本居豊穎

本居 豊穎︵もとおり・とよかい、天保5年4月28日︵1834年6月5日︶ - 大正2年︵1913年︶2月15日︶は明治期に活躍した国学者。本居宣長の曾孫にあたり、紀州藩本居家の四世当主。幼名稲楠、通称中衛、和号秋屋。なお、生年は天保9年︵1838年︶説もある。

父は本居家三世内遠、母は藤子。幼児に父を失うが、母の教導を得て家学を修め、紀州藩の藩学古学館︵江戸︶の教授となる。

明治維新後はその家系を重んぜられて、神祇官に出仕。教部省において神道大教正に進んだほか、国学者として東京帝国大学・國學院・東京女子高等師範学校などに講師として招かれた。大正天皇の皇太子時代には東宮侍講を勤め、御歌所寄人・帝国学士院会員ともなる。また国学・和歌の興隆を願って大八洲学会を主宰した。

男子に恵まれず、養子を迎えたが、不縁となり、孫の本居長世を後嗣とした。

豊穎の著書には、古今和歌集の注釈たる﹃打聴鶯蛙集﹄﹃古今集講義﹄、歌集﹃秋屋集﹄﹃秋屋集拾遺﹄、祭詞集﹃諄辞集﹄などがあるが、国学者としても、歌人としても、特に述べるべきほどの業績があるわけではない。特に学問的な分野においては、家学の祖述に終始したというべきであろう。ただし﹃本居全集﹄︵明治34～36年︶によって、本居宣長のみならず本居大平・本居春庭らの著作に校訂を加え、これを広く公刊したことは記憶に留めてよい。