破傷風

破傷風菌を病原体とする人獣共通感染症

破傷風(はしょうふう、tetanus)は、破傷風菌を病原体とする人獣共通感染症の一つ。病原菌が産生する神経毒による急性中毒である[1]

破傷風
破傷風菌の光学顕微鏡写真
概要
分類および外部参照情報
ICD-10 A33-A35
ICD-9-CM 037, 771.3
DiseasesDB 2829
MedlinePlus 000615
eMedicine emerg/574
MeSH D013742

[ウィキデータで編集]

概要

編集

[2]

疫学

編集

[3]57100[4]

100

鹿290[5]

原因病原体

編集

 (Clostridium Tetani) 1999-200023.6%[6]

[7]

症状

編集

[3]γ-188918902223
 
()1809


破傷風の病期と症状
病期 状態の解説・症状 一般的な期間
第一期(潜伏期) 身体、受傷部の違和感、頸部や顎の疲労感、寝汗、歯ぎしり 1〜7日間
第二期(痙攣発作前期) 「破傷風顔貌」と呼ばれる状態で次第に開口障害が強くなる。語・嚥下障害、咬筋・頸部筋などの圧痛、四肢硬直 数時間〜1週間
第三期(全身痙攣持続期) 生命に最も危険な時期。バビンスキー反射後弓反張英語版クローヌス亢進、呼吸困難 2〜3週間
第四期(回復期) 各種の症状が緩和し全身性の痙攣はみられないが、筋の強直、腱反射亢進は残る。 2〜3週間

※破傷風病期と症状の表は「外傷歴のない破傷風の1例」[8]と国立感染症研究所資料[6]より引用し改変。

予後

編集

破傷風の死亡率は50%である。成人でも15〜60%、新生児に至っては80〜90%と高率である。新生児破傷風は生存しても難聴をきたすことがある。

治療体制が整っていない地域や戦場では、さらに高い致死率を示す。

治療

編集









[][8][9][1]










治療の歴史

編集

[10][11]

18841884 Antonio Carle(Giorgio Luigi Rattone)[12]

1891[13]1897(Edmond Nocard)1924Pierre Descombey[12]

予防

編集
 
ジフテリア・破傷風混合ワクチン (DTワクチン)

100.01 IU/mL10[14][15]



1968[16][17]

予防接種

編集

 (DPT-IPV) (DPT) (DT) D:P:T:IPV:5
各ワクチンの破傷風抗原量
ワクチン量 (mL) 抗原量 (Lf) 国際単位 参考ジフテリア抗原量 (Lf)
トキソイド(化血研 0.5 10以下 0
トキソイド(生研北里第一三共タケダビケン 0.5 5以下 20以上 0
DPT-IPV 0.5 2.5以下 13.5以上(力価) 15以下
DPT 0.5 2.5以下 or 約2.5 9以上 15以下 or 約15
DT(化血研) 0.1 2以下 約5
DT(生研、北里第一三共、タケダ、ビケン) 0.1 1以下 or 約1 4以上 5以下 or 約5

1968DP使19751981DPT

渡航ワクチン

編集

破傷風ワクチンは、世界中どの地域でも1ヶ月以上の滞在には接種推奨のワクチンである[18]検疫所に届けられた予防接種実施機関[19]やトラベルクリニックで、海外渡航者向けの有償予防接種を行っている。

予防接種は標準で3回の接種(筋肉注射)を要する。すなわち、1回目の接種から1ヶ月後に2回目、1年後に3回目の接種を行う。これは、(有効)免疫と免疫記憶という抗毒素の作用機構に基づくものである。ここで3回目の接種を行うと、基礎免疫が備わり4年から10年ほど免疫が得られる。

推奨される投与スケジュール

  • 40歳以上:トキソイド 0.5 mLを初回、3〜8週後、6ヶ月以上後の計3回接種。2回目以降は強い局所反応が出ることがある。あまりに副作用が強い場合は以前、接種したことがなかったかどうかもう一度確認する必要がある。2回目に強い局所反応があったら3回目は中止。
  • 30歳代:DT 0.2 mL
  • 20歳代:DT 0.1 mL または DPT 0.2 mL

外傷後ワクチン

編集

動物咬傷、古いを踏んで足に刺さった等の外傷後に対して、予防接種される。

トキソイド 0.5 mLを受傷直後1回、1ヶ月後に1回の計2回接種が推奨され、小中学生の高度汚染創には、トキソイド 0.5 mL を受傷直後1回のみ接種するが、接種局所の強い腫脹・疼痛の出現が予想されるため、注意が必要である。外傷後感染予防に診療報酬が適応されるのは、単価破傷風ワクチンのみで、トキソイド以外を接種することは出来ない[20]

動物の破傷風

編集

19512610駿17使

関連法規

編集

破傷風と文学作品

編集

日本映画震える舌』(1980年)で、破傷風の凄惨な闘病が描かれている。森鷗外の短編小説『カズイスチカ』(初出「三田文学」1911年)にも破傷風の患者が登場し、その激しい症状が描写されている。

出典

編集

脚注

編集


(一)^ ab MSD 

(二)^ . www.niid.go.jp. 2024416

(三)^ ab  1979344 p.631-665, doi:10.3412/jsb.34.631

(四)^ 199920081120 - 

(五)^ 1225 - 

(六)^ ab

(七)^ 200215 -  

(八)^ ab 1  2005 513 p.128-131, doi:10.5794/jjoms.51.128

(九)^  2  20095510 p.495-499, doi:10.5794/jjoms.55.495

(十)^ Pearce JM (1996). Notes on tetanus (lockjaw). Journal of Neurology, Neurosurgery, and Psychiatry 60(3): 332. doi:10.1136/jnnp.60.3.332. PMC 1073859. PMID 8609513. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1073859/. 

(11)^ 201886

(12)^ ab"Tetanus" (PDF). CDC Pink Book. 

(13)^ 31   

(14)^  (20093). . IASR 2009; Vol.30: 71-2. . 2019815

(15)^ 2  2014 1171 p.41-45, doi:10.3950/jibiinkoka.117.41

(16)^ 50201883201886

(17)^ http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/f_fd/1995/fy19950529_00092_006.pdf

(18)^ FORTH - 

(19)^ FORTH - 

(20)^  - 

関連項目

編集

外部リンク

編集