オイラーのφ関数
(オイラー関数から転送)
オイラーのトーシェント関数︵オイラーのトーシェントかんすう、英: Euler's totient function[2]︶とは、正の整数 nに対して、 nと互いに素である 1以上 n以下の自然数の個数 φ(n) を与える数論的関数 φ である。これは
![](//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/48/EulerPhi100.PNG/220px-EulerPhi100.PNG)
φ(n)最初の100個の値のグラフ
![](//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/9b/EulerPhi.svg/220px-EulerPhi.svg.png)
φ(n)の最初の1000個の値
と表すこともできる︵ここで (m, n) は mと nの最大公約数を表す︶。慣例的にギリシャ文字の φ︵あるいは
︶で表記されるため、オイラーの φ 関数︵ファイかんすう、phi function︶とも呼ばれる。また、簡略的にオイラーの関数と呼ぶこともある。
1761年にレオンハルト・オイラーが発見したとされるが、それより数年前に日本の久留島義太が言及したとも言われる。
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/9b/EulerPhi.svg/220px-EulerPhi.svg.png)
例
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●1, 2, 3, 4, 5, 6 のうち 6と互いに素なのは 1, 5 の2個であるから、 φ(6) = 2 である。
●1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 のうち 7以外は全て 7と互いに素だから、φ(7) = 6 である。
1 から 20までの値は以下の通りである[3]。
1, 1, 2, 2, 4, 2, 6, 4, 6, 4, 10, 4, 12, 6, 8, 8, 16, 6, 18, 8,…
性質
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p を素数とすると、1 から p− 1 のうちに pの素因子である pを因子として含むものは存在しないから、φ(p) = p− 1 が成り立つ。さらに、k を自然数としたとき、1 から pkの中で pを因子として含むもの、すなわち pの倍数は pk− 1 個あるから、次が成立することが確かめられる。
定理 ―
また、m, nを互いに素な自然数とすると、φ(mn) = φ(m)φ(n) が成り立つ。これをオイラーの関数は︵互いに素な数の積に関して︶乗法的であると言う。これらのことからさらに、任意の自然数 nにおける値を知ることができる。実際に、pk はどの二つも相異なる素因数であるとして、以下のように φ(n) を計算することができる。
自然数 n, dで dが nを割り切るものとすると、1 から nまでの自然数のうち nとの最大公約数が n/d であるものの数は φ(d) 個である。特に、1 から nまでの自然数は nとの最大公約数によって類別されるから、d が nの正の約数全てをわたる和に関して等式
が成り立つ︵d | nは dが nを割り切るの意︶。
G を位数 nの巡回群とすれば、n の約数 dに対して Gの位数 dの元は φ(d) 個存在する。特に、巡回群 Gの生成元になりうる元は φ(n) 個存在する。
自然数 a, m(1 ≤ a< m) とするとき、剰余環 Z/mZ に属する剰余類 a+ mZが既約、つまり Z/mZ の単数である必要十分な条件は代表元 aが mと互いに素であることであるから、既約剰余類の数は φ(m) に等しい。同じことだが、群 Gの位数を #G, 環 Rの単数群を R× で表すとき、等式
が成立する。これは特に、オイラーの定理
の成立を意味する。また同じ式から、1 の m乗根で原始的であるものの一つを ζ とし、既約剰余類群 (Z/mZ)× を円分拡大 Q(ζ)/Q のガロア群と見れば φ(m) が円の m分多項式の次数に等しいことも従う。
n >1 ならば φ(n) < nである。また、n >3 ならば
が成り立つ。ここで γ はオイラー定数である。もし n≠ 2 ⋅ 3 ⋅ 5 ⋅ 7 ⋅ 11 ⋅ 13 ⋅ 17 ⋅ 19 ⋅ 23 であれば 2.50637 のかわりに 2.5 とおくことができる。一般に任意の ε > 0 に対して
が十分大きな nに対して成り立つ[4]。簡明な下界として
がある[5]。
σ(n) を約数関数とすると、n >1 において、
が成り立つ。
トーシェント関数の値域に含まれない自然数をノントーシェントという。
x が 1より大きい奇数の時、x はノントーシェントである。また、偶数であるノントーシェントは無数に存在することが知られている。φ(n) = xとなる nが存在するならば、それは少なくとも2つ存在するだろうと予想されているが、未だに証明されていない。一方、任意の k>1 に対して、φ(n) = xとなる nの個数がちょうど k個であるような xは無数に存在することが知られている。
脚注
編集- ^ Schwartzman, S. (1994). The Words of Mathematics: An Etymological Dictionary of Mathematical Terms Used in English. Mathematical Association of America. ISBN 0-88385-511-9. MR1270906. Zbl 0864.00007
- ^ 英語のtotientはラテン語のtotに由来する[1]。
- ^ オンライン整数列大辞典の数列 A000010
- ^ M. B. Nathanson (1996). Additive Number Theory: The Classic Bases. Springer. p. 315. ISBN 0-387-94656-X
- ^ “Is the Euler phi function bounded below?”. Mathematics Stack Exchange. 2020年3月26日閲覧。
関連項目
編集外部リンク
編集- 『オイラーのファイ関数のイメージと性質』 - 高校数学の美しい物語
- Weisstein, Eric W. "Totient Function". mathworld.wolfram.com (英語).
- Kevin Ford, The number of solutions of φ(x)=m, Ann. of Math. 150(1999), 283--311.
- D. Miyata & M. Yamashita, Note on derived logarithmic functions of Euler's functions