ガリア語

ウィキメディアの曖昧さ回避ページ

ガリア語(ガリアご、:Gallic, :gaulois)とは、古代ローマ時代のヨーロッパの地域ガリアで話されたケルト語派の一言語ゴール語(Gaulish)ともいう。

ガリア語
話される国 -
地域 ヨーロッパ
民族 ガリア人
消滅時期 6世紀
言語系統

インド・ヨーロッパ語族

表記体系 古イタリア文字ギリシア文字ラテン文字
言語コード
ISO 639-3 各種:
xcg — シスアルパイン・ゴール語
xtg — トランスアルパイン・ゴール語
テンプレートを表示

概要

編集

ガリア人ローマ帝国支配下に入り、征服者の言語であるラテン語が流入するとガリア語に代わってラテン語の変化した俗ラテン語(に後の古フランス語やそれにゲルマン語派が影響を与えたフランス語の元の言語)が広く使用され(これは現在のガロ・ロマンス語となっている)、ガリア語は6世紀までに死語になっていった。

通常ガリア語はケルト語派のなかのPケルト語的な言語だと考えられている。

ガリア語の形態論

編集

文字資料の少なさのため、ガリア語の形態論の再建は非常に困難になっている。

名詞の変化

編集

67o[1]


o 幹はもっともよく文証されている;これはラテン語およびギリシア語の第2変化に対応する。現代のロマンス語と同様、現代のケルト語はもはや中性を有しておらず、このため多くのガリア語単語で性の確定が難しくなっている。

この変化は以下のとおりである (例:viros「男」(男性名詞)、nemeton「聖域」(中性名詞)):

viros nemeton
単数 複数 単数 複数
主格 vir-os vir-oi > -i nemet-on nemet-a
対格 vir-on, -om vir-us nemet-on nemet-a
属格 vir-i vir-on nemet-i nemet-on
与格 vir-ui > -u vir-obo nemet-ui nemet-obo
具格/共格 vir-u vir-obi[2] nemet-u nemet-obi[2]

-i で終わる属格は西側の印欧語 (ラテン語、ケルト語) に共通の発明と思われるが、これはまたアルメニア語においても最も一般的な属格である。期待される複数具格は -us だが、-obi の形が文証されており (messamobi, gandobi)、おそらくは古アイルランド語のようにほかの語にもとづく改修 (réfection) が行われている。

a 幹変化はラテン語およびギリシア語の第1変化に対応する。これはサンスクリットに見られる -i/-ia 幹と二重になっている。後期ガリア語において、この2つの変化は融合する傾向にある。この変化は以下のとおりである (例:touta「人民」、riganîa「女王」):

touta riganîa
単数 複数 単数 複数
主格 tout-a tout-as rigan-ia rigan-ias
対格 tout-an, -en tout-as rigan-im rigan-ias
属格 tout-as, -ias tout-anon rigan-ias rigan-ianon
与格 tout-ai > e > i tout-abo rigan-i rigan-iabo
具格/共格 tout-ia tout-abi rigan-ia rigan-iabi

その他の変化

編集

その他の母音幹はほとんど文証されていないが、再建することはできる (再建形は * で示される)。ラテン語の第3変化に非常に似通った、半母音の子音幹名詞も存在する:

半母音 i/u (例:vatis「占い師」、mori「海」):
vatis mori
単数 複数 単数 複数
主格 vat-is vat-is < -eis mor-i mor-ia
対格 vat-in, -im vat-îs mor-i mor-ia
属格 vat-es < -eos vat-ion mor-es mor-ion
与格 vat-e vat-ibo* > ebo mor-e mor-ibo*
具格/共格 vat-î* vat-ibi* > ebi mor-î* mor-ibi*
magus「少年、従僕」(男性名詞)、medu「蜂蜜酒」(中性名詞):
magus medu
単数 複数 単数 複数
主格 mag-us mag-oues med-u med-ua*
対格 mag-un mag-us* med-u med-ua*
属格 mag-os < ous mag-uon med-os med-uon
与格 mag-ou mag-uebo med-ou med-uebo
共格/具格 mag-u mag-uebi* med-u med-uebi*

動詞の活用

編集
 
ミヨー博物館に保存されている l'Hospitalet-du-Larzac の石板。

 -mi  ()  -o  () 5 () 3 () 

不定詞

編集



 (nom verbal) 

[3]

 -an 

ガリア語の統語論

編集

--

ガリア語の例

編集
  • Exucri con-exucri Glion. Aisus scrisumio uelor! Exugri con-exugri lau (ボルドーのマルセラスに記録された呪文



LICNOS CONTEXTOS IEURU ANUALONNACU CANECO-SEDLON


フランス語の基層言語として

編集

ガリア語はフランス語基層言語として影響を与えている。特に顕著なのは連音現象(リエゾンアンシェヌマン子音弱化)とアクセントの無い音節の欠落である。またuをウでなくユと発音するのもガリア語の影響と考えられる。フランス語におけるガリア語起源の統語上の習慣としては、強調を意味する接頭辞re-の使用(例えば、luire「かすかに光る」とreluire「光る」のように、ラテン語の口語における接頭辞re-は、ゴール語のro-やアイルランド語のro-と同じように使われている。)強調構文、発音を表すための前置詞変化、oui「はい」や、それに似た言葉の意味の拡がりなどが挙げられる。

脚注

編集


(一)^ Éléments de morphologie (déclinaisons) in Dictionnaire de la langue gauloise de Xavier Delamarre ()

(二)^ ab

(三)^  ()

参考文献

編集

関連項目

編集

外部リンク

編集