逃走の罪(とうそうのつみ)は、刑法に規定された国家的法益に対する罪で、国家による拘禁から逃れること、または国家による拘禁にある者を逃れさせたり、その援助をする犯罪類型。

逃走の罪
法律・条文 刑法第97条 - 第102条
保護法益 国の拘禁作用
主体 各類型による
客体 各類型による
実行行為 各類型による
主観 故意犯(第100条は目的犯)
結果 結果犯
実行の着手 各類型による
既遂時期 各類型による
法定刑 各類型による
未遂・予備 未遂罪(第102条)
テンプレートを表示

概説

編集

[1]

[1]26711581419

単純逃走罪

編集

裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、1年以下の懲役に処せられる(刑法第97条)。加重逃走罪と区別する目的で、単純逃走罪と呼ばれる。

主体

編集



1221321121812[2]

2879678741672243392411133719116347

行為

編集

本罪の行為は「逃走」であり、看守者の実力的支配を脱した状態をいう。未決の者が施設の外へ脱走したが、看守者がすぐに発見して追跡し、まもなく発見された場合、看守者の実力的支配を脱したとはいえないから、逃走未遂罪となるとした下級審の判決がある(福岡高判昭和29年1月12日高刑集7巻1号1頁)。

未遂

編集

本罪は未遂も罰する(刑法第102条)。

加重逃走罪

編集

3598 

主体

編集

33719116347[2]

3562725=6938

76

行為

編集



(一)

(二)

(三)




3112259121336


[3]


未遂

編集

本罪は未遂も罰する(刑法第102条)。

被拘禁者奪取罪

編集

法令により拘禁された者を奪取した者は、3か月以上5年以下の懲役に処せられる(刑法第99条)。

客体

編集

[3][3]30624212628

行為

編集

本罪の行為は「奪取」である。

未遂

編集

本罪は未遂も罰する(刑法第102条)。

逃走援助罪

編集

法令により拘禁された者を逃走させる目的で、器具を提供し、その他逃走を容易にすべき行為をした者は、3年以下の懲役に処せられる。 また、法令により拘禁された者を逃走させる目的で、暴行又は脅迫をした者は、3か月以上5年以下の懲役に処せられる(刑法第100条)。

目的犯

編集

本罪は成立に「法令により拘禁された者を逃走させる目的」を要する目的犯である。

客体

編集

本罪の客体は「法令により拘禁された者」である。

行為

編集

本罪の行為は、器具の提供その他逃走を容易にすべき行為をすること又は暴行・脅迫である。

既遂時期

編集

器具の提供その他逃走を容易にすべき行為をした時点、あるいは暴行や脅迫をした時点で既遂に達する。実際に拘禁された者が逃走することを要しないとされる。但し、看守者逃走援助罪の場合は、拘禁された者が逃走した時点で既遂に達する。

未遂

編集

本罪は未遂も罰する(刑法第102条)。

看守者等による逃走援助罪

編集

法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者を逃走させたときは、1年以上10年以下の懲役に処せられる(刑法第101条

主体

編集

本罪の主体は「法令により拘禁された者を看守し又は護送する者」である(身分犯)。

客体

編集

本罪の客体は「法令により拘禁された者」である。

未遂

編集

本罪は未遂も罰する(刑法第102条)。

脚注

編集

出典

編集
  1. ^ a b 林幹人 『刑法各論 第二版』 東京大学出版会(1999年)466頁
  2. ^ a b 林幹人 『刑法各論 第二版』 東京大学出版会(1999年)467頁
  3. ^ a b c 林幹人 『刑法各論 第二版』 東京大学出版会(1999年)468頁

参考文献

編集

関連項目

編集