ストリンドベルヒの自伝の一部で氏の最初の結婚生活を書いたもので御座います。この小説は是非誰にも一読して欲しいものと思ひます。殊に多くの婦人達に――私は本書の内容についてはあまり多く申しません、訳も極めて叮てい嚀ねいな隅々まで理解のとゞいた立派なものだと思ひます。並々ならぬ苦心のあとも見えます。訳者も巻末に﹁この小説は今自分に取つて殆んど理想的な小説である。自分はこの訳本を重訳ではあるがその理想的さ加減を略ほぼ遺憾なく伝へてゐると公言する﹂と云つてゐられます。
美と女と
青柳有美著 (定価 壱円弐拾銭[#改行]実業之世界社発行)
先生の序文を拝見しますとこの本には﹁美術と美学とに関する古今独歩の識見が披瀝せられてある。文芸に関する突飛卓抜の意見が開陳せられてある。女と性欲とに関する問題が研究せられてある。﹂さうです。そして﹁健全で、面白くつて、有益で、安い書籍﹂ださうです。これは本屋の広告ではなく、先生御自身の御証明ですから、間違がないことゝ存じます。巻頭には例によつて先生の御肖像があります。身体を七分三分にヒネツタ頗すこぶる﹁卓抜非凡﹂の御ごよ容う子すです。内容はその﹁新吉原改良論﹂より巻末の﹁脚本白拍子祇王﹂に至るまで、一々﹁独創の識見﹂に満ちた御作です。先の﹁女の話﹂と並せて読めば更に沢山な御利益があることゝ存じます。
﹇﹃青鞜﹄第五巻第六号、一九一五年六月号﹈