旭日章
日本の勲章
(勲三等旭日中綬章から転送)
旭日章(きょくじつしょう、Order of the Rising Sun)は、日本の勲章の一つ。
旭日章 | |
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![]() ![]() 勲一等旭日大綬章(現・旭日大綬章)正章と大綬および副章 | |
日本の勲章 | |
綬 | 白と紅 |
創設者 | 明治天皇 |
対象 | 国家又ハ公共ニ対シ勲績アル者 |
状態 | 存続 |
最高級 | 旭日大綬章 |
最下級 | 旭日単光章 |
歴史・統計 | |
創設 | 1875年(明治8年)4月10日 |
期間 | 1875年 - 現在 |
最初の授与 | 1875年12月31日 |
序列 | |
上位 | 桐花章 |
同位 | 瑞宝章・宝冠章 |
旭日章の綬 |
概要
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旭日章は、1875年︵明治8年︶4月10日に、日本で最初の勲章として勲一等から勲八等までの8等級が制定された。翌1876年︵明治9年︶には旭日章の上位に大勲位菊花大綬章が新設され、1888年︵明治21年︶にはさらにその上位に大勲位菊花章頸飾が置かれた。また、同じ1888年︵明治21年︶には、勲一等旭日大綬章の上位に勲一等旭日桐花大綬章が追加制定され、旭日章は9等級で運用された。2003年︵平成15年︶の栄典制度改正では、桐花大綬章を旭日章の上の桐花章とし、勲等の表示をやめさらに勲七等と勲八等を廃止するなど大幅に整理され、旭日章は6等級で運用されることとなった。また、制定以来、旭日章の授与対象は男性に限る運用が行われていたが、この栄典制度改正の際に男女等しく授与される勲章となった。
旭日章は、﹁国家又ハ公共ニ対シ勲績アル者﹂に授与すると定められ︵勲章制定ノ件2条1項︶、具体的には﹁社会の様々な分野における功績の内容に着目し、顕著な功績を挙げた者を表彰する場合に授与する﹂とし、内閣総理大臣などの職にあって顕著な功績を挙げた者を表彰する場合に授与される︵﹁勲章の授与基準﹂[1]︶。詳しくは#授与基準を参照。
2003年︵平成15年︶に行われた栄典制度改正[2]により、﹁勲○等に叙し旭日○○章を授ける﹂といった勲等と勲章を区別する勲記及び叙勲制度から、﹁旭日○○章を授ける﹂という文章に改正された。なお、改正時の政令附則により、改正前に授与された者は改正後も引き続き勲等・勲章とを分けた状態で有しているものと扱われる。
旧制度では、勲一等旭日大綬章の上に勲一等旭日桐花大綬章を持ち、﹁同種類の勲章の同一の勲等の中でさらに上下がある﹂という特殊な運用形態がとられていた。この勲一等旭日桐花大綬章は、旭日章8等級の制定の13年後に旭日章の最上位として追加制定されたものである。当時の宮中席次によれば、金鵄勲章の功級は同じ数字を持つ勲等より上位に位置づけられており、これに従い功一級金鵄勲章は勲一等旭日大綬章よりも上位にあったが、勲一等旭日桐花大綬章だけは例外的に功一級金鵄勲章より上位に位置づけられていた︵勲一等旭日大綬章は﹁第1階第18﹂、功一級金鵄勲章は﹁第1階第14﹂、勲一等旭日桐花大綬章は﹁第1階第13﹂︶。
意匠
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章の意匠は、八方向へ伸びる旭光を持つ日章︵旧制式下ではこの意匠は勲六等まで、勲七等・勲八等は後述の桐のみ︶。古来からの日本の紋章に用いられてきた旭日の紋をモチーフにしている。地金は銀で、旭日双光章︵勲五等双光旭日章︶までは全体もしくは一部に金鍍金が施される。
鈕︵﹁ちゅう﹂、章と綬の間にある金具︶は、日本国政府の紋章であり、皇室の副紋でもある桐の花葉をかたどり、旭日小綬章︵勲四等旭日小綬章︶以上は五七花弁を持つ桐紋︵﹁五七の桐﹂︶、旭日双光章︵勲五等双光旭日章︶以下は五三花弁を持つ桐紋︵﹁五三の桐﹂︶の意匠を持つ。廃止された旧制式下の勲七等青色桐葉章・勲八等白色桐葉章は旭日章の範疇にあるが、意匠には旭日を用いずこの桐紋のみであり、名称も﹁桐葉章﹂︵とうようしょう︶となる。
外輪の旭光部は白及び黄の七宝が施され盤面とフラットになるよう丁寧な研磨がなされている。大綬章・中綬章・単光章が白一色、双光章が白と黄の二色︵5本単位で切り替わる︶。中央に配される淡い球状に盛り上がった日章は宝石と思われていることが多いが、これは極初期の物のみ七宝、現行は二酸化セレンを用いた赤色のガラスである。
綬は織地白色、双線紅色と定められており、白の織り地を赤の帯が両脇を縁取る綬が用いられる。大綬章は大綬を右肩から左脇に垂れ、中綬章は中綬をもって喉元に、小綬章以下は小綬をもって左胸に佩用する。重光章︵勲二等旭日重光章︶の正章のみ右胸への佩用。
全ての旭日章は裏面に﹁勲功旌章﹂︵くんこうせいしょう。“勲功を褒める章”︶の刻印が施される。
ごく初期の物は鈕が一体成形されており、現在の物のようにピンで結合される形ではなかった。勲二等旭日重光章は当初、正章のみであったが、1898年︵明治31年︶に副章が付けられた。また、勲四等旭日小綬章については、勲五等以下との区別がしづらいとの意見から1886年︵明治19年︶より綬にロゼットを付けることとなり、それ以前に叙勲された者についてはロゼッタ付きの小綬を別途製造し追贈した。
勲章を収める箱は、制定最初期の物は、現在のような塗り箱ではなく革製のケースで授与されていた。現在早稲田大学図書館に所蔵されている物[3]や旧薩摩藩島津家にて保存されている物がそれに該当するが、両者とも経年変化により大綬の﹁赤﹂の部分が﹁臙脂色﹂に変色しているのが確認されている。しかし明治初期の絵画で描かれる旭日大綬章の佩用者の大綬はどれも現在と変わらぬ﹁赤﹂で表現されているため、これらは染料の変更による経年変化と考えられる。
栄典制度改正による意匠の変更
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旭日章は栄典制度改正により、各種勲章及び大勲位菊花章頸飾の制式及び形状を定める内閣府令︵平成15年5月1日内閣府令第54号︶が施行されるに伴い、一部の意匠が変更された。旧制式下では全ての等級の勲章に於いて裏面も表面と同様の七宝による装飾が施されていたが[注釈1][注釈2]、栄典制度改正以降の小綬章以下の勲章は、裏面の七宝装飾を持たず、梨地の仕上げのみとなっている[注釈3]。同時に﹁勲功旌章﹂の刻印も、小綬章以下は鈕の裏面から本章の裏面中央へと変更された。重光章の副章及び中綬章の正章に関しては旭日部分は表面同様の七宝が施されるものの、鈕の裏面が七宝無しとなり、梨地の金属面に直接﹁勲功旌章﹂と刻印されている。また単光章は旧制式の勲六等単光旭日章よりも直径が小さくなった。
綬についても、両脇の紅線が太くなるなどの変更が見られる。大綬章が女性に授与される場合のみ、綬の幅が宝冠章と同等の物に替えられるが、ロゼットの形状は以前の男性用の物と変わらない。その他の等級に関しても、現在は男女ともに共通の綬をもって授与される。
名称と等級
編集現行の旭日章の名称を、旧制度下の名称を添えて以下に示した。
現行の名称(下行は英訳名)[4]・画像 | 旧制度下の名称 | 改正の要点 |
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旭日章から独立させ、別種の上位勲章である桐花大綬章を創設 | ||
Grand Cordon of the Order of the Rising Sun |
名称から「勲一等」を除く | |
The Order of the Rising Sun, Gold and Silver Star |
名称から「勲二等」を除く | |
The Order of the Rising Sun, Gold Rays with Neck Ribbon |
名称から「勲三等」を除く | |
The Order of the Rising Sun, Gold Rays with Rosette |
名称から「勲四等」を除く | |
The Order of the Rising Sun, Gold and Silver Rays |
名称から「勲五等」を除き、「双光」と「旭日」の位置を入れ替える | |
The Order of the Rising Sun, Silver Rays |
名称から「勲六等」を除き、「単光」と「旭日」の位置を入れ替える | |
廃止 | ||
授与基準
編集![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/42/Order_of_the_Rising_Sun_grand_cordon_badge_%28Japan%29_-_Tallinn_Museum_of_Orders.jpg/200px-Order_of_the_Rising_Sun_grand_cordon_badge_%28Japan%29_-_Tallinn_Museum_of_Orders.jpg)
運用
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旧制度下に於いては勲等の序列は旧来の宮中席次に則り、上位から旭日章、宝冠章、瑞宝章の順に、同じ勲等の中では最も上位に位置づけられていた[注釈6]。そのため、旧制度下での旭日章の授与対象は﹁瑞宝章を授与するに値する以上の功労のある者﹂と定められていた。
2003年︵平成15年︶、栄典制度の抜本的改革にあたり、男性のみに与えられるなどの条件が社会情勢に合わなくなってきたこともあって、女性も授与の対象に含まれることとなった。同時に、それまで最上位とされた旭日桐花大綬章は桐花章︵桐花大綬章︶として独立し、八等と七等は廃止されて6階級での運用になった。またそれまで下位の勲章であった瑞宝章が旭日章と同等の勲章へと格付けが変更されるにあたり、叙勲の選考基準もそれまでの﹁功績の大小﹂から﹁功績の内容﹂で判断されることとなった。
上記の経緯により、現在では“国家または公共に対し功労がある者の内、功績の内容に着目し、顕著な功績を挙げた者”が旭日章の叙勲対象となっている。
外国人に対する儀礼的叙勲での運用
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国賓の来日や皇族の外遊などの際に同席する認証官クラスの要人に贈られる。役職により授与される勲等が判断され、政府首相や軍部司令官などの役職には大綬章︵勲一等︶が授与される。外交官などにも贈られるが、国家の規模や日本国への貢献度により授与される勲等には幅がある。その他随行の関係者等にも、その役職に応じた等級の勲章が授与される。
珍しい例としては、上皇明仁が皇太子時代に皇太子妃を伴ってマレーシアを公式訪問した際、接遇にあたった﹁前国王の令息﹂に対して儀礼叙勲として勲一等旭日大綬章を授与している。通常、王族男性であれば大勲位菊花大綬章が与えられるところであるが、マレーシアの国王は複数のスルタン家の中から任期を指定して輪番制で選ばれるシステムを採用しているため﹁正式な王家・王族﹂の定義が時期によって変わるので身位の定義が難しく、日本政府が苦慮した末の判断であった。
皇族に対する叙勲
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皇族叙勲については、勲章制定にあたり明治天皇が勲一等旭日大綬章自ら佩用し、その他では有栖川宮幟仁親王を始めとする皇族10名に勲一等旭日大綬章を天皇から親授された。
その後、皇族身位令︵明治43年皇室令第2号︶の制定により、男性皇族への初叙が勲一等旭日桐花大綬章へと引き上げられたため、以降勲一等旭日大綬章の皇族への叙勲はない。また皇室令自体も、昭和22年5月2日皇室令第12号により全部廃止されている。
●第九条 皇太子皇太孫ハ満七年ニ達シタル後大勲位ニ叙シ菊花大綬章ヲ賜フ
●第十一条 親王ハ満十五年ニ達シタル後大勲位ニ叙シ菊花大綬章ヲ賜フ
●第十四条 王ハ満十五年ニ達シタル後勲一等ニ叙シ旭日桐花大綬章ヲ賜フ
脚注
編集注釈
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(一)^ 勲二等旭日重光章の正章及び大綬章の副章を除く。
(二)^ また勲七等青色桐葉章も第二次世界大戦末期の物には一時的に裏面の七宝を省略した物が存在する
(三)^ 栄典制度改正後に伴い、新規制作分から順次切り替えのため、裏面七宝のある章も新制度の物として授与されていた。
(四)^ ab写真の蝶型略綬は大正10年4月25日勅令第146号による改定前のもの。
(五)^ ﹁第二︵授与基準︶第1項第3号に掲げる職﹂とは、内閣総理大臣、衆参両院議長、最高裁判所長官、国務大臣、内閣官房副長官、副大臣、衆参両院副議長、最高裁判所判事、大臣政務官、衆参両院常任委員長、衆参両院特別委員長、国会議員、都道府県知事、政令指定都市の市長、指定都市以外の市の市長、特別区の区長、町村長、都道府県議会議員、市議会議員、特別区の議会議員、町村議会議員である。
(六)^ 旭日章より上位に金鵄勲章があったが、﹁勲等﹂ではなく﹁功級﹂であるため本項では除外。
出典
編集補注
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●勲記︵叙勲内容を記載した賞状︶とともに授与されその内容は官報の叙勲の項に掲載されるが、外国元首等へ儀礼的に贈る場合は必ずしも官報への掲載は行われない。
●皇族は受章当時の名・身位を官報掲載どおりに記載︵括弧内に現在の宮号等を参考付記︶。
●通例、皇太子である親王を官報掲載する場合は必ず﹁皇太子○○親王﹂と記載されるが、叙勲︵勲記︶には﹁皇太子﹂が冠されない。
●官報で皇族を掲載する場合は、皇太子と皇太子妃を除き、宮号︵秋篠宮など︶・称号︵浩宮など︶は一切冠されない。叙勲でも同様。
参考文献
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●毎日シリーズ出版編集株式会社 編﹃勲章﹄総理府賞勲局監修、毎日新聞社、1976年 (昭和51年)。
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●平山晋﹃明治勲章大図鑑﹄国書刊行会、2015年︵平成27年︶7月15日。
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●大久保利謙 (監修)﹃旧皇族・閑院家 ; 旧皇族・東久迩家 ; 旧皇族・梨本家﹄毎日新聞社︿日本の肖像 : 旧皇族・華族秘蔵アルバム第12巻﹀、1991年2月。 ISBN 4-620-60322-8
●﹃特集 天皇家と宮家﹄新人物往来社︿歴史読本 第51巻第14号﹀、2006年。 平成18年11月号 JAN 4910096171163
外部リンク
編集- 日本の勲章・褒章/勲章の種類及び授与対象/勲章の種類(旭日章) - 内閣府
- 国立公文書館デジタルアーカイブ
- 外国人叙勲受章者名簿 - 外務省
- ウィキメディア・コモンズには、旭日章に関するカテゴリがあります。