ベリーズ
中央アメリカの国
国名
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正式名称は、Belize︵[bəˈliːz] ( 音声ファイル) ベリーズ︶である。国名の由来はマヤ語で﹁泥水﹂を意味する言葉から来ているとされている。
なお、スペイン語表記はBelice︵ベリーセ︶、日本語の表記はベリーズが用いられる。
旧称はイギリス領ホンジュラス︵British Honduras︶だったが、1973年に改称された[3]。
歴史
編集詳細は「ベリーズの歴史」を参照
ヨーロッパ人のアメリカ大陸到達以前は、ベリーズを含むユカタン半島一帯はマヤ文明の領域に属していた。それがスペインによるアメリカ大陸の植民地化により、ベリーズはグアテマラ総督領の一部にされた。しかし、密林地帯の彼方にあったベリーズには統治が及ばず、17世紀以降イギリス人の入植地が形成されていった。一方で、1821年にはグアテマラが、ベリーズの領有権を主張した[3]。
1862年にはカリブ海のジャマイカと共にイギリス領ホンジュラスを形成し、1884年にベリーズは単独の植民地に移行した。第二次世界大戦以降は独立に向けた動きが進んだものの、ベリーズの領有権を主張するグアテマラとの対立により難航した。1970年代後半にはグアテマラ軍と、イギリス軍が国境付近で対峙した[3]。結局、1981年にグアテマラがベリーズの独立を承認し[3]、ベリーズの独立が実現した。
政治
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ベリーズの政治体制は、国王を元首とする立憲君主制国家である。2023年6月時点のベリーズ国王はイギリス国王のチャールズ3世で、その代理人として実権の無いベリーズ総督がいる。下院の第1党党首を総督が首相に任命する議院内閣制を採用している。
立法府である国民議会は、元老院︵上院︶と代議院︵下院︶の二院制である。上院の定数は13議席で、そのうち6議席を首相が、3議席を野党党首が、残り4議席を宗教団体などが議員を指名する。下院の定数は31議席で、国民の直接選挙で選ばれ、任期は5年である。2020年現在、下院議会に議席を有する主要政党は人民統一党(PUP)と統一民主党(UDP)である[5]。
なおベリーズは、中華民国︵台湾︶を承認している。
国家安全保障
編集詳細は「ベリーズの軍事」を参照
気候
編集ベリーズの大部分は熱帯気候である。ただし、季節風の影響を受けるために雨季と乾季が存在し、例年2月か3月に最も乾燥する[3]。
地方行政区分
編集詳細は「ベリーズの行政区画」を参照
ベリーズは6つの郡(州とも表記される、英語: District)に分かれている。
- ベリーズ郡 - ベリーズシティ
- カヨ郡 - サン・イグナシオ及びサンタ・エレナ
- コロザル郡 - コロザル
- オレンジウォーク郡 - オレンジウォーク
- スタンクリーク郡 - ダングリガ
- トレド郡 - プンタ・ゴルタ
主要都市
編集詳細は「ベリーズの都市の一覧」を参照
地理
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ベリーズは中央アメリカのユカタン半島の付け根付近の東側に位置する。オンド川に沿ってメキシコとグアテマラと国境を接し、カリブ海に面している。カリブ海の沿岸部には多くの島々を領有している。また、世界第2位規模のサンゴ礁も見られる。
国土の大半は、未開発の熱帯雨林の原生林であり、沿岸部は湿地帯でマングローブの森が見られる[3]。ベリーズ国土の大半は標高の低い低地だが、南部にマヤ山脈がグアテマラの方向へと延びており、最高地点は標高1124 mのドイルズ・ディライトである。この地形を利用した水力発電が比較的盛んで、2008年時点で、ベリーズの総発電量200 MWhの8割以上を水力発電で作り出していた[6]。
交通
編集「ベリーズの鉄道」も参照
かつては鉄道路線も存在したが、1937年に全て廃止された。一方で、次第に道路網は整備されつつある。
主要な空港としては、最大都市のベリーズシティ近郊にフィリップス・S・W・ゴールドソン国際空港が設置されている。また、島嶼部では船舶も利用される。
経済
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ベリーズはカリブ共同体に加盟している。IMFの統計によると、2013年のベリーズのGDPは16億ドルである。1人当たりのGDPでは4619ドルであり、隣国との比較ではグアテマラやホンジュラスよりは高いものの、メキシコの半分以下の水準にある[2]。
農業はベリーズの主要産業の1つで、主要な農作物は、サトウキビ、コメ、モロコシ、ジャガイモ、柑橘類、バナナなどである。製糖業は盛んであり、砂糖は主要な輸出品の1つである。また、バナナの輸出も重要である。なお、豊かな森林資源も残る。
漁業も盛んであり、スパイニーロブスターは年間537 tの水揚げがある。なお、乱獲によって個体数の激減しているマグロを巡って、まぐろ類保存国際委員会に加盟していないベリーズ漁船の操業が問題化した[注釈1]。
また、島嶼部を利用した観光業も営まれている。
これらとは別に、1980年代から麻薬ギャング組織による、マリファナや、コロンビア産のコカインのアメリカ合衆国への密輸も目立つ。
国民
編集詳細は「ベリーズの国民」を参照
民族
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住民はメスティーソが48.7%と最多である。次いで、17世紀から18世紀にアフリカから奴隷として連れて来られたアフリカ系黒人がルーツのベリーズ・クレオールが24.9%を占める。以下、マヤ族が10.6%、カリブの島々から来た黒人とカリブ族の混血のガリフナが6.1%、その他では華人や白人などが9.7%である。
言語
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ベリーズの公用語は英語である[3]。国民のほとんどが英語、もしくは、英語の方言のクレオール言語であるベリーズ・クレオール語を話す。スペイン語も国民の半数近くが日常的に使っており、特に北部に多い。さらにはマヤ語族のケクチ語やモパン語などの先住民の言語も使われている。多人種・民族であるため、国民の多くがマルチリンガルである[7][8][9]。
言語 | 話者 | 比率 |
---|---|---|
英語 | 183,903 | 62.90% |
スペイン語 | 165,296 | 56.60% |
ベリーズ・クレオール語(英語系) | 130,467 | 44.60% |
ケクチ語(マヤ語族) | 17,581 | 6.00% |
モパン語(マヤ語族) | 10,649 | 3.60% |
ドイツ語 | 9,364 | 3.20% |
ガリフナ語・アラワク語族 | 8,442 | 2.90% |
その他 | 7,847 | 2.70% |
無回答 | 1,537 | 0.50% |
合計 | 292,263 | 100% |
宗教
編集「ベリーズのイスラム教」も参照
文化
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周辺の中央アメリカ諸国はスペインの植民地だったのでラテン文化の影響が強いのに対し、ベリーズはイギリスの植民地だったためイギリスの影響の方が強く、英語が公用語として利用される程である。また、アフリカ系の黒人系が多いため、同じ英語圏のジャマイカなどカリブ海諸国との結び付きや影響も強い。
スポーツ
編集詳細は「ベリーズのスポーツ」を参照
ベリーズ国内ではサッカーが最も人気のスポーツとなっており、2011年にサッカーリーグのベリーズ・プレミアリーグが創設された。ベリーズサッカー連盟によって構成されるサッカーベリーズ代表は、これまでFIFAワールドカップへの出場歴はない。CONCACAFゴールドカップには2013年大会で初出場を果たしたが、グループリーグで3連敗し最下位で敗退した。
「ベリーズのサッカー」も参照
世界遺産
編集詳細は「ベリーズの世界遺産」を参照
ベリーズ国内には、ユネスコの世界遺産リストに登録された自然遺産が1件存在する。それは1996年に登録された「ベリーズ珊瑚礁保護区」である。
食文化
編集詳細は「ベリーズ料理」を参照
音楽
編集詳細は「ベリーズの音楽」を参照
祝祭日
編集日付 | 日本語表記 | 現地語表記 | 備考 |
---|---|---|---|
1月1日 | 元日 | New Year's Day | |
3月9日 | ブリス男爵記念日 | Baron Bliss Day | |
5月1日 | メーデー | Labour Day | |
5月24日 | 英連邦記念日 | Sovereign's Day | |
9月10日 | 英・スペイン戦記念日 | St. George's Caye Day | National Day |
9月21日 | 独立記念日 | Independence Day | |
10月12日 | コロンブスの日 | Day of the Americas | |
11月19日 | ガリフナ入植記念日 | Garifuna Settlemant Day | |
12月25日 | クリスマス | Christmas Day | |
12月26日 | ボクシング・デー | Boxing Day | |
12月29日 | 年末休日 | Year End Holi day |
日本との関係
編集- 駐日ベリーズ大使館
- 住所:東京都新宿区西新宿4丁目9-7
- アクセス:都営地下鉄大江戸線西新宿五丁目駅A2出口
- 在ベリーズ日本国大使館
-
ベリーズ大使館全景
-
ベリーズ大使館は公園横にある
-
ベリーズ大使館正面玄関
脚注
編集注釈
編集出典
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(一)^ ab“UNdata”. 国連. 2021年11月11日閲覧。
(二)^ abcde“World Economic Outlook Database, October 2014” (英語). IMF (2014年10月). 2015年1月2日閲覧。
(三)^ abcdefghi二宮書店編集部 ﹃Data Book of The WORLD ︵2012年版︶﹄ p.432 二宮書店 2012年1月10日発行 ISBN 978-4-8176-0358-6
(四)^ “Extension of the time-limits for the filing of the initial pleadings” (pdf). International Court of Justice (2020年4月24日). 2020年10月10日閲覧。
(五)^ “Belize hands opposition resounding electoral victory”. KVVU-TV. (2020年11月12日) 2020年11月13日閲覧。
(六)^ ab二宮書店編集部 ﹃Data Book of The WORLD ︵2012年版︶﹄ p.433 二宮書店 2012年1月10日発行 ISBN 978-4-8176-0358-6
(七)^ ベリーズ国政府観光局 ﹁旅行に役立つ基本情報・言葉﹂
(八)^ 日本国・外務省 ﹁ベリーズ・基礎データ﹂
(九)^ kotobank - 小学館・日本大百科全書(ニッポニカ) ﹁ベリーズ﹂
(十)^ 国際連合人口基金︵UNFPA︶ BELIZE Population and Housing Census
(11)^ “Belize Population and Housing Census 2010” (pdf) (英語). The Statistical Institute of Belize (2010年). 2016年1月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年1月2日閲覧。
関連項目
編集外部リンク
編集- 政府
- 日本政府
- 観光
- その他
- ベリーズに関連する地理データ - オープンストリートマップ
- 『ベリーズ』 - コトバンク