文士としての兆民先生

幸徳秋水






 
 歿



 稿
 ()U+7243282--14




 
 西西
 沿
 調
 西
 一日ルソー歩してワンセンヌに赴く。偶ま中路暑に苦み樹下に憩い携うる所の一新聞紙を披いて之を閲するに、中に載する有りチシヨンの博士会一文題を発し賞を懸けて能く応ずる者あるを募る。其題に曰く学術技科の進闡せしをば人の心術風俗に於て益有りしと為す乎将た害ありしと為す乎とルーソー之を読みて神気俄に旺盛し、意思頓に激揚し自ら肺腸の一変して別人と成りしを覚え、殆ど飛游して新世界に跳入せしが如し。因て急に鉛筆を執りファプリシュースの一段を草して之を懐にし既にワンセンヌに至りジデローを見るも猶お去気奪湧し血脈狡憤して自ら安んずること能わず。ジデロー一誦して善しと勧めて更に敷演して一論を完結せしむ。ルーソー其言に従う所謂非開化論なり。
 



 稿
 
 退※(「足へん+搨のつくり」、第4水準2-89-44)
 記してあるのみならず、平生予に向っても昔し蘇東坡は極力孟子の文を学び、竟に孟子以外に一家を成すに至った。若しお前が私の文を学んで、私の文に似て居る間は私以上に出ることは出来ない。誰でも前人以外に新機軸を出さねばならぬと誨えられた。先生の文章に於けるや、苦心常に此如きものがあった。先生の文は決して売らんがために作るものではなかった。其売れる売れないとは毫も文士として先生の偉大を損するに足らぬのである。






   195530331
   1961366202
Nana ohbe
 
20011217
2012913

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JIS X 0213

JIS X 0213-


「爿+喋のつくり」、U+7243    282-下-14


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