が認知症リスクと強く関連(症例対照研究) (薬害オンブズパースン会議2018年7月23日記事)]
346 ⟶ 344行目:
また認知症患者は認知機能低下のみならず、[[不眠]]、[[抑うつ]]、易怒性、[[幻覚]]︵とくに幻視︶、[[妄想]]といった周辺症状 (BPSD) と呼ばれる症状を呈すことがある。これらには向精神薬の投与が有効でありえるが、第一に心理療法を試みるべきであり{{Sfn|世界保健機関|2012|loc=DEM}}、薬物の正しい利用に努め{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2006|loc=Chapt.1.7.3}}、低用量にて副作用を監視しながら慎重に投与すべきである{{Sfn|王立オーストラリア総合医学会|2006|p=32}}{{r|mhlw-bpsd}}。厚労省はBPSDに対して、[[向精神薬]]は原則使用すべきではないとしている{{r|mhlw-bpsd}}。 NICEの2006年ガイドラインは、BPSDに対して薬物介入を第一選択肢とするのは、深刻な苦痛または緊急性のある自害・他害リスクのある場合に限らなければならない<ref group=" =====抗精神病薬=====
353 ⟶ 351行目:
* 米国老年医学会 (AGS) は2014年、BPSDに対しては抗精神病薬の処方を第一選択肢としてはならないと勧告している{{r|AGS}}。
*厚労省は2013年のガイドラインで、BPSDへの抗精神病薬投与は適応外処方であり、使用しない姿勢が必要で、中等度から重度のBPSDが対象となり、身体拘束を意図した投薬、[[多剤大量処方|多剤併用]]はすべきではないとしている{{r|mhlw-bpsd}}。 *NICEの2006年のガイドラインは、アルツハイマー病 (AD)、血管性認知症 (VaD)、混合型認知症について、軽度から中等度のBPSDであるならば有害事象および死亡リスクが増加するため抗精神病薬を処方してはならないとしている<ref group=" **またNICEはDLB認知症について、軽度から中等度のBPSDであるならば、重大な有害事象リスクのため抗精神病薬を処方してはならないとしている{{Sfn|英国国立医療技術評価機構|2006|loc=Chapt.1.7.2}}。 ===== 漢方薬 =====
[[遠志]]は[[イトヒメハギ]]の根で、その主治は鎮静作用であるが、﹃[[神農本草経]]﹄︵後漢 健忘を主治とする生薬の﹁遠志﹂を含む[[漢方薬|漢方]]エキス製剤は、[[帰脾湯]]、加味帰脾湯、人参養栄湯である。﹁遠志﹂を含まないが、認知症に効果が期待できる漢方薬には、[[抑肝散]]、[[抑肝散加陳皮半夏|抑肝散加味陳皮半夏]]、[[釣藤散]]、[[当帰芍薬散]]、[[八味地黄丸]]がある。{{r|:0}} 367 ⟶ 365行目:
* WHOのガイドラインでは[[ジアゼパム]]の使用を禁じている{{Sfn|世界保健機関|2016|loc=DEM}}。AGS(2014)は、高齢者の[[不眠症]]・興奮・せん妄に対して、[[ベンゾジアゼピン]]や他の[[鎮静薬|催眠鎮静薬]]を第一選択肢とすべきではないとしている。 * [[ビフィズス菌]]MCC1274の摂取による認知機能改善作用の可能性が報告されている<ref>[https://www.morinagamilk.co.jp/release/newsentry-3730.html アルツハイマー病協会国際会議2021(AAIC2021)にて「ビフィズス菌MCC1274」研究成果を発表]、2021年08月10日発表、森永乳業、2022/5/18閲覧</ref>。
* 2004年、[[カリフォルニア大学ロサンゼルス校|UCLA]]の研究チームは[[アルツハイマー型認知症|アルツハイマー病]]モデルマウスを用いて実験を行い、[[クルクミン]]が脳における[[βアミロイド]]の蓄積を抑制し、アミロイド斑を減少させることを示した<ref>Yang F, Lim GP, Begum AN, Ubeda OJ, Simmons MR, Ambegaokar SS, Chen PP, Kayed R, Glabe CG, Frautschy SA, Cole GM. Curcumin inhibits formation of amyloid beta oligomers and fibrils, binds plaques, and reduces amyloid in vivo. J Biol Chem. 2005 Feb 18;280(7):5892-901. Epub 2004 Dec 7. {{PMID 2015年4月から[[機能性表示食品]]制度がスタートしたことにより、記憶力や注意力などの認知機能を維持・サポートする成分︵DHA、イチョウ葉エキス、[[エルゴチオネイン]]など︶が研究されている。機能性表示食品は、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示しており、販売前に﹁最終製品を用いた臨床試験﹂または﹁最終製品または機能性関与成分に関する研究レビュー﹂を消費者庁に届出し、受理されれば表示可能となる。[[軽度認知障害]] (MCI) や周辺症状 (BPSD) に対する作用が期待されている<ref>[http://www.pieronline.jp/content/article/0386-3603/48040/685 健常者および軽度認知障害者に対するエルゴチオネイン含有食品の認知機能改善効果] 薬理と治療(2020)48︵4︶685-97</ref><ref>[https://www.ls-corporation.co.jp/product/materials/kioku.php エルゴチオネイン含有機能性表示食品]</ref>。 420 ⟶ 418行目:
[[日本]]については、65歳以上高齢者の[[有病率]]は3.0〜8.8%︵調査によってばらつきが大きい︶とされ、OECDでは2009年では6.1%と報告されている{{Sfn|OECD|2013|loc=Chapt.8.4}}。2026年には10%に上昇するとの推計もある。 2010年には、日本での認知症患者数は'''約462万人'''︵65歳以上人口の15%︶、その前段階の[[軽度認知障害]]︵MCI︶は約400万人︵13%︶と推定された<ref>{{Cite news|title=認知症、高齢者4人に1人 ﹁予備軍﹂400万人含め |newspaper=日経 |url= 認知症高齢者は厚生労働省の統計で、2012年は462万人、2020年は602万人、2025年は'''675万人'''、2030年は'''744万人'''と推定されている<ref name=kouroushou /><ref>{{Cite news |url=https://www.asahi.com/articles/DA3S14385413.html|title=︵介護とわたしたち 保険制度20年‥上︶﹁介護の社会化﹂実現できたか‥朝日新聞デジタル‥朝日新聞デジタル‥朝日新聞デジタル|newspaper=|date=2020-03-01}}</ref>。 {{Seealso|日本の精神保健#人口高齢化に伴う認知症の増加}}
439 ⟶ 437行目:
=== 自動車運転をめぐる問題 ===
判断力が低下した認知症患者による自動車[[運転]]などの問題もある。各県の[[公安委員会]]は認知症にかかっている者の[[運転免許]]を取消しまたは停止することができる︵[[道路交通法]]第103条︶。認知症関連5医学会は連名でガイドラインを策定し、認知症が判断した際は、医師は患者および家族に対し自動車運転の中止ならびに[[運転免許証]]返納を行うよう説明し、かつその点をカルテに記載するよう勧告している<ref>{{Cite press release|和書|author=日本神経学会、日本神経治療学会、日本認知症学会、日本老年医学会、日本老年精神医学会 |title=わが国における運転免許証に係る認知症等の診断の届出ガイドライン |date=2014-06-01 |url=http://www.neurology-jp.org/news/pdf/news_20140624_01_01.pdf|format=PDF}}</ref>。 === 鉄道事故をめぐる問題 ===
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=== 所在不明者をめぐる問題 ===
警察庁のまとめによると、2013年、捜索願︵[[失踪者|行方不明者]]届︶が出された認知症の人の数は1万322人であり<ref>{{PDFlink|[https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/H25yukuehumeisha.pdf 平成25年中における行方不明者の状況]}} - 警察庁</ref>、2012年度と2013年度に届出のあった19,929人の不明者のうち、2014年4月現在所在が確認できていない人数が258人である<ref>[ 2019年6月20日の警察庁の発表によれば、2018年中に警察に届け出があった認知症の行方不明者はのべ16,927人で、前年比1064人増であり、統計を取り始めた2012年から連続で増加、最多となった。行方不明者全体87,962人に占める割合は19.2パーセントで過去最大。70歳以上が9割を占めた。<ref>[https://www.asahi.com/articles/DA3S14064203.html 認知症不明、最多1万6927人 遺体で見つかった人、508人 昨年] 朝日新聞デジタル </ref> 2023年6月の2022年中に全国の警察に届け出のあった認知症の行方不明者はおよそ1万8700人と10年連続で増加し、最多を更新。
77.5%は届け出を受理した当日に、99.6%が受理から1週間以内に所在が確認されている。<ref>{{Cite web|和書|url=https://news.yahoo.co.jp/articles/21780152d8ac61920b91a6ea80eb71d8be359464 |title=去年1年間の認知症の行方不明者が1万8709人 10年連続で最多更新 行方不明者の総数は2年連続増加 |publisher = |accessdate=2023-06-22}}</ref> === 法的保護 ===
{{See also|日常生活自立支援事業}}
既に、認知症患者を対象にした[[悪徳商法]]などが発生している。[[悪質リフォーム]]や、[[金融機関]]による認知症患者の[[金融商品]]の無断解約<ref>[認知症女性の5千万解約、日興社員﹁実弟﹂偽る] 読売新聞 2013年6月2日</ref>などは、発生・発覚時にはよく報じられるが、解決策について議論されることは少ない。このため、家族 法曹関係の論文では「判断不十分者」という語で認知症患者を指す場合がある。
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=== 刑事手続 ===
* [[2010年]]に認知症と診断された[[大阪府]]在住の82歳の男性が、[[無免許運転]]の容疑で[[略式起訴]]され[[堺区検察庁|堺区検]]から[[罰金]]刑を受け、納付しなかったために[[大阪刑務所]]の[[労役場]]に留置された。この男性は、認知症で判断力が低下しており、また、相当額の[[年金]]収入があり[[強制執行]]が可能であるにもかかわらず、検察側は事情を考慮せず労役場に留置したなどとして、同区検を相手取り[[大阪地方裁判所]]に訴えを起こした<ref>[無免許運転:認知症で労役場に留置、賠償求め提訴 大阪] 毎日新聞 2012年11月29日</ref>。 * [[執行猶予]]期間中に再び[[万引き]]行為を行った認知症患者に対し、[[2016年]][[4月12日]]に[[神戸地方裁判所]]で、再び執行猶予付きの判決が言い渡された。当該判決は、被告を診察した医師の﹁行動を抑制し難い状況にあった﹂との証言が受け入れられた形となった<ref>[ * 執行猶予期間中だった認知症患者の女性が2015年8月に、[[青果]]店で万引きをしたとして逮捕・起訴され、一審の[[高知地方裁判所]]では懲役8ヵ月の実刑となったが、二審の[[高松高等裁判所]]は[[2016年]][[6月21日]]に﹁一審では認知症の[[精神鑑定]]が行われておらず違法﹂として、審理を同地裁に差し戻した<ref>﹁認知症﹂万引き 判決差し戻し﹁鑑定なしは法令違反﹂高松高裁 毎日新聞 2016年6月23日</ref>。 == 名称変更 ==
=== 経緯 ===
[[日本老年医学会]]において、2004年3月に柴山漠人が﹁﹃痴呆﹄という言葉が[[差別]]的である﹂と問題提起したのを受け、6月から[[厚生労働省]]において、医療・福祉などの専門家を中心とした用語検討会で検討が始まった。その過程において、[[厚生労働省]]は、関係団体や有識者からヒアリングを行うとともに、﹁痴呆﹂に替わる用語として選定した複数の候補例 * ﹁痴呆﹂という用語は、侮蔑的な表現である上に、﹁痴呆﹂の実態を正確に表しておらず、早期発見・早期診断 * 「痴呆」に替わる新たな用語としては、「認知症」が最も適当である。
* ﹁認知症﹂に変更するにあたっては、単に用語を変更する旨の広報を行うだけではなく、これに併せて、﹁認知症﹂に対する誤解や偏見の解消 国民の人気投票では﹁認知障害﹂がトップであったが、従来の医学上の﹁認知障害﹂と区別できなくなるため、この呼称は見送られた。こうして[[2004年]][[12月24日]]付で、法令用語を変更すべきだとの報告書︵﹁痴呆﹂に替わる用語に関する検討会報告書︶がまとめられた。[[厚生労働省]]老健局は同日付で行政用語を変更し、﹁老発第1224001号﹂により老健局長名で自治体や関係学会などに﹁''認知症''︵にんちしょう︶﹂を使用する旨の協力依頼の通知を出した。関連する法律上の条文は、2005年の[[通常国会]]で[[介護保険法]]の改正により行われた。 485 ⟶ 486行目:
=== 表記改正への賛否議論 ===
﹁痴呆﹂という呼び名が差別的であるとされたのは、﹁痴﹂﹁呆﹂ともに﹁愚か﹂﹁[[馬鹿]]﹂という意味を持つ漢字だからである。実際、[[厚生労働省]]のアンケートでは、﹁痴呆﹂という呼称が一般的な用語や行政用語として用いられる場合、また病院 ﹁痴呆﹂の呼び名の代替案として﹁認知症﹂とする事とした事に関して、﹁[[認知]]﹂の意味が正しく伝わらず、適切ではないのではないか、また日本語として破綻しているのではないか、という議論が出ている。 492 ⟶ 493行目:
また、「痴呆」と言う言葉は「一度獲得された知能が、後天的な大脳の器質的障害のため進行的に低下する状態」を指し、「認知症」と言う言葉より症状を的確に表しているという意見もある。
== 日本の法制 ==
2023年6月14日、認知症に関する初の法律﹁[[共生社会の実現を推進するための認知症基本法]]﹂が成立した。社会活動に参加する機会の確保など様々な認知症の施策に取り組み、認知症の人が暮らしやすくするのが狙い。﹁世界アルツハイマーデー﹂の9月21日を﹁認知症の日﹂と定めるとした。 国民の責務として﹁共生社会実現への寄与﹂を盛り込み、認知症施策の基本理念として7項目を掲げ、具体策として、バリアフリー化の推進、意欲や能力に応じた雇用の継続や就職に資する施策、保健医療や福祉サービスの切れ目ない提供、認知症の早期発見や早期診断や早期対応を推進、などを挙げた。政府に具体的目標や達成時期を入れて基本計画を作るよう義務づけ、自治体に計画策定の努力義務を課した<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.asahi.com/articles/ASR6G4FM7R6GUTFL004.html|title=認知症に関する初の法律が成立 社会活動に参加する機会を確保へ‥朝日新聞デジタル|accessdate=2023-06-15|publisher=朝日新聞}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.asahi.com/articles/DA3S15662219.html|title=認知症基本法、成立 社会活動の機会確保盛る‥朝日新聞デジタル|accessdate=2023-06-15|publisher=朝日新聞}}</ref>。 ==脚注==
{{脚注ヘルプ}}
===注釈===
{{Reflist|group="
=== 出典 ===
{{Reflist|2}}
== 参考文献 ==
:* {{Cite |publisher=[[世界保健機関]] |title=Dementia: a public health priority |date=2012 |url=http://www.who.int/mental_health/publications/dementia_report_2012/en/ |isbn=9789241564458 |ref={{SfnRef|世界保健機関|2012}} }}
:* {{Cite report|df=ja |publisher=OECD |date=2013-11-21 |title=Health at a Glance 2013 |doi=10.1787/health_glance-2013-en |ref={{SfnRef|OECD|2013}} }}
:* {{Cite report|df=ja |publisher=OECD |title=Addressing Dementia - The OECD Response |date=2015-03-13 |doi=10.1787/9789264231726-en |ref={{SfnRef|OECD|2015}} }}
:<!-- バグ回避のための行。[[Help:箇条書き]]を参照。 -->
:*{{Cite report|df=ja |publisher=世界保健機関 |title=mhGAP Intervention Guide for mental, neurological and substance use disorders in non-specialized health settings |edition=2 |
:** {{Cite report|df=ja |publisher=世界保健機関 |title=mhGAP Intervention Guide for mental, neurological and substance use disorders in non-specialized health settings |
:* {{Cite report|df=ja |author=
:*{{Cite|title=Medical care of older persons in residential aged care facilities (silver book) |author=王立オーストラリア総合医学会 |publisher=[[:en:The Royal Australian College of General Practitioners|The Royal Australian College of General Practitioners]] |date=2006-03 |url=https://web.archive.org/web/20170530164238/http://www.racgp.org.au/your-practice/guidelines/silverbook/ |isbn=0-86906-212-3 |ref=harv}} - 老人の在宅および施設ケアガイドライン
== 関連項目 ==
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-->
* [https://www.who.int/health-topics/dementia Dementia] {{en icon}} - WHO
* [
* [https://
* [https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/ 認知症施策] - 厚生労働省
* [https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/12/s1224-17.html 「痴呆」に替わる用語に関する検討会報告書] - 厚生労働省
* [https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201308/1.html
* [https://www.gov-online.go.jp/tokusyu/ninchisho/ 認知症を知ろう
* [https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/zaishien/ninchishou_navi/kisochishiki/ 認知症の基礎知識] - 東京都福祉保健局
* [https://www.pref.ibaraki.jp/hokenfukushi/chofuku/choju/ninchi/ 認知症を知るページ] - 茨城県保健福祉部長寿福祉課
* [https://www.ninchisho-forum.com/ 認知症フォーラムドットコム] - ツムラ
* [
* {{脳科学辞典|前頭側頭型認知症}}
* [https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/07-神経疾患/せん妄および認知症/認知症 認知症] - [[MSDマニュアル]]
* [https://www.engawajapan.com/ 認知症でつながるコミュニティ えんがわJAPAN] - 日本認知症研究会
{{Normdaten}}
{{精神と行動の疾患}}
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