其中日記

(四)

種田山頭火





     



 







・けさは逢へる日の障子あけはなつ(追加一句)
 青田いちめんの長い汽車が通る
・炎天かくすところなく水のながれくる
・涼しい風が、腰かける石がある
・すずしうて蟹の子
・ふるさとちかく住みついて雲の峰
 水をわたる高圧線の長い影
・日ざかりのお地蔵さまの顔がにこにこ

宿
 




 
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      米 二升二合         酒   弐十銭
今日の所得          今日の買物
      銭 二十六銭         ハガキ 三銭
この二合の酒はとてもうまかつた、文字通りの甘露だつた。
秋穂はさすがに八十八ヶ所の霊場だけに、殊に今日は陰暦の二十日だけに、お断りは殆んどなかつた。
・朝月まうへに草鞋はかろく
・よち/\あるけるとしよりに青田風
・朝月に放たれた野羊の鳴きかはし
・田草とる汗やらん/\として照る
・木かげ涼しくて石仏おはす(改作)
・炎天の虫をとらへては命をつなぐ
・一人わたり二人わたり私もわたる涼しい水
・重荷おろすやよしきりのなく
















 




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   追加
・月あかり蜘蛛の大きい影があるく
・月夜の道ばたの花は盗まれた
・昼ふかく草ふかく蛇に呑まれる蛙の声で
・待ちぼけの、寝るとする草に雨ふる
・待つでもない待たぬでもない雑草の月あかり

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   19866111301
5-86


2009115

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