いかに、わが世の、あだなるや、空くうなるや、うつろなるや。げに、人間のあとかたの覺おぼ束つかなくて、數少なき。徒いたづらなるは月日なり。 しかも萬人は生を惜む。いたく、性命を尊みて、これより、我より、當來より、なに物か、えまほしく、求めてやまず……噫あゝ、人は、當來に、豐なる賚たまものを望む。 さはれ、なじかは、思はざる、當來また過去に似たらむを。 げに、思はざるなり。考ふるを好まざるなり。此事眞に善し。 ﹃さて、あすは、明日は!﹄人みな、この﹃あすは﹄をもて、自ら慰め、終におくつきの道に降らむ。 而して、ひとたび、墳おく塋つきのうちに入らば、人の思はおのづから已やまむ。