妙な子

宮本百合子




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「天職を全うするため」だと。
 
 
「女の天職と云えば立派な世の中に遺す事業のような事の出来るような子を産むのが女の天職である。なぜかと云うと神様の作った世界がほろびずに行くと云うのは女が子を産む事があるからで神様は自分の作った世界のほろびる事を望んで居られる筈はない。神の心を満足させるような神の望んで居られる仕事をするのがとりもなおさず天職である」
 そんならかたわでも馬鹿でもどしどし子さえうんでおけばそれでよいのか。若し世の中に事業をのこす事の出来る頭をもたない子を産んだらばその母は罪をおかしたものだと云われることが出来るかも知れない。
 一番おしまいに私に答えてくれた母の言葉は、

 私は椽がわからつきおとされたような気持でだまってしわの多くなった私の母のかおを見つめて居た。母は又、
「そんなこわいかおをして。ほんとにこまってしまう妙な子で」又妙な子と云った。
 
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「そんなに妙だ妙だって云わずといいじゃあないか。妙な子だと云ったところでなおるわけでもなし、私は死ぬまで妙な子でいいんだ、面倒くさい」
 





 
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2009129

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