吉井君の歌

石川啄木




 滿滿
 
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露臺ばるこんの欄にもたれてもの思ふうたびとの眼のやわらかさかな
あはれにもうたげあらけてめづらしき異國の酒の香のみ殘れる
ゆふぐれの河岸にただずみ水を見る背廣の人よ何を思へる
諸聲もろごゑの流行の小唄身にぞ染む船の汽笛の玻璃に鳴る時
いまもは廣重の繪をながめつゝ隅田川をば戀しとおもふや

(明治43・9・23「東京朝日新聞」)






 
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2012415

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