ゼウス
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[編集] 概要
ゼウスはローマ神話ではユーピテル︵ジュピター︶にあたる。オリュムポスの神々の家族および人類の両方の守護神・支配神であり、神々と人間たちの父と考えられた。
ゼウスは天空神として、全宇宙や雲・雨・雪・雷などの気象を支配していた。キュクロープスの作った雷霆︵ケラウノス︶を主な武器とする。その威力はオリュンポス最強と謳われるほど強大なもので、この雷霆をゼウスが使えば世界を一撃で熔解させ、全宇宙を焼き尽くすことができる[2]。テューポーンと戦う際には金剛の鎌も武器としていた。雷霆の一撃をも防ぎ、更に敵を石化させるアイギスの肩当て︵胸当てや楯という説も︶を主な防具とするが、この防具はよく娘のアテーナーに貸し出される。
﹁光輝﹂と呼ばれる天界の輝きを纏った鎧に山羊革の胸当てをつけ、聖獣は鷲、聖木はオーク。主要な神殿は、オークの木のささやきによって神託を下したエーペイロスの聖地ドードーナ、および4年ごとに彼の栄誉を祝福してオリンピック大祭が開かれたオリュンピアにあった。この他にも、﹁恐怖﹂という甲冑をギガントマキアーにおいて着用している。
[編集] 系譜
ティーターン神族のクロノスとレアーの末の子︵長男の説もある︶で、ハーデースとポセイドーンの弟。正妻は姉妹であるヘーラーであるが、レートーや姉のデーメーテール等の女神をはじめ、多くの人間の女性とも交わり、子をもうけたといわれる。
オリュンポス十二神の中では、メーティスとの間にアテーナー、レートーとの間にアポローンとアルテミス、ヘーラーとの間にアレース、ヘーパイストス、またテーバイの王女セメレーとの間にディオニューソスをもうけた。
また様々な人間の女性との間に、たとえばダナエーとの間にペルセウスを、アルクメーネーとの間にヘーラクレースを、レーダーとの間にディオスクーロイをといったように多数の子供たちをもうけたことになっている。これらゼウスの子とされる英雄を半神︵ヘロス︶といい、古代ギリシアでは下級の神として広く祀られた。これらの伝説は、古代ギリシアの各王家が、自らの祖先をゼウスとするために作り出された系譜とも考えられる。ゼウスが交わったとされる人間の女の中には、もとは地元の地母神であったと考えられるものもいる。女神や人間と交わるときのゼウスはしばしば変化したとされ、ダナエーのときには黄金の雨、レーダーのときには白鳥などの獣の形に変身したといわれる。
[編集] 生い立ち
ゼウスの生誕に関する古代伝説のひとつによれば、父クロノスはわが子に支配権を奪われる不安にかられ、生まれた子供を次々に飲み込んでしまった。そこでゼウスを生んだとき、母レアーは産着で包んだ石をかわりにクロノスに飲ませることでゼウスを救った。ゼウスはクレーテー島で雌山羊のアマルテイアの乳を飲み、ニュムペーに育てられた。 成人したゼウスは、嘔吐薬によってクロノスに兄弟たちを吐き出させ︵この時飲み込まれた順とは逆の順で吐き出されたが、これがポセイドーン等にとって第2の誕生にあたり、よって兄弟の序列が逆転されたともされている︶、父親に復讐をしたがっている彼らと共に、全宇宙の支配権を巡る戦争であるティタノマキアを勃発させた。 この大戦においてゼウスは雷霆を投げつけ、無敵の衝撃波と雷火によってティーターン神族を一網打尽にした。その威力は見渡す限りの天地を逆転させ[3]、地球や全宇宙、そしてその外側のカオスをも焼き払うほどであった[4]。この想像を絶する猛攻撃の甲斐あってゼウスたちはクロノスなどのティーターン神族を打ち倒し、敗者であるティーターン神族は地獄の底、奈落のタルタロスに封印された。 その後ゼウスとポセイドーンとハーデースは支配地をめぐってくじ引きをし、それぞれ天空と海と冥界の主となった。更に、ゼウスはその功績から神々の最高権力者と認められた。[編集] 人物
ホメーロスの記述にみるゼウスは、2つの異なる姿で描かれている。一面ではゼウスは弱者の守護神、正義と慈悲の神、悪者を罰する神としてあらわされる。しかし同時に、次々と女性に手をだしては子孫を増やし、不貞を妻に知られまいとあらゆる手段を講じる神としても描かれている。 元来はバルカン半島の北方から来てギリシア語をもたらしたインド・ヨーロッパ語族系征服者の信仰した天空神であったと考えられ、ヘーラーとの結婚や様々な地母神由来の女神や女性との交わりは、非インド・ヨーロッパ語族系先住民族との和合と融合を象徴するものと考えられる。また自分たちの系譜を神々の父までさかのぼりたいという、古代ギリシア人の願望としても説明されることがある。 多くのインド・ヨーロッパ語族系言語を用いる民に共通して信仰された天空神に由来し、その祖形は、ローマ神話におけるユーピテルの原型であるデイオス・パテール、あるいは普通名詞﹁神﹂を表すデイオス、デウス、古層のインド神話の天空神ディヤウス、北欧神話のテュールらに垣間見ることができる。 好色なこの父神は、ギリシアにおける道徳意識の高まりとともに、しだいに好ましくない存在となった。このため後の伝説などでは、ゼウスを崇高な存在として表現するようになった。 テューポーンとの戦いでは足の腱を切られて囚われの身となったことがある。最高神が自ら怪獣と肉弾戦を演じ危難に陥る描写は、北欧神話にも似た傾向があるとはいえ、ギリシャ神話独自のものであり、権威者をひたすら神秘で超越的なものとしてのみ描こうとする他の神話との大きな相違ともなっている。[編集] 出典
(一)^ 里中満智子・名古屋経済大学助教授西村賀子解説 ﹃マンガギリシア神話1オリュンポスの神々﹄ 中公文庫、2003年。以下は同書の参考文献。
●K・ケレーニイ ﹃ギリシアの神話-神々の時代﹄ 植田兼義訳、中公文庫、1985年。
●K・ケレーニイ ﹃ギリシアの神話-英雄の時代﹄ 植田兼義訳、中公文庫、1985年。
●呉茂一 ﹃ギリシア神話 上・下﹄ 新潮文庫、1979年。
●アポロドーロス ﹃ギリシア神話﹄ 高津春繁訳、岩波文庫、1953年。
●﹃四つのギリシャ神話-ホメーロス讃歌より﹄ 逸見喜一郎・片山英男訳、岩波文庫、1985年。
●ヘーシオドス ﹃神統記﹄ 広川洋一訳、岩波文庫、1984。
●ヘーシオドス ﹃仕事と日﹄ 松平千秋訳、岩波文庫、1986年。
●ホメーロス ﹃イーリアス 上・中・下﹄ 呉茂一訳、岩波文庫、1953・56・58年。
●ホメーロス ﹃オデュッセイア 上・下﹄ 松平千秋訳、岩波文庫、1994年。
●串田孫一 ﹃ギリシア神話﹄ 筑摩書房、1961年。
●山室静 ﹃ギリシャ神話 付北欧神話﹄ 現代教養文庫・社会思想社、1963年。
●T・ブルフィンチ ﹃ギリシア神話と英雄伝脱 上・下﹄ 佐渡谷重信訳、講談社学術文庫、1995年。
●阿刀田高 ﹃ギリシア神話を知っていますか﹄ 新潮社、1981年。
●D・ベリンガム ﹃ギリシア神話﹄ 安部素子訳、PARCO出版、1993年。
●F・ギラン ﹃ギリシア神話﹄ 中島健訳、青土社、1982年。
●﹃ギリシア神話物語﹄ 有田潤訳、白水社、1968年。
●高津春繁 ﹃ギリシア・ローマ神話辞典﹄ 岩波書店、1960年。
●L・マルタン監修 ﹃図説ギリシア・ローマ神話文化事典﹄ 松村一男訳、原書房、1997年。
●水之江有一編 ﹃ギリシア・ローマ神話図詳辞典﹄ 北星堂書店、1994年。
●吉村作治編 ﹃NEWTONアーキオVOL.6 ギリシア文明﹄ ニュートンプレス、1999年。
●A・ピアソン ﹃ビジュアル博物館37古代ギリシア﹄ 同朋舎出版、1993年。
●F・ドゥランド ﹃古代ギリシア 西欧世界の黎明﹄ 西村太良訳、新潮社、1998年。
●周藤芳幸 ﹃図説ギリシア エーゲ海文明の歴史を訪ねて﹄ 河出書房新社、1997年。
●青柳正規他 ﹃写真絵巻 描かれたギリシア神話﹄ 小川忠博撮影、講談社、1998年。
●R・モアコット ﹃地図で読む世界の歴史 古代ギリシア﹄ 桜井万里子監修 青木桃子他訳、河出書房新社、1998年︶。
●村川堅太郎編著 ﹃世界の文化史跡3ギリシアの神話﹄ 高橋敏撮影、講談社、1967年。
●P・ミケル ﹃カラーイラスト世界の生活史3﹄ 木村尚三郎他監訳、東京書籍、1984年。
●P・コノリー ﹃カラーイラスト世界の生活史21﹄ 木村尚三郎他監訳、東京書籍、1986年。
●P・コノリー他著 ﹃カラーイラスト世界の生活史25﹄ 木村尚三郎他監訳、東京書籍、1989年。
●﹃ATENES THE CITY AND ITS MUSEUMS﹄ Eldptike Athenon S.A.、1979年。
●Piero Ventura&Gian Paolo Ceserani ﹃TROIA L'avventura di un mondo﹄ Arnoldo Mondadori Editore、1981年。
(二)^ ヘーシオドス ﹃神統記﹄ 広川洋一訳、岩波文庫、1984。
(三)^ フェリックス・ギラン、﹃ギリシア神話﹄中島健訳、青土社、1991。
(四)^ ヘーシオドス ﹃神統記﹄ 広川洋一訳、岩波文庫、1984。
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