竹乃里人

伊藤左千夫




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 使()
 
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 鹿鹿()()()()()()
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 調()
 ()()()()()()宿宿稿


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 ()姿


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 出抜だしぬけに先生はこういって再度眼をとじてしまった、これだけのことをいうにもよほどタイギそうに次の語を発しない、予は思わずひざを進めて。
それは先生文学上の大問題ですなア。
 予は先生に次なる語を促すような語気でもってそういうたのであるが、先生ははなはだ息苦いかのごとく、容易にその次を語らない、この時予はむしろ次なる先生の説をききたいというよりは、話を続けて先生を慰めようという方に多くの意味を持って、再び次のごとくいうたのである、
西()()()()
 予は思わず熱心こめてこういうたのである、先生は、じっと予の方に眼を向けられ。
それはそうだが、このざまではとてもそんなことは出来んじゃないか。
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ただ今のお話について少し伺っておきたいと思いますが、話をしてもよろしゅうございますか。
といって先生の許しをえてから、
私もと申しては少しおこがましい訳ですが、演劇も小説も熱心に見たというではありませんけれど、ともに面白く思って居りまして、小説なぞは読みかけると夜の明けるも知ずに読んだこともありますが、実を申すとごく浅薄な趣味で面白いので、いわばただ筋書ばかりを面白く感じますのです、つまりおとぎ的に面白みを感ずるのでありました、それで少し文学的とか詩的とか真面目な意味から視ると、いつでも不自然殊更ことさら作りものというような感がすぐ起ってくるのです、今の大家という人々の小説でも文章はうまいが、趣味という点にはどうしても、不自然な殊更な感じを起さぬことはありません、演劇は見たほど見ませんが、古いことですが明治座で左団次の曾我そがを見た時などは実に馬鹿らしくて堪りませんでした、団十郎は未だ見ないくらいですから演劇の話などは無理でありますけれど、左団次の五郎といっては名高いのだそうでありますのに、その曾我五郎の左団次が捕縛されるところなどは、まるで人形の転がるようでとても真面目な趣味感が起るものでありゃしません、人をるとか自殺するとか、捕縛されるとか、人間の激情無上なるきわどいところなどが、どうして不自然な殊更なママごとらしき感の起らぬように演ずることが出来ましょう、小説でも演劇でも平凡な事実をやればつまらぬ価値のないものになってしまう、少し際立った奇なことをやれば、とても自然を得ることが出来ぬとすれば、到底詩的趣味の感懐を満足させることはつかしい、普通一般的浅薄な娯楽としてはもちろんこの上なきものであろうが、文学の素養深き人の詩的興快を動すことはなはだ覚束ないものではあるまいか、それは天才的大手腕家が出てきて技倆ぎりょうを振われたら知らぬこと、今日の演劇や(能楽の演技は別)小説では要するに普通人の娯楽程度であってママごとやお伽話の進歩した物としか思われない。
私はこんな風な考えを持っていたこともあったのでありますが、何しろ小説熱の盛な時代、そんなこというたとて誰あって相手にするものありません、そういう私でありますから今先生のお話を伺って私は非常に心が動いた訳ですが、ただ今の先生のお話は今私が申上たような意味で解釈してよろしいのでありましょうか、私は大手腕家が出てきたらと申しましたが、先生のはそれが一歩進んで手腕に係らず、小説というものは素養ある詩人の感懐を満足させることは到底出来ぬものとお極めになったというように承知致しましたが、そう心得てよいのでありますか。
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 ()()()()()()()西()()()()()
 
小説というものはとても吾々の感じを満足させるように出来ぬものときめてしまった、
 この一語は正しく正岡先生の口より出でて左千夫の耳に入りしもの、すなわち明治三十七年一月発刊の『馬酔木』巻頭に掲げ広く世界の識者に問うのである。



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 ()()※(「くさかんむり/惠」、第3水準1-91-24)()()()()()()()()()()
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 ()調()()西西()()()()()()調()()
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 調()()
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「病牀六尺」六月二日
余は今まで禅宗のいわゆる悟りということを誤解して居た。悟りということはいかなる場合にも平気で死ぬることかと思って居たのは間違まちがいで、悟りということはいかなる場合にも平気で生きて居ることであった。
 ()()()※(「口+喜」、第3水準1-15-18)
 
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()()穿()()
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()※(「口+喜」、第3水準1-15-18)
 
 
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 ()()()歿()
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 ()稿()






  
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   197550918
 
   1903361113
    
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   19043755
    
   190437715
    
   190437825
5-86
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hitsuji
2022626

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