結氷
概要
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結氷は、気温が摂氏0度を下回ったときに発生し、より気温が低いほど起こりやすい。ふつう、平地で冬に発生する現象であるが、高地や山岳地帯ではより早く発生し遅く終わる。
結氷し、氷塊が多数流れるエルベ川
結氷した湖でのワカサギ釣り
結氷した氷のことを、海では海氷、湖では湖氷︵こひょう︶、河川では川氷・河氷︵かわごおり︶、滝では瀑氷︵ばくひょう︶と呼ぶ。また、結氷した滝を氷瀑︵ひょうばく︶と呼ぶ。
気象庁は毎冬、初めて観測される結氷を初氷︵はつごおり︶、その日を結氷初日︵けっぴょうはつび︶としており、日本各地の気象官署で観測されている。また、毎冬最後に観測される結氷を終氷︵しゅうひょう︶、その日を結氷終日︵けっぴょうしゅうじつ︶としているが、こちらはデータの性質上その日からしばらく時間が経ってからしか確定しないので、ほとんど知られていない。
結氷の条件
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●流れのない湖や池などでは、水面の温度が0℃以下になることが必須条件である。ただ、水面が穏やかな場合や、水に含まれる不純物が少ない場合などは、0℃以下でも凍らずに過冷却となることもある。-10℃前後になれば例外なく凍結する。
●結氷を左右する温度は水面の温度であり、通常は気温よりも低くなるため、気温が氷点下になるよりも早く初氷が訪れる。水面温度が気温よりも低くなるのは、放射冷却で低い所ほど温度が下がるためである。
●湖沼の場合、水深が深いと温かい水が遅くまで残存し水面を暖めるため、凍結しにくい。支笏湖は水深が深いことなどから日本最北の﹁不凍湖﹂となっている。
●また、結氷には風も関わってくる。水面にさざなみが立つ程度の適度な風があれば、蒸発による潜熱放出が風によって促進されて水面が冷却され、結氷しやすくなる。しかし、風があまりに強いと水面が波立って逆に結氷しにくくなる。また、無風状態の場合は放射冷却が促進されて温度が下がりやすい。
●雪が降っていると、雪が水面を冷やして結氷しやすくなる。
●滝の結氷の場合、水面の温度はより低くなければ凍結しない。温度は-10℃~30℃くらいで、滝の水量にも左右される。
●河川の場合、水量が少なく水深が浅いほど、流速が遅いほど高い温度で凍結する。
●海や塩湖の場合、塩分濃度が高いとより低い温度でしか凍結しない。河川から流入する淡水の量や分布に左右される。
●氷柱︵つらら︶のできる条件は結氷とほとんど同じであり、結氷が起きているときは氷柱ができることが多い。
地球温暖化による影響
編集結氷と観光・文化
編集結氷の名所
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●諏訪湖 - 条件のよい年には厚い氷が全体を覆い、膨張した湖氷が圧縮されて盛り上がる﹁御神渡り﹂が有名である。
●屈斜路湖 - 全面凍結する湖としては日本で最も面積が広いとされる。
●然別湖 - 凍結した湖面上に氷上露天風呂などを設け観光客を集める。
●華厳滝 - 全面凍結する。
●袋田の滝 - 冬は凍結し、時々全面凍結する。
●有馬四十八滝 -凍結する滝が多数ある。
●バイカル湖 - 1-5月までの約4か月間程度凍結し、氷の厚さは70-115センチメートルほどになる。水深が非常に深いため、気温に対して結氷が遅れる。
●ヴォルガ川 - ヨーロッパ最長の川。ほぼ全域が最大3ヶ月程度凍結する。上流ではより長く、11月下旬から4月中旬ごろまで凍結している。
●レナ川 - 流域において冬の気温が非常に低くいので、凍結期間が長く10月上旬から5月頃まで全域が凍結する。
●エニセイ川 - 半年ほど凍結する。
●オビ川 - 上流では11-4月頃まで、下流︵北極圏に近い︶では10月下旬から6月上旬ごろまで凍結する。
●マッケンジー川 - 北極圏にある下流では10-5月頃まで凍結する。
●ナイアガラの滝 - 冬に一部が凍結するが、全面凍結は稀。1911年にアメリカ滝が全面凍結している。
ロシア、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、カナダ、アラスカ州などには、1年に6か月以上凍結している湖や河川も少なくない。
モスクワ、クレムリンを背景に氷が流れる川
ドイツ、円形の氷が浮かぶ川
薄く半透明の氷が結氷した池
一面雪に覆われた氷湖
結氷した滝
ヨセミテ国立公園、晶氷が流れる冬の川
初氷と終氷
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編集過去の初氷
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北海道
北海道内の観測官署で最も早い初氷は帯広で1893年9月17日︵1893年統計開始︶、最も遅い初氷は室蘭で1997年12月1日︵1924年統計開始︶[1]。
札幌で最も早い初氷は1904年9月25日、最も遅い初氷は2010年11月15日︵1880年統計開始︶。
東北地方
仙台で最も早い初氷は1970年10月20日、最も遅い初氷は1989年12月7日︵1927年統計開始︶[2]。
関東地方
東京で最も早い初氷は1921年11月5日︵1919年11月統計開始︶、最も遅い初氷は2016年1月13日[3]。
2016年1月13日 - 最も遅い初氷。この冬の終氷は1月27日で最も早い終氷でもあった。
東海地方
名古屋で最も早い初氷は1913年11月2日、最も遅い初氷は1968年12月24日︵1896年統計開始︶[4]。
九州地方
福岡で最も早い初氷は1943年11月13日、最も遅い初氷は2005年1月21日︵1932年統計開始︶[5]。
過去の終氷
編集- 北海道
- 北海道内の観測官署で最も遅い終氷は釧路で1922年6月27日(1911年統計開始)、最も早い終氷は室蘭で1948年3月27日(1926年統計開始)。
- 札幌で最も遅い終氷は1928年6月10日、最も早い終氷は1989年4月7日(1926年統計開始)。
- 東北地方
- 仙台で最も遅い終氷は1953年5月3日、最も早い終氷は2008年3月9日(1927年統計開始)。
- 関東地方
- 東京で最も遅い終氷は1926年4月27日(1923年11月統計開始)、最も早い終氷は2016年1月27日。
- 2016年1月27日 - 最も早い終氷。この冬の初氷は1月13日で最も遅い初氷でもあった。
- 東海地方
- 名古屋で最も遅い終氷は1928年4月25日、最も早い終氷は2018年2月24日(1926年統計開始)。
出典
編集- ^ 北海道の雪・霜・結氷・冠雪・積雪・長期積雪(根雪)の初終日の初日、終日の観測状況 札幌管区気象台、2019年11月11日閲覧。
- ^ 東北地方の季節現象(さくら、梅雨、初霜、初氷、初雪、初冠雪) 仙台管区気象台、2019年11月11日閲覧。
- ^ 東京における気象の記録 気象庁調べ、2019年11月11日閲覧。
- ^ 2000年からの季節現象観測の記録 名古屋地方気象台、2019年11月11日閲覧。
- ^ 季節現象観測状況 福岡管区気象台、2019年11月11日閲覧。