円頓戒
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円頓戒︵えんどんかい︶は、最澄が唱えた、天台宗やその流れを汲む鎌倉仏教の各宗派︵浄土真宗など一部を除く[1]︶で授けられる戒であり、完全にして自在な修行者のたもつ戒のこと。
具体的には、﹃梵網経﹄が説く大乗菩薩戒で、十重禁戒と四十八軽戒を指し、日本の天台宗が主張した大乗戒を、やがてこの用語で呼ぶようになったものである。円頓とは、円満頓速の意で、全ての物事をまどかに欠ける所なく具え、たちどころに悟りに至らせるのをいい、究極とすることから称された。
留学中の最澄が道邃より授けられ、当時唐において僧侶は比丘の受けるべき﹃具足戒﹄と菩薩戒の兼学が基本で、密教の場合にはこの上さらに三昧耶戒を授かる必要があったが、最澄は帰国後具足戒と三昧耶戒を排し、菩薩戒のみによる僧侶の養成を図った。最澄は円戒という語を用い、円頓戒とは呼んでいないが内容的には最澄の創意であり、弘仁13年︵822年︶最澄没後、この戒を授受する大乗戒壇が比叡山延暦寺に創設されて以降、日本天台宗が旧来の仏教宗派︵南都六宗︶から自立したとされる。その後円仁の﹃顕揚大戒論﹄、安然の﹃普通授菩薩戒広釈﹄等により円頓戒は大成する。