月夜のでんしんばしら

宮沢賢治




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「ドツテテドツテテ、ドツテテド、
 でんしんばしらのぐんたいは
 はやさせかいにたぐひなし
 ドツテテドツテテ、ドツテテド
 でんしんばしらのぐんたいは
 きりつせかいにならびなし。」
 一本のでんしんばしらが、ことに肩をそびやかして、まるでうで木もがりがり鳴るくらゐにして通りました。
 みると向ふの方を、六本うで木の二十二の瀬戸もののエボレツトをつけたでんしんばしらの列が、やはりいつしよに軍歌をうたつて進んで行きます。
「ドツテテドツテテ、ドツテテド
 二本うで木の工兵隊
 六本うで木の竜騎兵
 ドツテテドツテテ、ドツテテド
 いちれつ一万五千人
 はりがねかたくむすびたり」
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「ドツテテドツテテ、ドツテテド
 やりをかざれるとたん帽
 すねははしらのごとくなり。
 ドツテテドツテテ、ドツテテド
 肩にかけたるエボレツト
 重きつとめをしめすなり。」
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「ドツテテドツテテ、ドツテテド
 寒さはだへをつんざくも
 などて腕木をおろすべき
 ドツテテドツテテ、ドツテテド
 暑さ硫黄いわうをとかすとも
 いかでおとさんエボレツト。」
 
 
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「ドツテテドツテテ、ドツテテド、
 右とひだりのサアベルは
 たぐひもあらぬ細身なり。」
 



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「ドツテテドツテテ、ドツテテド、
 タールを塗れるなが靴の
 歩はばは三百六十尺。」
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殿
 
「ドツテテドツテテ、ドツテテド
 でんしんばしらのぐんたいの
 その名せかいにとゞろけり。」

 
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   1986611281
   20041642520
 
   192413121

noriko saito
2005221

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