前蹴り
概要
編集使用部位
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技の出し方
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空手の基本動作では、真っ直ぐ突き出すように蹴るもの︵狭義の前蹴り・蹴放し︶と下から上に蹴り上げるもの︵蹴上げ︶の区別がある[6][7]。普通に前蹴りという場合はこの前者をさす場合が多い。
●前蹴り︵狭義︶
構えから、蹴る側の足を一旦、自分の胸前に抱え込むように高く引き上げ、加撃対象︵おもに胴体もしくは下半身︶に向けて垂直もしくは幾分か蹴り下ろすような感覚で膝を伸ばして中足または足裏を突き出すように蹴る[8]。結果的に蹴りの軌跡は直線を描くことになる。蹴放し︵けはなし︶の場合は中足部分を当てた直後に瞬時に足裏全体で相手を蹴り放す。これらは主に腹部・脇腹などの中段攻撃に使われる[9]。
●蹴上げ
構えから、蹴る側の足の膝頭を前に引き上げ、曲げた膝のバネを活かして中足または背足を上方に向けて蹴り上げる。また膝をほとんど曲げずに蹴り足の元の位置からそのまま大きく蹴り上げる仕方もあり、こちらを前蹴上げと称する流儀もある。後者の﹁前蹴上げ﹂は、実際の攻撃技術というより蹴り技の練習方法あるいは準備体操・補強運動として行われる場合も少なくない。蹴る対象は、中足の場合は相手の顎や前傾した胸部・腹部、スネや膝関節などへの下段攻撃、あるいは構えた手や突いてくる手の手首や肘の後ろ、あるいは相手の手に持っている武器などを狙う。背足は股間の急所に用い、その場合は金的蹴りとも呼ばれる[9]。
●飛び蹴り
大きく踏み切り、前方に跳躍して空中で前蹴り︵狭義︶をするもので、踏み切った足で蹴る場合と、その逆側の足で蹴る場合がある。前者の場合は飛び二段蹴りとも呼ばれ、踏み切った足で蹴る前に逆側の︵最初に上げた︶足でフェイントの飛び前蹴りもしくは飛び膝蹴りを放ち、その直後に踏み切った足で前蹴りを決める。後者は、踏み切った足とは逆の最初に振り上げた足を突き出し、そのまま突進の勢いに任せて蹴る、いわゆる飛び前蹴りである。これらは大技で威力があるが、技を見切られたり失敗すると反撃を受けやすくリスクが高い[10][11]。
技の使用の実際
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種目や流儀の違いで、使用頻度や技術に差がある。日本拳法や空手、打撃技を持つ柔術では主要な蹴り技として多用されるが、キックボクシングやK-1などの回し蹴りを多用する種目や競技では頻度は落ちる。ムエタイでは回し蹴りも前蹴りもともに多用する[12]。
中足での前蹴りはを正確に当てれば絶大な破壊力を発揮するが[13]、使用部位の面積が狭いため的確なヒットポイントを捉えることが容易ではなく、また技の軌跡が直線的であるため事前に察知された場合には相手に捌かれやすい。そのため決め技としては、一定程度以上の競技レベルの組手・試合などでは思うように効果が表れないことが多い。また、前蹴りは中段以下の高さの目標に使用されることが多く、人体の中段部位以下の急所[14]に的中すれば相手を倒せるが、急所をはずせば鍛錬された肉体であれば持ちこたえてしまう[15]。一方、回し蹴りでは上段攻撃にも多用され、技の軌跡が面的な広がりを持ち、ある程度の身体の柔軟性があれば頭部・頸部を狙うことも難しくない。クリーンヒットすれば脳震盪により高い割合で相手を倒すことも可能であるが、動作は非常に大きく技の出がかり・出し終わりにスキを生じやすい。また、ルールによって攻防が縛られた競技格闘技ならともかく、股関節を大きく開き動作に時間のかかる回し蹴りは金的攻撃やタックルなどに対して脆弱なことも重大な欠点である。したがって、その威力については性質・用途が異なり、前蹴りと回し蹴りの優劣は単純に比較できない[16][17]。
参考文献
編集- 『月刊空手道』(第15巻7号(通巻188号)、1992年)
- 大家礼吉『空手の習い方』(金圓社、1959年)
- 真野高一 『DOSPORTS!空手』(日本文芸社、1978年)
- 松田隆智 『中国拳法入門』(新星出版、1976年)
- 大山倍達 『100万人の空手』(講談社、 1969年)
- 『月刊空手道』(第9巻9号(通巻107号)、 1986年)
- 『ザ・テクニック〈月刊空手道・別冊)』(通巻第199号、1993年2月20日)
脚注
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(一)^ なお、ムエタイではティープ、テコンドーではアプチャプシギ︵またはアプチャギ︶という。
(二)^ 中足︵上足底、虎趾︶→参考文献の1、22頁、﹁前蹴り・回し蹴り"最強はどちらだ!?"﹂︿特集﹀
(三)^ 参考文献の4、﹁蹴り技﹂︵39頁︶・﹁8十字右弾腿の用法﹂︵96頁︶、
(四)^ 参考文献の1、55頁、秋山智洋﹁武道見参・キックボクシングの巻﹂
(五)^ 参考文献の7、126頁、藤原敏雄﹁藤原敏雄の技術﹂
(六)^ 参考文献の2、84頁、﹁前蹴り﹂
(七)^ 蹴上げには振り子のように足刀を蹴り上げる横蹴上げもあるが、これとは異なる。→参考文献の3、55頁、﹁蹴上げ﹂
(八)^ 参考文献の2、52頁、﹁前蹴り﹂
(九)^ ab参考文献の2、84頁、﹁1前蹴り﹂
(十)^ 参考文献の2、89頁、﹁5飛蹴り﹂
(11)^ 参考文献の3、43頁、﹁飛び蹴り﹂
(12)^ プロレスなどで使われるビッグブーツ︵十六文キック︶やケンカキック︵ヤクザキック︶も前蹴りの一種である。
(13)^ 例として蹴りの名手と言われるk-1ファイターの小比類巻太信がK-1 WORLD MAX 2005 〜日本代表決定トーナメント〜の決勝戦で新田明臣に開始36秒で右前蹴りを新田の顎へヒットさせ新田はダウンしたまま起き上がることができなかった。
(14)^ たとえば水月・丹田・金的など武道・武術でいう急所のこと。
(15)^ 一例として、﹃甲子夜話﹄に加藤右計という柔術の達人は組み付くと同時に相手の蹴りで肋骨1本をへし折られたが、そのまま壁に向かって投げ殺し、周囲に折れたあばらを見せ、淡々と説明したという話が記述されている。
(16)^ 参考文献の1、20-22頁、﹁前蹴り・回し蹴り"最強はどちらだ!?"﹂︿特集﹀
(17)^ UFC 129・UFC 224においてリョート・マチダが上段前蹴りでKO勝利を収めるなど、伝統派空手やそれをルーツに持つ北米の空手流派の出身者などはキックボクシングや総合格闘技でも前蹴りを上段へも有効に用いる例もある。