ソケット (BSD)
BSDソケットインタフェース
編集AF_INET
やUNIXドメインソケットを指定するAF_UNIX
がある。全てのprotocol familyは<sys/socket.h>
で定義されている[10]。socket typeの例にはSOCK_STREAM
やSOCK
_DGRAM
がある。familyとsocketの組み合わせでトランスポート層プロトコルに相当することが多い。
row:family/column:type | SOCK_STREAM
|
SOCK_DGRAM
|
---|---|---|
AF_INET /AF_INET6
|
TCP | UDP |
AF_UNIX
|
UNIXドメインソケット | UNIXドメインソケット |
ヘッダファイル
編集<sys/socket.h>
BSDソケットの中核となる関数とデータ構造
<netinet/in.h>
AF_INET と AF_INET6 アドレスファミリ。インターネット上で広く使われ、IPアドレスとTCP/UDPのポート番号が含まれる。
<sys/un.h>
AF_UNIX アドレスファミリ。同一コンピュータ上で動作するプログラム間のローカルな通信に使用。ネットワーク上では使われない。
<arpa/inet.h>
数値としてIPアドレスを操作する機能の定義
<netdb.h>
プロトコル名とホスト名を数値アドレスに変換する機能の定義。ローカルなデータやDNSを検索する。
TCP
編集TCP はコネクションの概念を提供する。TCPソケットを生成するには socket()
関数で AF_INET
または AF_INET6
と SOCK_STREAM
を引数に指定する。
サーバ
編集socket()
呼び出し︶
●そのソケットを listen︵コネクション確立要求待ち受け︶ポートにバインド︵bind()
呼び出し︶。bind()
を呼び出す前に、sockaddr_in
構造体を宣言し、その中身をクリアし︵bzero()
または memset()
︶、その sin_
family
フィールドを AF_INET
か AF_INET
6
に設定し、sin_port
フィールドに listen 対象ポート番号をネットワークバイトオーダで設定する。short
int
をネットワークバイトオーダに変換するには、htons()
関数を使う。
●そのソケットをコネクションの listen に使用するため、l
isten()
を呼び出す。
●入ってきたコネクションを accept()
呼び出しで受け付ける。これはコネクションが受信されるまでブロックし、受信したコネクションのソケット記述子を返す。最初の記述子は listen 用記述子のままであり、accept()
はそのソケットをクローズするまで何度でも呼び出せる。
●遠隔のホストと通信を行う。send()
とrecv()
、またはw
rite()
とread()
を使用する。
●不要になったら、close()
を使ってオープンされた各ソケットをクローズする。なお、fork()
が行われた場合、各プロセスは見えているソケットを全てクローズしなければならず、複数のプロセスが同じソケットを同時に使ってはならない。
C99 でのサーバー側のソースコード。
#include <stdio.h>
#include <string.h>
#include <unistd.h>
#include <sys/types.h>
#include <sys/socket.h>
#include <netinet/in.h>
#include <arpa/inet.h>
int main(void)
{
// サーバーソケット作成
int sock = socket(AF_INET, SOCK_STREAM, 0);
if (sock == -1)
{
perror("socket");
return 1;
}
// struct sockaddr_in 作成
struct sockaddr_in sa = {0};
sa.sin_family = AF_INET;
sa.sin_port = htons(1100);
sa.sin_addr.s_addr = htonl(INADDR_ANY);
// バインド
if (bind(sock, (struct sockaddr*) &sa, sizeof(struct sockaddr_in)) == -1)
{
perror("bind");
goto bail;
}
// リッスン
if (listen(sock, 128) == -1)
{
perror("listen");
goto bail;
}
while (1)
{
// クライアントの接続を待つ
int fd = accept(sock, NULL, NULL);
if (fd == -1)
{
perror("accept");
goto bail;
}
// 受信
char buffer[4096];
int recv_size = read(fd, buffer, sizeof(buffer) - 1);
if (recv_size == -1)
{
perror("read");
close(fd);
goto bail;
}
// 受信内容を表示
buffer[recv_size] = '\0';
printf("message: %s\n", buffer);
// ソケットのクローズ
if (close(fd) == -1)
{
perror("close");
goto bail;
}
}
bail:
// エラーが発生した場合の処理
close(sock);
return 1;
}
クライアント
編集socket()
呼び出し︶
●connect()
でサーバに接続する。このとき、sockad
dr_in
構造体の sin_family
フィールドは AF
_INET
か AF_INET6
とし、sin_port
には通信相手が listen しているはずのポート番号をネットワークバイトオーダで設定し、sin_addr
にもネットワークバイトオーダで相手の︵IPv4 か IPv6 の︶アドレスを設定する。
●サーバと通信する。send()
とrecv()
、またはwrite
()
とread()
を使用する。
●コネクションの終了と削除処理を close()
で行う。なお、fork()
が行われた場合、各プロセスは見えているソケットを全てクローズしなければならず、複数のプロセスが同じソケットを同時に使ってはならない。
C99 でのクライアント側のソースコード。
#define _BSD_SOURCE
#include <stdio.h>
#include <string.h>
#include <unistd.h>
#include <netdb.h>
#include <sys/types.h>
#include <sys/socket.h>
#include <netinet/in.h>
#include <arpa/inet.h>
#define MESSAGE "Hello World!"
int main(void)
{
// ソケット作成
int sock = socket(AF_INET, SOCK_STREAM, 0);
if (sock == -1)
{
perror("socket");
return 1;
}
// struct sockaddr_in 作成
struct sockaddr_in sa = {0};
sa.sin_family = AF_INET;
sa.sin_port = htons(1100);
// localhost の IP アドレスを引く
struct hostent *hostent = gethostbyname("localhost");
if (hostent == NULL)
{
herror("gethostbyname");
goto bail;
}
memcpy(&sa.sin_addr, hostent->h_addr_list[0], sizeof(sa.sin_addr));
// 接続
if (connect(sock, (struct sockaddr*) &sa, sizeof(struct sockaddr_in)) == -1)
{
perror("connect");
goto bail;
}
// 送信
if (write(sock, MESSAGE, strlen(MESSAGE)) == -1)
{
perror("write");
goto bail;
}
// クローズ
close(sock);
return 0;
bail:
// エラーが発生した場合の処理
close(sock);
return 1;
}
上記のソースコードは gcc の場合 -std=c99
をつけることによりコンパイル可能であるが、-std=gnu99
を使用した場合は最初から定義されているので #define _BSD_SOURCE
はあっても無くてもどちらでも良い。#define _BSD_SOURCE
が無いと herror()
が使えない。
UDP
編集UDP はコネクションレスのプロトコルであり、パケットが必ず相手に届くことは保証されない。UDPパケットは順序通りに届くとは限らず、1つのパケットが複数個届くこともありうるし、全く届かないこともある。このようにほとんど何も保証されないため、UDP は TCP に比べてオーバヘッドが小さい。コネクションレスであるとは、2つのホスト間にコネクションやストリームといったものがなく、データが単に個々のパケット(datagram)として届けられることを意味している。
UDP のアドレス空間、すなわちUDPポート番号は、TCPポートとは別物である。
サーバ
編集C99 でのサーバ側のソースコード。ポート番号 7654 で UDP サーバを開く。
#include <stdio.h>
#include <string.h>
#include <unistd.h>
#include <sys/socket.h>
#include <sys/types.h>
#include <netinet/in.h>
int main(void)
{
// ソケット作成
int sock = socket(AF_INET, SOCK_DGRAM, 0);
if (sock == -1)
{
perror("socket");
return 1;
}
// struct sockaddr_in 作成
struct sockaddr_in sa = {0};
sa.sin_family = AF_INET;
sa.sin_port = htons(7654);
sa.sin_addr.s_addr = htonl(INADDR_ANY);
// バインド
if (bind(sock, (struct sockaddr *) &sa, sizeof(struct sockaddr_in)) == -1)
{
perror("bind");
goto bail;
}
while (1)
{
// 受信
char buffer[4096];
socklen_t addrlen = sizeof(struct sockaddr_in);
ssize_t recv_size = recvfrom(sock, (void *) buffer, sizeof(buffer) - 1, 0, (struct sockaddr *) &sa, &addrlen);
if (recv_size == -1)
{
perror("recvfrom");
goto bail;
}
// 受信内容表示
buffer[recv_size] = '\0';
printf("datagram: %s\n", buffer);
}
bail:
// エラーが発生した場合の処理
close(sock);
return 1;
}
bind()
は、ソケットとアドレス/ポートを結びつける。
最後の無限ループは recvfrom()
を使ってポート番号 7654 からのUDPパケットを受信する。引数は以下の通り。
- ソケット
- バッファへのポインタ
- バッファの大きさ
- フラグ(read などの他のソケット受信関数と同じ)
- アドレス構造体
- アドレス構造体の大きさ
クライアント
編集C99 でのクライアント側のソースコード。ポート 7654、アドレス 127.0.0.1 に "Hello World!" という内容の UDP パケットを送る。
#include <stdio.h>
#include <string.h>
#include <unistd.h>
#include <sys/socket.h>
#include <sys/types.h>
#include <netinet/in.h>
#include <arpa/inet.h>
#define MESSAGE "Hello World!"
int main(void)
{
// ソケット作成
int sock = socket(AF_INET, SOCK_DGRAM, 0);
if (sock == -1)
{
perror("socket");
return 1;
}
// struct sockaddr_in 作成
struct sockaddr_in sa = {0};
sa.sin_family = AF_INET;
sa.sin_port = htons(7654);
sa.sin_addr.s_addr = inet_addr("127.0.0.1");
// 送信
int bytes_sent = sendto(sock, MESSAGE, strlen(MESSAGE), 0, (struct sockaddr*) &sa, sizeof(struct sockaddr_in));
if (bytes_sent == -1)
{
perror("sendto");
goto bail;
}
// クローズ
close(sock);
return 0;
bail:
// エラーが発生した場合の処理
close(sock);
return 1;
}
UNIXドメインソケット
編集IP の場合は IP アドレス+ポート番号で接続先を指定するのに対して、UNIXドメインソケットの場合はファイルパスで指定する。
関数
編集socket()
編集socket()
は通信の一方の終端を作成し、それを表すファイル記述子を返す。socket()
には以下の3つの引数がある。
●domain
- 生成するソケットのプロトコルファミリを指定する。
●AF_INET
- IPv4
●AF_INET6
- IPv6
●AF_UNIX
- UNIXドメインソケット
●type
- ソケットのタイプ指定。
●SOCK_STREAM
- 信頼性のあるストリーム指向サービス︵TCPに対応︶
●SOCK_DGRAM
- データグラムサービス︵UDPに対応︶
●SOCK_SEQPACKET
- SOCK_STREAM
とほぼ同じだが、受信したパケットを読み出す際にパケット全体を読み出さないと、残りを破棄する。
●SOCK_RAW
- IPレベルのプロトコル処理をユーザー側で用意するときに使用
●protocol
- 通常 0 を指定し、デフォルトの物が選ばれる。トランスポート層のプロトコルは、domain
と typ
e
で指定されるが︵TCPの場合、AF_INET
または AF
_INET6
と SOCK_STREAM
、UDPの場合、同様の AF_
値と SOCK_DGRAM
︶、明示的に指定することも可能で、その値は <netinet/in.h> に定義されている。
エラーが発生すると -1 を返す。そうでない場合、新たに確保された記述子を表す整数を返す。
#include <sys/types.h>
#include <sys/socket.h>
int socket(int domain, int type, int protocol);
gethostbyname() と gethostbyaddr()
編集gethostbyname()
と gethostbyaddr()
は名前やアドレスで指定されたインターネット上のホストを表す s
truct hostent
というデータ構造へのポインタを返す。その中には、ネームサーバから得られた情報、/etc/hosts ファイルから得られた情報などが格納されている。ローカルにネームサーバが動作していない場合、/etc/hosts ファイルを参照する。以下の引数がある。
●name
- ホスト名を指定。例えば "www.wikiped
ia.org"
●addr
- in_addr
構造体へのポインタ。中身としてホストのアドレスを指定。
●len
- addr
の長さをバイト数で指定。
●type
- アドレスのドメイン型を指定。例えば、AF_INE
T
エラーが発生するとNULLポインタを返し、h_errno
を見れば詳しいエラーの原因︵再試行すべきか否か︶がわかる。そうでない場合、有効な struct hostent *
が返される。
struct hostent *gethostbyname(const char *name);
struct hostent *gethostbyaddr(const void *addr, int len, int type);
connect()
編集connect()
はコネクションの確立に成功すると 0 を返し、エラーが発生すると -1 を返す。
コネクションレスのソケットの場合(User Datagram Protocol)、connect()
は送受信の相手を指定するのに使われ、send()
と recv()
をコネクションレスのソケットで使えるようになる。
#include <sys/types.h>
#include <sys/socket.h>
int connect(int sockfd, const struct sockaddr *addr, socklen_t addrlen);
bind()
編集bind()
はソケットにアドレスを設定する。socket()
で生成された時点では、ソケットはアドレスファミリは指定されているが、アドレスは設定されていない。ソケットは、コネクションを受け付ける前にバインド(アドレス設定)される必要がある。以下の引数がある。
sockfd
- バインドすべきソケットの記述子addr
- バインドすべきアドレスを表すsockaddr
構造体へのポインタaddrlen
-sockaddr
構造体の大きさ
成功すると 0 を返し、エラーが発生すると -1 を返す。
#include <sys/types.h>
#include <sys/socket.h>
int bind(int sockfd, const struct sockaddr *addr, socklen_t addrlen);
listen()
編集listen()
はバインドされたソケットでコネクション確立要求を待ち受ける。SOCK_STREAM
または SOCK_SEQP
ACKET
の場合のみ有効。以下の引数がある。
●sockfd
- ソケット記述子
●backlog
- ある時点でペンディングにできる︵キューイングできる︶最大コネクション数。一般にOSが上限を設けている。
コネクションは accept()
されるとデキューされる。成功すると 0 を返す。エラーが発生すると -1 を返す。
#include <sys/socket.h>
int listen(int sockfd, int backlog);
accept()
編集accept()
は、リモートホストからのコネクション確立要求を受け付ける。以下の引数がある。
●sockfd
- listen していたソケットの記述子
●addr
- クライアントのアドレス情報を accept()
の中で格納するための sockaddr
構造体へのポインタ
●addrlen
- addr
が指す sockaddr
構造体の大きさを格納する socklen_t
へのポインタ。acce
pt()
から戻ったとき、実際に格納されたデータ構造のサイズに更新されている。
コネクションが確立された場合、それに対応したソケット記述子を返す。エラーが発生すると -1 を返す。
#include <sys/types.h>
#include <sys/socket.h>
int accept(int sockfd, struct sockaddr *addr, socklen_t *addrlen);
ブロッキングとノンブロッキング
編集BSDソケットは、ブロッキングとノンブロッキングという2つのモードを持つ。ブロッキング・ソケットは、指定されたデータを全て送受信し終わるまで呼び出したライブラリ関数から戻ってこない。そのため、プログラムは決して届かないデータを待って動けなくなる可能性がある。これは、ソケットで listen を続けたい場合などに困る。
ブロッキングかノンブロッキングかを指定するには、fcntl()
か ioctl()
関数を使う。
注意点
編集socket()
で確保されたリソースは close()
を使うまで解放されない。これは、connect()
が成功するまで再試行を繰り返すような実装で注意が必要となる。socket()
を呼び出したら必ず対応する close()
を呼び出す必要がある。close を使うには <unistd.h> をインクルードする必要がある。
参考文献
編集脚注
編集注釈
編集- ^ 代表的なものとして、Javaの
java.net.Socket
クラスや、.NETのSystem.Net.Sockets.Socket
クラス[8]が挙げられる。
出典
編集関連項目
編集- コンピュータネットワーク
- Transmission Control Protocol (TCP)
- User Datagram Protocol (UDP)
- Winsock - Microsoft Windows用のソケットAPI
外部リンク
編集socket(2)
– JM Project Linux System Calls マニュアルconnect(2)
– JM Project Linux System Calls マニュアルbind(2)
– JM Project Linux System Calls マニュアルlisten(2)
– JM Project Linux System Calls マニュアルaccept(2)
– JM Project Linux System Calls マニュアルsocket(7)
– JM Project Linux Overview, Conventions and Miscellanea マニュアルtcp(7)
– JM Project Linux Overview, Conventions and Miscellanea マニュアルudp(7)
– JM Project Linux Overview, Conventions and Miscellanea マニュアル- Porting Socket Applications to Winsock - Win32 apps | Microsoft Docs