ゲンゴロウブナ
コイ目コイ科の魚
ゲンゴロウブナ(源五郎鮒、Carassius cuvieri)は、条鰭綱コイ目コイ科フナ属に分類される魚類。養殖個体はヘラブナ(カワチブナ)としてしられている[2]。
ゲンゴロウブナ | ||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
![]() ゲンゴロウブナ(須磨海浜水族園にて) ![]() ゲンゴロウブナ、筑後川水系、国内移入個体 | ||||||||||||||||||||||||
保全状況評価[1] | ||||||||||||||||||||||||
ENDANGERED (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) ![]() | ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
| ||||||||||||||||||||||||
学名 | ||||||||||||||||||||||||
Carassius cuvieri Temminck & Schlegel, 1846[1] | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
ゲンゴロウブナ[2] | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
Deepbodied crucian carp[1] Japanese crucian carp[1] Japanese white crucian carp[1] White crucian carp[1] |
『広辞苑 第七版』では本種の名前の由来は「堅田の漁夫・源五郎がこの魚を捕らえて安土城主に貢じたこと」と解説されている[3]。
分布
編集形態
編集生態
編集人間との関係
編集ヘラブナ
編集
ヘラブナ︵箆鮒︶は、大正期に発見された体高の異常に高い突然変異個体を育てて品種改良したものである。河川に普通に見られるが、自然種ではない。ヘラブナは基本的に植物性プランクトンを好んで食べる。なお、水槽内では細かく砕いたミミズなど動物性餌だけで飼育することは可能である。自然界でも稀にミミズ等の生き餌に掛かる事もある。大阪︵河内︶で盛んに養殖され︵﹁カワチブナ﹂呼称の由来︶、主に淀川水系へ放流された。現在も養殖されて、各地の﹁へらぶな会﹂などにより全国に放流されている。
●ENDANGERED (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/7/70/Status_iucn3.1_EN.svg/langja-240px-Status_iucn3.1_EN.svg.png)
ヘラブナ釣り
編集
昔から﹃釣りはフナにはじまりフナに終わる﹄と言い習わされてきたが、始まりのフナはマブナで、終わりのフナはヘラブナであるなどとも言われる[4]。釣りの難易度と釣趣で﹁鮎とへらは最高峰﹂とも言われるが、釣り堀や管理釣り場であれば初心者でも比較的容易に楽しむことができる。反対に、野池やダム湖などに放流されて半野生化したものや、自然に繁殖し成長した﹁地べら﹂は警戒心が強く、魚影も薄いため釣り上げるのが困難であることが多いが、自然の中に遊ぶという釣り本来の趣向を持ち合わせており愛好者も多い。
冬場に新たに放流されるへらぶなは、﹁新べら﹂と言われ、餌慣れしており釣れ易く、また釣られたことがないため﹁引き﹂も強い。一瞬の微妙な﹁あたり﹂に素早く対応するためと、道糸が風の影響を受けることによって糸が引きずられて仕掛けが引きずられないようにする目的で、竿の先端︵穂先︶を水中に入れ、道糸を沈めたるませないようにする。
特に前述の産卵期には、浅場などで激しく魚体を叩きつけるような動作をし、大きな水音を立てる。釣り師の間ではこれを﹁乗っ込み﹂、﹁ハタキ﹂と呼び、春の風物の一つとみなし話題に上ることが多い。またその前後に荒食いをみせることから、年間を通してもっとも大型を釣り上げることの出来る可能性の高い時期でもある。
餌
編集
ヘラブナは水中のプランクトンを食べるため、マッシュポテトや麩、グルテン、専用に作られた配合餌などの練り餌を使う。かつて関西ではうどんがよく用いられた。このうどんは、現在ではゼラチン質のインスタント餌や、ワラビ粉・タピオカ粉などのデンプンから作ったものに代わられたが、依然、魚の活性が低い食い渋りのときや、冬場の釣りには根強い人気がある。季節や釣り場に応じて使い分け練り方にも工夫を加えることや、餌付けの手返しの早さによって釣果が左右される。
浮き
編集
餌を口に入れたり出したりして水に溶けだした餌を吸い込んで食べるため、微妙な﹁あたり﹂を見逃さずに釣らなければならない。そのために、細長く非常に敏感なヘラブナ釣り専用の浮き︵ヘラウキ︶が用いられる。胴の部分にはあらゆる浮力の大きい材料が使われるが、先端には、数センチ単位で色分けされた直径1~2mm程度の非常に細いトップと呼ばれるプラスティック、セルロイド系、もしくはグラスファイバーなどの材質が使われる。このトップが水面上にどのくらい出ているかで、餌の残り具合が分かり、また微妙なアタリを視覚的に察知できるようになっている。そのためヘラブナ釣りの浮きは細長い独自の形態を有している。
胴の部分には孔雀の羽や、草本類などを材料に自作する釣り人もいる。孔雀羽根は、輸入制限、輸入規制などにより、年々品質が悪くなり、細いものが多くなってきている関係上、以前は、廉価版扱いだったカヤ浮きもその立場を向上してきた。製作に使用される草本類は、昨今宅地化が進み、浮き作りに使用できるような良質な素材が手に入りにくいため、現在、そのほとんどを輸入材に頼っている。また、赤、橙、緑、などの蛍光色塗料で細かな目盛りを刻んだトップも改良が進んだ。以前は、セルロイド、繊維強化プラスチック (FRP) がほとんどであったものが、現在では、耐久性の低いセルロイドや、浮きの立ちや感度が鈍くなる重いFRPは敬遠され、より強度が高く軽量なポリカーボネイトのトップが主流になっている。
釣り竿
編集
より深く魚との駆け引きを楽しむため、軟調のヘラブナ釣り専用の﹁へら竿﹂が使われる。穂先の部分を﹁朱塗り﹂と呼ぶ地方もある︵竿の先端が赤かったことに由来︶。他の釣り竿同様、各メーカーから市販されており、最近ではカーボン竿が主流になっているが、へら竿専門職人製の高級品︵主に竹製︶も存在し、竿のしなりなどに人工素材では味わえない独自の感触があるため、一部の愛好家には未だに人気がある。一般に万力などで支持固定された﹁竿掛け﹂に置き、常に竿を握って﹁あたり﹂に備える。
釣り台
編集釣り針
編集
キャッチ&リリース︵釣り上げたヘラブナは持ち帰らず放流する︶が前提の釣りなので、魚をなるべく傷つけないよう﹁返し﹂のない釣り針︵スレ針︶が使われる。﹁ヘラスレ﹂﹁ヤラズ﹂等の呼称がある。また、﹁返し﹂を使わないことにより、手返しの早さが高まる効果もある。2本をハリスでサルカンやヨリ戻しなどから二又に段差をつけて用いるのが一般的。この場合、上針には集魚効果を期待してバラケ餌︵練り餌︶を用い、下針をクワセ針として使用することが多い。針の大きさは約ヘラ3-8号だと釣りやすい。
釣期
編集
一年を通して釣りは可能だが、季節によって別の魚とも思える行動をとるため、﹁へら師﹂︵ヘラブナ釣り人の総称︶は、釣り上げる以前に魚の行動研究を大事にする。春先から5月頃にかけて産卵のため浅場に集まることを﹁乗っ込み﹂、その時期を﹁乗っ込み期﹂と呼び、大型狙いや数釣りの好機とされる。一般に、水温が暖まる夏季は釣れるタナ︵ヘラブナの泳層︶が高くなり、水温が低い時期はタナも低くなる。水温の低下する冬季のヘラブナは﹁寒ベラ﹂と呼ばれ、摂餌行動が鈍化し釣れ難くなるが、繊細な釣りを楽しめる好機でもあり、愛好家も多い。
タナ
編集
上記のように、季節によって遊泳層︵タナ︶は大きく異なるとともに、その日の水温、時間帯やその他種々の要因によってもタナは異なるため、ヘラブナを釣る上ではその時々のタナをいち早く見つけ出すことが釣果を分ける大きな要因ともなる。﹃ヘラブナはタナを釣れ﹄との諺も存在するほどである。
食材
編集ヘラ
編集参考画像
編集-
野趣を楽しむ野池のヘラブナ釣り
-
固定へら釣り台
-
夏季、口吻のせり上がった、大型のゲンゴロウブナ︵オス??︶。筑後川水系、国内移入個体。
-
夏季、頭部の丸さが目立つ、大型のゲンゴロウブナ︵メス??︶。筑後川水系、国内移入個体。
出典
編集
(一)^ abcdefgKanao, S., Hasegawa, K. & Mukai, T. 2019. Carassius cuvieri. The IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T166137A1114496. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2019-2.RLTS.T166137A1114496.en. Downloaded on 30 March 2020.
(二)^ abcdefghijkl前畑政善 ﹁ゲンゴロウブナ﹂﹃レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生動物-4 汽水・淡水魚類﹄環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室編、株式会社ぎょうせい、2015年、154-155頁。
(三)^ 新村出 編﹃広辞苑 第七版﹄︵第一刷発行︶岩波書店、東京、2018年1月12日、939頁。ISBN 978-4-00-080131-7。
(四)^ Goアウトドア 魚のことわざ ただし、終りのフナはマブナであるという異論もある。
- 佐久間功・宮本拓海『外来水生生物事典』2005年 柏書房 ISBN 4760127461