天文と俳句

寺田寅彦




 
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 姿
 
 Monsoon西西西
 
 西西
 滿西西調
 
 
 西使
 
 姿
 
 
あか/\と日はつれなくも秋の風     芭蕉
西()()()
 ※(「えんにょう+囘」、第4水準2-12-11)
五月雨を集めて早し最上川     芭蕉
五月雨や色紙へぎたる壁の跡     同
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春雨や蜂の巣つたふ屋根の漏     芭蕉

市中は物のにほひや夏の月     凡兆
 夏の晴れた宵の無風状態を「物の匂ひ」で描いたものである。月は銅色をして居て、町から町へ架け渡した橋の下には堀河の淀みがあるであらう。
あれ/\て末は海行野分哉     猿雖
 七百三十ミリメーターの颱風中心は本邦を斜斷して大平洋へ拔けた。濱邊に打上げられた藻屑の匂を感じ、ひやひやと肌に迫る汐霧を感じるであらう。
だまされし星の光や小夜時雨     羽紅
 見方によつては厭味[#「厭味」は底本では「壓味」]な所謂月並にもなり得るであらうが、時雨といふ現象の特徴をよく現はしたもので、氣象學教科書に引用し得るものであらう。古人の句には往々かういふ科學的の眞實を含んだ句があつて、理科教育を受けた今の人のに、そのわりに少ないやうに思はれるのも不思議である。昔の人は文部省流の理科を教はらないで、自分の眼で自然を見たのである。
灰色の雲垂れかゝる枯野哉     漱石
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   1948231225
   1949249203


hongming
2003117

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