アザラシにセイウチ、ベルーガ(シロイルカ)、イワナにカリブー、どれも刺身にして醤油をつけて食べると最高だ。そこにショウガやワサビ、ニンニクなどの薬味が少々あれば、もう言うことはない。
今では、イヌイットもすっかり醤油党だ。私がまだ日本へ来る前の若かりし日々を過ごしたカナダのバフィン島やヌナブット準州では、どの家の食卓にも日本の醤油が並んでいるはずだ。ことに、イヌイットたちが「ムクトゥク」と呼ぶベルーガの皮を使った一品には、醤油が欠かせない。ちなみに、彼らは甘みの強い白人好みの中国製醤油を「ソイ・ソース」と呼び、日本の醤油と区別している。イヌイットの間では、「キッコーマン」の名で知られる日本製醤油のほうが断然、人気が高い。お断りしておくが、くだんの会社からは礼状や賞牌の類は何一つ頂戴していないので、念のため……。 (訳・森 洋子)
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