ランセット
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The Lancet | |
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![]() 1823年に出版された創刊号の表紙 | |
略称 (ISO) | Lancet |
学術分野 | 医学 |
言語 | 英語 |
詳細 | |
出版社 | エルゼビア |
出版国 | オランダ |
出版歴 | 1823年 - |
出版間隔 | 週刊 |
インパクトファクター | 45.217(2014年) |
分類 | |
ISSN |
0140-6736 |
外部リンク | |
プロジェクト:出版/Portal:書物 |
『ランセット』(英語: The Lancet)は、週刊で刊行される査読制の医学雑誌である。
概説
同誌は世界で最もよく知られ、最も評価の高い世界五大医学雑誌の一つであり[1]、編集室をロンドンとニューヨーク市に持つ。
﹃ランセット﹄は、1823年にイギリスの外科医トーマス・ウェイクリー[※ 1]によって創刊された。誌名をつけたのは彼で、手術用メスの一種であるランセット[※ 2]、および、光を取り入れるを含意するランセット窓にちなんだものである。1991年以来、﹃ランセット﹄はレレックス・グループの一部であるエルゼビアに所有されている。2008年の時点で編集長はリチャード・ホートンである。
﹃ランセット﹄はいくつかの重要な医学的および非医学的事項に関して、政治的な立場を採ったことがある。近年の例では、ホメオパシーの効能が治療の選択肢になりうるという世界保健機構の主張を否定し、この件で世界保健機構を批判したこと[2]、Reed Exhibitionsが軍需産業祭を主催した時点の不支持、そして2003年に、タバコを違法にする呼びかけがある[3]。
﹃ランセット﹄は世界中にかなりの数の読者を持ち、高いインパクトファクターを有する。ことに同誌のウェブサイトTheLancet.comにおいては、1996年の立ち上げ以来180万人以上の登録ユーザーを集めている。﹃ランセット﹄は、原著論文、レビュー︵"seminars"と"reviews"︶、論説、書評、通信に加え、特集ニュースや症例報告を刊行している。﹃ランセット﹄は、﹃ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン﹄ (NEJM)、﹃ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション﹄ (JAMA)、﹃ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル﹄ (BMJ)と並ぶ、"主要な"一般医学雑誌のひとつと見做されている。2012年のジャーナル・サイテーション・レポートでは、一般医学雑誌のなかで﹃ランセット﹄のインパクトファクターは45.217であり、﹃ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン﹄︵55.873︶に次ぐ2位に位置づけられた[4]。
関連雑誌
﹃ランセット﹄はこれまでに3種の専門雑誌を生み出している。いずれの誌名にも母体の﹃ランセット﹄の名称が含まれている。原著論文とレビューを掲載する﹃The Lancet Neurology﹄︵神経学︶、﹃The Lancet Oncology﹄︵腫瘍学︶の2誌と、レビューを掲載する﹃The Lancet Infectious Diseases﹄︵感染症︶である。いずれの雑誌も、各専門分野で重要な雑誌であるとのかなり高い評価を得ている。﹃The Lancet Neurology﹄﹃The Lancet Oncology﹄﹃The Lancet Infectious Disease﹄のインパクトファクターはそれぞれ21.66、17.76、16.14である。[5]
巻号のつけ直し
1990年より以前は、『ランセット』の巻号は毎年リセットされていた。一月から六月までに刊行されたものは第1巻、残りは第2巻とされていた。1990年に、『ランセット』は年間2巻の発行となる連続巻号数方式に変更した。巻の号数は1990年以前にもさかのぼって割り振られ、1990年の前半の巻が335巻、1989年の後半の巻が334巻とされた。Science Directの目次リストの表はこの新しい巻号数表記を用いている。 [6]
議論の的となった記事
﹃ランセット﹄は、1998年に﹃新三種混合ワクチンと自閉症との関係﹄を示唆する内容の文書を刊行したとき、ワクチン研究者や医師から、激しい批判に晒された︵MMRワクチン捏造論文事件︶。2004年2月に﹃ランセット﹄は、同文書の一部撤回を発表した (Lancet 2004;363:750)[7] 。
編集長のリチャード・ホートンは、同文書について、著者の一人のアンドリュー・ウェイクフィールドが、﹃ランセット﹄に開示していなかった重大な利益相反︵conflict of interest︶があったために、﹁致命的な利益相反﹂があったと正式に言明した[8]。そして2010年になって﹁科学における不正行為﹂として、論文全体を正式に撤回した[9]。
﹃ランセット﹄は2004年に、イラク戦争におけるイラク人の死者数を、およそ10万人とする見解を出して議論を呼び起こした。2006年には、同じチームによる追跡研究によって、イラクの戦争での死者数が先行の調査と矛盾しないだけでなく、調査の期間中に顕著に増加したという示唆がなされた (en:Lancet surveys of Iraq War casualties)。二度めの調査では、戦争の結果として654,965人ものイラク人の死者が出たことが推定された。95%信頼区間は392,979人から942,636の間であった。1849世帯の12,801人が調査対象になった[10]。
2006年1月には、2005年10月に﹃ランセット﹄で刊行された、ノルウェーの癌研究者ヨン・スドベ と13人の共著者による記事で、データが偽造されていたことが明るみに出た[11][12][13]。
他の学術雑誌でも、﹃ランセット﹄での論文削除に倣い、いくつかの論文が削除された。﹃ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン﹄誌では、一週間も経たないうちに、同誌で発行された同じ著者による研究論文に関する編集部の見解記事を掲載し、2006年11月には、このノルウェーの研究者による口腔がんの記事2本を削除した[14]。
2009年の論説で、教皇ベネディクト16世がエイズの予防に関して、純潔についてのカトリック教会の教義を推し進めるために、コンドームに関する学術的根拠を公的に歪曲していたことが告発された[15][16]。ローマ教皇庁では、コンドームがエイズの危機を解決するのに十分たりえないかもしれないことを実証した、2000年のランセットの記事を示すことで自己弁護した[17]。
メディアへの登場
1974年のメル・ブルックスのコメディ『ヤング・フランケンシュタイン』では、ジーン・ワイルダー演ずるフレデリック・フランケンシュタイン博士が列車に乗って『ランセット』を読んでいるシーンがある。シャーロック・ホームズものの一話『白面の兵士』でも、19世紀末を代表する医学雑誌としてホームズが言及する。
関連記事
- ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン
- ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(米国医師会雑誌、略称:JAMA, en:Journal of the American Medical Association)
- BMJ
- 世界五大医学雑誌
- MMJ
脚注・出典
脚注
(一)^ Thomas Wakley は翻訳によってトーマス・ウェイクリーと表記されることもあれば、トーマス・ワクリーと表記されることもある。
(二)^ このメスを Scalpel あるいは Lancetと呼ぶ。en:Scalpelに詳しい。
出典
(一)^ “Pope 'distorting condom science'”. BBC (2009 3 27). 2009年10月12日閲覧。 “One of the world's most prestigious medical journals, the Lancet, has accused Pope Benedict XVI of distorting science in his remarks on condom use.”
(二)^ “Homoeopathy's benefit questioned”. BBC (2005 8 26). 2009年10月12日閲覧。
(三)^ Ferriman, Annabel. Lancet calls for tobacco to be made illegal. BMJ 2003;327:1364 (13 December), doi:10.1136/bmj.327.7428.1364-b.
(四)^ 2014 Journal Citation Report Science Edition, Thompson Reuters, 2015
(五)^ 2010 Journal Citation Report Science Edition, Thompson Reuters, 2011
(六)^ The Lancet. Science Direct.
(七)^ Lyall J (February 2004). “Editor in the eye of a storm”. BMJ (Clinical research ed.) 328 (7438): 528. doi:10.1136/bmj.328.7438.528. PMC 351866. PMID 15164721.
(八)^ MMR researchers issue retraction. BBC News, online edition, 4 March 2004.
(九)^ “英医学誌、自閉症と新三種混合ワクチンの関係示した論文を撤回” (日本語). AFPBB News (フランス通信社). (2010年2月3日) 2017年1月18日閲覧。
(十)^ Coghlan, Ben. Gut reaction aside, those on the ground know Iraq reality. Eureka Street, 30 October 2006.
(11)^ Sudbø J, Lee JJ, Lippman SM, et al. (2005). “Non-steroidal anti-inflammatory drugs and the risk of oral cancer: a nested case-control study”. Lancet 366 (9494): 1359–66. doi:10.1016/S0140-6736(05)67488-0. PMID 16226613.
(12)^ Cancer study patients 'made up'. BBC News, online edition, 16 January 2006.
(13)^ Hafstad, Anne. Største svindel verden har sett. Aftenposten, 17 January 2006.︵ノルウェー語記事︶
(14)^ Cortez, Michelle Fay. Medical Journal Retracts Oral Cancer Studies Linked to Fraud. Bloomberg.com, 1 November 2006.
(15)^ Pope 'publicly distorted' condom science: Lancet
(16)^ 法王の﹁コンドーム発言﹂に﹁人命軽視﹂批判 Archived 2009年3月22日, at the Wayback Machine.
(17)^ Radio Vatican article