ハイイロオオカミはトルコにおいて神聖かつ国民的な動物として特別視されている。トルコ人の国民的象徴である理由は、トルコ人が﹁自分たちはオオカミの子孫である﹂という伝承を信じている点にある。
ケマル・アタテュルクによって国の象徴の一つと宣言され、現今も多くの場所でハイイロオオカミをモチーフにしたロゴなどが使用されている。一例として共和国発足から最初の数年間、紙幣にはハイイロオオカミの絵が印刷されていた点が挙げられる。
トルコは赤と白の2色をナショナルカラーとしている。代表的なものには国旗が挙げられる。また、宝石の一種のターコイズはトルコ文化の一部であると同時に、トルコの象徴色の1つと考えられている。更にこの3色は現在、様々な分野で頻繁に使用されている。
2021年12月4日、トルコ政府は英語表記を Turkey︵ターキー︶ から Türkiye へ変更することを決定した[13]。またドイツ語︵Türkei︶、フランス語︵Turquie︶などの外名も同様の変更を行うとしている。これについてエルドアン大統領は﹁Türkiye はトルコの国民、文化、価値観を最も表した言葉である﹂と述べた。国際的認知度を高めるためトルコ製を表す﹁Made in Turkey﹂は﹁Made in Türkiye﹂として輸出される[14]。2022年1月、国際連合へ国名変更の通達を行う計画が報じられ[15]、国連のグテーレス事務総長宛ての書簡でチャヴシュオール外相が正式に変更を通報し、2022年6月1日にこの通報が受理された[12]。
英語の Turkey は国名のほかに鳥類で食用としても振る舞われる七面鳥︵ターキー︶、英語圏の俗語で﹁失敗する﹂﹁愚かな人﹂といった意味を持つ。そのため反イスラム・反トルコ主義者はしばしトルコを七面鳥に例えて攻撃した。国名の英語表記をトルコ語名と同じにすることで英語話者の混乱を避け、更に国家のブランドを維持する思惑があると言われている[15]。
政治は多党制の政党政治を基本としているが、政党の離合集散が激しく、議会の選挙は小党乱立を防ぐため、10%以上の得票率を獲得できなかった政党には議席がまったく配分されない独特の方式をとっている。この制度のため、2002年の総選挙では、選挙前に中道右派・イスラム派が結集して結党された公正発展党︵AKP︶と、野党で中道左派系・世俗主義派の共和人民党︵CHP︶の2党が地すべり的な勝利を収め、議席のほとんどを占めている。2007年7月22日に実施された総選挙では、公正発展党が前回を12ポイントを上回る総得票率47%を獲得して圧勝した。共和人民党が議席を減らし、112議席を獲得。極右の民族主義者行動党︵MHP︶が得票率14.3%と最低得票率10%以上の票を獲得し71議席を獲得、結果的に公正発展党は340議席となり、前回より12議席を減らすこととなった。独立候補は最低得票率の制限がなく、クルド系候補など27議席を獲得した。
ムスタファ・ケマル・アタテュルク以来強行的に西欧化を押し進めてきたが、その歴史においてケマルをはじめ、政治家を数多く輩出した軍が政治における重要なファクターとなることがあり、政治や経済の混乱に対してしばしば圧力をかけている。1960年に軍は最初のクーデターを起こしたが、その後、参謀総長と陸海空の三軍および内務省ジャンダルマ︵憲兵隊︶の司令官をメンバーに含む国家安全保障会議︵Milli Güvenlik Kurulu︶が設置され、国政上の問題に対して内閣に圧力をかける実質上の政府の上位機関と化しているが、このような軍部の政治介入は、国民の軍に対する高い信頼に支えられていると言われる。1980年の二度目のクーデター以降、特にイスラム派政党の勢力伸張に対して、軍は﹁ケマリズム﹂あるいは﹁アタテュルク主義﹂と呼ばれるアタテュルクの敷いた西欧化路線の護持を望む世俗主義派の擁護者としての性格を前面に打ち出している。軍は1997年にイスラム派の福祉党主導の連立政権を崩壊に追い込み、2007年には公正発展党による同党副党首の大統領選擁立に対して懸念を表明したが、この政治介入により国際的な非難を浴びた。8月29日には、議会での3回の投票を経てアブドゥラー・ギュル外相が初のイスラム系大統領として選出された。この結果、もはや以前のように軍が安易に政治に介入できる環境ではなくなり、世俗派と宗教的保守派の対立はもっと社会の内部に籠ったものとなってきている︵エルゲネコン捜査︶。
2009年3月29日、自治体の首長や議員を選ぶ選挙が行われた。イスラム系与党の公正発展党︵AKP︶が世俗派野党の共和人民党などを押さえ勝利した。
2010年9月12日には、与党・公正発展党︵AKP︶が提起した憲法改定案の是非を問う国民投票が実施された。現憲法は1980年のクーデター後の1982年に制定されたもので、軍や司法当局に大幅な権限を与え、国民の民主的権利を制限するといわれてきた。この憲法改定案は民主主義を求める国民の声や欧州連合︵EU︶加盟の条件整備などを踏まえ、司法や軍の政治介入を押さえ、国会や大統領の権限を強めることなど26項目を提起している。国民投票の結果、憲法改正案は58%の支持で承認された。投票率は73%であった。エルドアン首相は民主主義の勝利だと宣言した︵AFP電︶。また、国民投票結果について﹁発達した民主主義と法治国家に向け、トルコは歴史的な一線を乗り越えた﹂と評価した。欧米諸国はこの改憲国民投票結果を歓迎している。欧州連合︵EU︶の執行機関欧州委員会は、加盟に向けての一歩だと讃えた[19][20][21]。
2014年8月28日にエルドアン首相は大統領に就任し、アフメト・ダウトオール外相が首相となったが、2016年5月22日にはビナリ・ユルドゥルムが新たな首相に就任した。
その後、2017年に大統領権限の強化と首相職の廃止を盛り込んだ憲法改正案が可決され、2018年7月9日に首相職は廃止された。
外交面では北大西洋条約機構(NATO)加盟国である。また、NATO加盟国としては唯一、非欧米軍事同盟である上海協力機構の対話パートナーであり、中露との軍事協力も行うなど、もはや西側一辺倒の外交路線ではなくなっている。
政府の公式見解では自国をヨーロッパの国としており[要出典]、現代では経済的・政治的にヨーロッパの一員として参加しつつあり、ヘルシンキ宣言に署名している。2002年に政権についた公正発展党は、イスラム系を中心とする政党ながら軍との距離を慎重に保って人権問題を改善する改革を進めてきた。2004年には一連の改革が一応の評価を受け、条件つきではあるものの欧州委員会によって2005年10月からの欧州連合への加盟交渉の開始が勧告された。現在、国内世論と戦いながら加盟申請中である。なお、加盟基準であるコペンハーゲン基準については現在議論が行われている。
MIKTA(ミクタ)は、メキシコ(Mexico)、インドネシア(Indonesia)、大韓民国(Republic of Korea)、トルコ(Turkey)、オーストラリア(Australia)の5か国によるパートナーシップである。
軍事組織として、陸軍、海軍、空軍で組織されるトルコ軍 (Türk Silahlı Kuvvetleri) と内務省に所属するジャンダルマ︵憲兵隊、Jandarma︶、沿岸警備隊 (Sahil Güvenlik) が置かれている。兵役は男子に対してのみ課せられている。学歴が高卒以下の場合は兵役期間が15か月であり、大卒以上の場合は将校として12か月か、二等兵として6か月を選択できるようになっている。国外に連続して3年以上居住している場合、3週間の軍事訓練と約5,000ユーロの支払いで兵役免除になる。なお兵役期間終了後は41歳まで予備役となる。2011年末には金銭を納めることで兵役を免除可能となり、事実上良心的兵役拒否を合法化した。兵員定数はないが、三軍あわせておおむね約38万人程度の兵員数である。また、ジャンダルマと沿岸警備隊は戦時にはそれぞれ陸軍・海軍の指揮下に入ることとされている。ただし、ジャンダルマについては、平時から陸軍と共同で治安作戦などを行っている。
指揮権は平時には大統領に、戦時には参謀総長︵Genelkurmay Başkanı︶に属すると憲法に明示されており、戦時においては文民統制は存在しない。また、首相および国防大臣には軍に対する指揮権・監督権は存在しない。ただし、軍は歴史的にも、また現在においても極めて政治的な行動をとる軍隊であり、また、国防予算の15%程度が議会のコントロール下にない軍基金・国防産業基金などからの歳入であるなど、平時においても軍に対する文民統制には疑問も多い。この結果、軍はいわば﹁第四権﹂といった性格を持ち、世俗主義や内政の安定を支える大きな政治的・社会的影響力を発揮してきた。
1960年と1980年にはクーデターで軍事政権を樹立したこともある。近年はエルドアン政権の権限強化とそれに対するクーデター失敗、経済発展に伴う社会の成熟・多様化により、軍部の影響力は以前より低下している。
軍事同盟としては1952年以降は北大西洋条約機構︵NATO︶に加盟し、1992年以降は西欧同盟︵WEU︶に準加盟している。また、1979年それ自体が崩壊するまで中央条約機構︵CENTO︶加盟国でもあった。2国間同盟としては1996年、イスラエルと軍事協力協定および軍事産業協力協定を締結しており、1998年からは実際にアメリカ合衆国、イスラエルとともに3国で共同軍事演習﹁アナトリアの鷲︵英語版︶﹂が行われた。
NATO加盟国としては唯一、非欧米国家グループである上海協力機構の対話パートナーにもなっており、2015年にはエルドアン大統領によって正規加盟が要請された[33][34]。軍事装備は西側のものだけではなく、中華人民共和国の協力で弾道ミサイルのJ-600Tユルドゥルム︵英語版︶や多連装ロケットシステムのT-300カシルガ︵英語版︶を導入しており、NATOのミサイル防衛を揺るがすHQ-9やS-400のような地対空ミサイルも中国やロシアから購入する動きも見せた。2010年にはアメリカやイスラエルと行ってきた﹁アナトリアの鷲﹂演習を中国と実施し、中国と初めて合同軍事演習を行ったNATO加盟国となった[35][36][37]。
2019年にはロシアの地対空ミサイルS-400を搬入。アメリカ政府はロシアへの軍事機密漏洩を警戒して、F-35戦闘機国際共同開発からトルコを排除した[38]。
南東部においてはクルディスタン労働者党︵PKK︶との戦闘状態が長年続いている。南隣にあるイラクとシリアに対しても、国境をまたいで活動するPKKやイスラム国など反トルコ勢力への攻撃と、親トルコ派勢力の支援を目的に、派兵や越境空爆をしばしば行っている[39][40]。
中近東という位置や地中海やエーゲ海からくる印象から、一般に温暖な印象であるが、沿岸地域を除くと冬は寒冷な国である。エーゲ海や地中海の沿岸地方は温暖で、ケッペンの気候区分では地中海性気候に属し、夏は乾燥していて暑く、冬は温暖な気候で保養地となっている。
イスタンブールのあるマルマラ海周辺やヨーロッパトルコ地域は地中海性気候と温暖湿潤気候の中間に属し、夏は他地域よりは涼しく、冬は比較的寒くなり雪も降る。
黒海沿岸地方は温暖湿潤気候に属し、年間を通じトルコ降水量が最多である。深い緑に覆われている。
国土の大半を占める内陸部は大陸性気候で寒暖の差が激しく乾燥しており、アンカラなどの中部アナトリア地方はステップ気候や高地地中海性気候に属する。夏は乾燥していて非常に暑くなるが、冬季は積雪も多く、気温が−20°C以下になることも珍しくない。
東部アナトリア地方は亜寒帯に属し、冬は非常に寒さが厳しく、東部の標高1,500mを超えるような高原地帯では1月の平均気温は−10°Cを下回る。標高1,757mにあるエルズルムでは気温がしばしば−30°Cを下回り、−40°Cに達することもある酷寒地である。
ヴァン県のチャルディラーン︵Çaldıran︶では、1990年1月9日に国内最低となる−46.4°Cを記録している。高温記録としては1993年8月14日にシリア国境に近いマルディン県のコジャテプ︵Kocatepe︶で48.8°Cを記録している[43]。
トルコ各地の平年値(統計期間:1960年 - 2012年、出典:トルコ気象庁)
平年値 (月単位)
|
マルマラ地方
|
エーゲ海地方
|
地中海地方
|
中央アナトリア地方
|
エディルネ
|
イスタンブール
|
ブルサ
|
イズミル
|
デニズリ
|
アンタルヤ
|
アダナ
|
カフラマンマラシュ
|
アンカラ
|
コンヤ
|
カイセリ
|
エスキシェヒル
|
スィヴァス
|
ヨズガト
|
気候区分
|
Cfa |
Cfa
|
Cfa |
Csa
|
Csa |
Csa
|
Csa |
Csa
|
BSk |
BSk
|
Dsb |
BSk
|
Dsb |
Dsb
|
平均 気温 (°C)
|
最暖月
|
24.7 (7月) |
24.4 (7月)
|
24.5 (7月) |
28.0 (7月) |
27.4 (7月)
|
28.4 (7月) |
28.5 (8月) |
28.4 (8月)
|
23.5 (7月) |
23.6 (7月)
|
22.6 (7月) |
21.7 (7月)
|
20.2 (7月) |
19.7 (7月)
|
最寒月
|
2.6 (1月) |
6.5 (1月,2月)
|
5.2 (1月) |
8.8 (1月) |
5.8 (1月)
|
9.8 (1月) |
9.6 (1月) |
4.8 (1月)
|
0.3 (1月) |
−0.2 (1月)
|
−1.8 (1月) |
−0.1 (1月)
|
−3.3 (1月) |
−1.9 (1月)
|
降水量 (mm)
|
最多月
|
72.9 (12月) |
99.1 (12月)
|
109.6 (12月) |
147.5 (12月) |
93.0 (12月)
|
251.2 (12月) |
133.9 (12月) |
132.6 (12月)
|
51.2 (5月) |
44.8 (12月)
|
55.0 (4月) |
48.4 (12月)
|
61.6 (4月) |
81.1 (12月)
|
最少月
|
24.1 (8月) |
20.9 (7月)
|
16.1 (7月) |
1.9 (7月) |
8.4 (8月)
|
1.8 (8月) |
5.0 (8月) |
0.8 (8月)
|
10.9 (8月) |
5.6 (8月)
|
5.4 (8月) |
8.7 (8月)
|
6.0 (8月) |
8.9 (8月)
|
平年値 (月単位)
|
東アナトリア地方
|
南東アナトリア地方
|
黒海地方
|
アール
|
アルダハン
|
カルス
|
エルズルム
|
ハッキャリ
|
マラティヤ
|
ヴァン
|
ディヤルバクル
|
ガズィアンテプ
|
シャンルウルファ
|
キリス
|
ゾングルダク
|
サムスン
|
トラブゾン
|
気候区分
|
Dfb
|
Dfb |
Dfb
|
Dfb |
Dsa
|
BSk |
Dsa
|
Csa |
Csa
|
Csa |
Csa
|
Cfb |
Cfa
|
Cfa
|
平均 気温 (°C)
|
最暖月
|
21.2 (7,8月) |
16.3 (7月)
|
17.6 (8月) |
19.3 (7,8月)
|
25.0 (7月) |
27.4 (7月)
|
22.3 (7月) |
31.2 (7月)
|
27.8 (7月) |
31.9 (7月)
|
28.1 (7月)
|
21.9 (7月) |
23.3 (8月) |
23.4 (8月)
|
最寒月
|
−10.8 (1月) |
−11.4 (1月)
|
−10.4 (1月) |
−9.4 (1月)
|
−4.7 (1月) |
0.1 (1月)
|
−3.5 (1月) |
1.8 (1月)
|
3.0 (1月) |
5.6 (1月)
|
5.6 (1月)
|
6.0 (1,2月) |
7.3 (2月) |
6.9 (2月)
|
降水量 (mm)
|
最多月
|
74.2 (4月) |
91.3 (6月)
|
77.2 (5月) |
67.8 (5月)
|
125.7 (4月) |
57.8 (4月)
|
57.2 (4月) |
71.4 (12月)
|
100.2 (1月) |
86.5 (1月)
|
88.1 (12月)
|
158.0 (12月) |
117.1 (10月) |
85.2 (11月)
|
最少月
|
12.3 (8月) |
18.6 (1月)
|
20.3 (1月) |
17.0 (8月)
|
2.5 (8月) |
1.6 (8月)
|
3.4 (8月) |
0.3 (8月)
|
2.1 (8月) |
0.2 (8月)
|
1.2 (7月)
|
54.4 (5月) |
35.5 (7月) |
32.8 (7月)
|
- 最暖月22°C未満:薄水色
- 最寒月−3°C未満(= 亜寒帯(D)の条件):薄水色、水色、青色
地方行政制度はオスマン帝国の州県制をベースとしてフランスに範をとり、全土を県︵il︶と呼ばれる地方行政区画に区分している。1999年以降の県の総数は81である。各県には中央政府の代理者として知事︵vali︶が置かれ、県の行政機関︵valilik︶を統括する。県行政の最高権限は4年任期で民選される県議会が担い、県知事は県議会の決定に従って職務を遂行する。
県の下には民選の首長を有する行政機関︵belediye︶をもった市︵şehir︶があり、郡の下には自治体行政機関のある市・町︵belde︶と、人口2000人未満で自治体権限の弱い村︵köy︶がある。イスタンブール、アンカラなどの大都市︵büyük şehir︶は、市の中に特別区に相当する自治体とその行政機関︵belediye︶を複数持ち、都市全体を市自治体︵büyük şehir belediyesi︶が統括する。
|
都市
|
行政区分
|
人口(人)
|
|
都市
|
行政区分
|
人口(人)
|
1
|
イスタンブール
|
マルマラ地方 イスタンブール県
|
15,840,900
|
11
|
メルスィン
|
地中海地方 メルスィン県
|
1,891,145
|
2
|
アンカラ
|
中央アナトリア地方 アンカラ県
|
5,747,325
|
12
|
ディヤルバクル
|
南東アナトリア地方 ディヤルバクル県
|
1,791,373
|
3
|
イズミル
|
エーゲ海地方 イズミル県
|
4,425,789
|
13
|
ハタイ
|
地中海地方 ハタイ県
|
1,670,712
|
4
|
ブルサ
|
マルマラ地方 ブルサ県
|
3,147,818
|
14
|
マニサ
|
エーゲ海地方 マニサ県
|
1,456,626
|
5
|
アンタルヤ
|
地中海地方 アンタルヤ県
|
2,619,832
|
15
|
カイセリ
|
中央アナトリア地方 カイセリ県
|
1,434,357
|
6
|
コンヤ
|
中央アナトリア地方 コンヤ県
|
2,277,017
|
16
|
サムスン
|
黒海地方 サムスン県
|
1,371,274
|
7
|
アダナ
|
地中海地方 アダナ県
|
2,263,373
|
17
|
バルケスィル
|
マルマラ地方 バルケスィル県
|
1,250,610
|
8
|
シャンルウルファ
|
南東アナトリア地方 シャンルウルファ県
|
2,143,020
|
18
|
カフラマンマラシュ
|
地中海地方 カフラマンマラシュ県
|
1,171,298
|
9
|
ガズィアンテプ
|
南東アナトリア地方 ガズィアンテプ県
|
2,130,432
|
19
|
ヴァン
|
東アナトリア地方 ヴァン県
|
1,141,015
|
10
|
コジャエリ
|
マルマラ地方 コジャエリ県
|
2,033,441
|
20
|
アイドゥン
|
エーゲ海地方 アイドゥン県
|
1,134,031
|
2021年国勢調査
|
国の東部には小規模な都市が目立ち、特に東北部、または黒海沿岸には都市への人口の集中があまり見られない。その背景には、南東部などの後進地域の若年層が雇用機会を求めて、イスタンブール、アンカラ、イズミル、ブルサ、アンタルヤといった西部大都市へ移動していることがあり、地域格差の拡大につながる社会問題となっている[46]。
トルコの国土
トルコ国家統計庁によると、2022年の名目GDPは9,055億ドルである[7]。1人あたりのGDPは10,655ドルである[7]。
経済成長率は5.6%、物価上昇率は57.7%、失業率は10.3%である[7]。
産業は近代化が進められた工業・商業と、伝統的な農業からなり、農業人口が国全体の労働者のおよそ18.4%︵2016年︶を占める[47]。漁業は沿岸部では比較的盛んであるが、エーゲ海ではギリシャ領の島々が本土のすぐ近くに点在しているため、領海・排他的経済水域や公海上の漁獲量をめぐる国際問題が起きることもある。
地中海に面する西部と首都アンカラ周辺地域以外では農業の比重が大きい。特に東部では、地主制がよく温存されているなど経済近代化の立ち遅れが目立ち、農村部の貧困や地域間の経済格差が大きな問題となっている。
国土は鉱物資源に恵まれている。有機鉱物資源では石炭の埋蔵量が多い。2002年の時点では亜炭・褐炭の採掘量が6,348万トンに達した。これは世界シェアの7.0%であり、世界第6位に位置する。しかしながら高品位な石炭の生産量はこの20分の1過ぎない。原油︵252万トン︶と天然ガス︵12千兆ジュール︶も採掘されている。
金属鉱物資源では、世界第2位の産出量の︵200万トン、世界シェア17.9%︶マグネシウムをはじめ、アンチモン、金、鉄、銅、鉛、ボーキサイトなどの鉱物を産出する。
しかしながら、石炭は火力発電など燃料として国内で消費し、マグネシウムの国際価格が低迷していることから、同国の輸出に占める鉱物資源の割合は低く、4%程度︵2002年時点︶に過ぎない。
石油・天然ガスについては黒海で開発を進め、2002年の段階から生産を始めていたが、近年石油は100億バレル、ガスは1兆5千億立方メートルと莫大な埋蔵量であることが分かった。これにより2023年から40年間にわたって、国内消費分を賄うことができるようになるとの見通しである。
1990年代の後半から経済は低調で、政府は巨額の債務を抱え、国民は急速なインフレーションに悩まされていた。歴代の政権はインフレの自主的な抑制に失敗し、2000年からIMFの改革プログラムを受けるに至るが、同年末に金融危機を起こした。この結果、トルコリラの下落から国内消費が急激に落ち込んだ。
2002年以後は若干持ち直し、実質GNP成長率は5%以上に復調、さらに同年末に成立した公正発展党単独安定政権の下でインフレの拡大はおおよそ沈静化した。2005年1月1日には100万トルコリラ(TL)を1新トルコリラ(YTL)とする新通貨を発行し、実質的なデノミネーションが行われた。なお2009年より、新トルコリラは再び「トルコリラ」という名称に変更されている。
貿易は慢性的に赤字が続いている。2003年時点では輸出466億ドルに対し、輸入656億ドルであった。ただし、サービス収支、たとえば観光による収入︵90億ドル、2002年︶、所得収支、たとえば海外の出稼ぎからの送金などが多額に上るため、経常収支はほぼバランスが取れている。
輸出・輸入とも過半数を工業製品が占める。世界第2位の生産量を占める毛織物のほか、毛糸、綿糸、綿織物、化学繊維などの生産量がいずれも世界の上位10位に含まれる、厚みのある繊維産業が輸出に貢献している。衣料品を輸出し、機械類を輸入するという構造である。
輸出品目では工業製品が 83.2%を占め、ついで食料品9.9%、原材料・燃料5.0%である。工業製品では衣類21.1%、繊維・織物 11.1%、自動車10.5%、電気機械8.6%が主力であり、鉄鋼も輸出している。輸出相手国はヨーロッパ圏が主力であり、ドイツ 15.8%、アメリカ合衆国7.9%、イギリス7.8%、イタリア6.8%、フランス6.0%の順である。日本に対する最大の輸出品目はマグロ︵21.7%︶、ついで衣料品である。
輸入品目でも工業製品が65.9%に達する。ついで原材料・燃料21.3%、食料品4.0%である。品目別では機械類13.4%、電気機械9.2%、自動車7.7%、原油6.9%、繊維・織物5.0%である。輸入相手国も欧州が中心で、ドイツ13.6%、イタリア7.9%、ロシア7.9%、フランス6.0%、イギリス5.0%の順である。日本からの最大の輸入品目は乗用車︵12.1%︶、ついで自動車用部品である。
交通の中心となっているのは、旅客・貨物ともに陸上の道路交通である。鉄道は国鉄︵TCDD︶が存在し、1万940キロメートルの路線を保有・運営しているが、きわめて便が少なく不便である。また、駅舎、路線、その他設備は整備が不十分で老朽化が進んでいる。2004年には国鉄は最高時速160キロメートルの新型車両を導入したが、7月にその新型車両が脱線事故を起こし39名の死者を出した。これは、路線整備が不十分なまま新型車両を見切り発車的に導入したことが原因といわれている。この事故は国鉄の信頼性を一層低下させ、鉄道乗客数は激減している。その後、路線の新設や改良に巨額の投資をし始め、2007年4月23日、エスキシェヒール - アンカラ間にて初のトルコ高速鉄道︵最高時速250キロメートル︶が開通した。その後も、アンカラ-コンヤ間でも完成するなど、各地で高速鉄道建設が進められ近代化が図られている。
政府は道路整備を重視しており、国内の道路網は2004年時点で6万3,220キロメートルに及んでいる。また、イスタンブールとアンカラを結ぶ高速道路︵Otoyol︶も完成間近となった。貨物輸送はもちろん、短距離・長距離を問わず旅客輸送の中心もバスによる陸上輸送が中心で、大都市・地方都市を問わず都市には必ず﹁オトガル﹂と呼ばれる長距離バスターミナル︵Otogal/Terminal︶が存在し、非常に多くのバス会社が多数の路線を運行している。また、世俗主義国家であるとはいえイスラム教国であるため、これらのバスでは親子や夫婦などを除き男女の相席をさせることはまずない。
いまだ雇用所得が低いことや、高額の自動車特別消費税︵1,600cc未満37%、1,600cc以上60%、2,000cc以上84%︶、非常に高価なガソリン価格︵2008年時点で1リットル当たり3.15YTL︵約280円︶程度︶のために、自家用車の普及はあまり進んでいない。また、農村部においては現在でも人的移動や農作物の運搬のためにトラクターや馬を用いることはごく普通である。農村部や地方都市において露天バザールが開催される日には、アンカラやイスタンブールとはかけ離れたこれらの光景をよく目にすることができる。
2022年の世界平和度指数の安全・安心︵Safety & Security︶部門で163カ国中138位ぐらいとロシアより下位に位置し、不安定さが目立つだけでなく、かなり危険な状況にあるトルコの治安状況を、日本人は知らないのである[63]。2007年以降、同国警察が犯罪統計を公表していないために詳細な件数は不明であるものの、日本と比べると一般犯罪︵特に窃盗事件︶や凶悪犯罪︵殺人、強盗︶は数多く発生している方で、置き引きやスリ、ぼったくり、詐欺︵主に恋愛を利用したものや格安を謳うツアー、乗車料金やクレジットカードに絡むもの︶、性犯罪、偽警察官による犯罪も散見されている[64]。
トルコにおける法執行は、トルコ軍の指揮下に置かれる憲兵「ジャンダルマ」や警察総局をはじめとして、内務省(英語版)の下で行動するいくつかの省庁ならび公的機関によって行なわれている。
他人の権利の尊重や情報の自由な流れなどの基本的人権に基づく2020年積極的平和指数は、163カ国中88位と先進国を下回り、世界的には平均程度だが、66位の中国を下回っている[65]。
国土は、ヒッタイト、古代ギリシア、ローマ帝国、イスラームなど様々な文明が栄えた地であり、諸文化の混交が文化の基層となっている。これらの人々が残した数多くの文化遺産、遺跡、歴史的建築が残っており、世界遺産に登録されたものも9件に及ぶ︵詳しくは﹁トルコの世界遺産﹂を参照︶。伝統的な文化はこのような基層文化にトルコ人が中央アジアからもたらした要素を加えて、東ヨーロッパから西アジアの諸国と相互に影響を受け合いながら発展してきた。また、トルコの文化はヨーロッパの芸術文化や被服文化にも影響を及ぼしており、特に16世紀から18世紀の間はオスマン帝国勢力の隆盛時にその文化が多大な影響を擁している。この現象はターケリー︵英語版︶と呼ばれている。
近現代のオスマン帝国、トルコは、ちょうど日本の文明開化と同じように、西洋文明を積極的に取り入れてきたが、それとともにトルコ文学、演劇、音楽などの近代芸術は、言文一致運動や言語の純化運動、社会運動などと結びついて独自の歴史を歩んできた。こうした近代化の一方で、歴史遺産の保全に関しては立ち遅れも見られる。無形文化財ではオスマン古典音楽の演奏者は著しく減少し、また剣術、弓術などいくつかの伝統的な技芸は既に失われた。有形の遺跡もオスマン帝国時代以来のイスラム以前の建築物に対する無関心は現在も少なからず残っており、多くの遺跡が長らく管理者すら置かれず事実上、放置されてきた。近年は、いくつかの有名な古代ギリシャやローマ帝国時代の遺跡やイスラム時代の建築が観光化されて管理が行き届くようになったが、依然として多くの遺跡は風化の危機にさらされている。このような状況に対する懸念も表明されているが、その保全対策は財政事情もありほとんど全く手つかずの状態である。
トルコの漫画は米国、イタリア、フランス語圏から大きな影響を受けてきたが、歴史を題材にした子供向けの冒険ものや、ユーモア雑誌に掲載される風刺漫画など、トルコ人漫画家による独自の作品も描かれている。
伝統的なトルコ音楽の一つ、オスマン古典音楽はアラブ音楽との関係が深く、現代のアラブ古典音楽で演奏される楽曲の多くはオスマン帝国の帝都イスタンブールに暮らした作曲家が残したものである。
オスマン帝国とトルコ共和国で行われてきた伝統的な軍楽メフテルは多くの国に脅威と衝撃を与え、音楽家は着想を得ていくつものトルコ行進曲を製作した。
トルコの演劇文化は、幾千年も前の時代から続いている。その起源については様々な見解があり、多くの学者はトルコの民俗劇場がフリギアやヒッタイト文明のような初期のアナトリア文明の民間伝承に関連していると主張している。一方で、一部の学者からはウラル・アルタイ地域で実践されていた人道的な儀式から発展したものであるという説が唱えられている。
同国において民俗劇場は田舎に点在する何千もの村の中で何世紀にも亘って存続されて来ている面を持つ。
トルコにおける映画製作活動は、第二次世界大戦後から劇的に増加して行く形で高まった。最近ではアラブ世界、そして米国でもその存在が認知されるほどに成長を見せている。
トルコの芸術文化は、同国の前身であるオスマン帝国のものを源流としている。
トルコにおける伝統衣装は、オスマン帝国時代の服飾文化に大きく影響されている面を持つ。またトルコの民俗服は、アナトリア半島地域とその周辺の様々な地域文化の類似点や歴史的な共有があり、トルコ国内の各地域の服飾はその人々の性質を反映する傾向が強いことも明らかとなっている[72]。
建築は、イランとギリシャ双方の影響を受け、独自の壮麗なモスクやメドレセなどの建築文化が花開いた。その最盛期を担ったのがミマール・スィナンであり、スレイマン・ジャミィなどに当時の文化を垣間見ることができる。
俗に﹁トルコ風呂﹂などと呼ばれている公衆浴場文化︵本国においては性風俗店の意味はなく、伝統的浴場の意である︶は、中東地域に広く見られるハンマーム︵ハマム︶の伝統に連なる。逆に、中東やアラブの後宮として理解されているハレムとは実はトルコ語の語彙であり、多くの宮女を抱えたオスマン帝国の宮廷のイメージが、オリエンタリズム的な幻想に乗って伝えられたものであった。
国内には、ユネスコの世界遺産リストに登録された文化遺産が11件、複合遺産が2件存在する。
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