手紙

慶応三年三月六日 印藤肇あて

坂本龍馬




追白、先日より病気ニて引籠居候まゝ書付として呈しぬ。
下の件ハ長※(二の字点、1-2-22)の御ものがたり申上候得バ、通常の手紙ニしてハ何分(わか)りがたく候間、不文ニハ一ツ書の方がよろしかるべしとて申上たれバ、元より不敬の義御見ゆるしたまえ。
第一段
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されバ今如此の事を聞くハ、定めて小人共私の頭上に其賢大夫のおらぬをうれたみ、ゆハゆる南面してせいすれバ北方うらむの儀ならんか。
第二段
今日不計も三吉老翁の来杖、幸ニ諸君の無異平安なるを伝聞相賀し申候。三大夫及大兄ニも三四日中ニニ(ママ)ハ、御出関と承リ御待申候。
第三段
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第四段
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第五段
※(二の字点、1-2-22)()()

第六段
此月の初より長崎ニ出、大洲の船の来るをまち申べしと思ふ内ニ、小弟先日中風けニて床ニおり候ものから、心ニまかせず彼是する内ニ、大洲の船と共に長崎ニ廻るよふニならんかと思ひおり候。
第七段
大洲の船、石炭費用一昼夜ニ一万五千斤(故ニ二万斤の見込ナリ。)タネ油一昼夜ニ壱斗、
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下の関ヨリ行テ下の関ニ帰ル
彼島ニ行て唯かへれバ三日のひまとるべし。但し下の関より。
第八段
()()※(二の字点、1-2-22)()()
第九段
三大夫も思召立なく君立も御出なく僕身を以て他人をつのらず、此行を成シとぐるにハ又金が入候べし。今手本ニも少※(二の字点、1-2-22)ハあれども、相成事なれバ四百金十ヶ月の期限ニて借入たし。御尽力相叶候ハヾ生前の大幸なり、宜願入候。
第十段



以上稽首百拝ス。
三月六日、ねられぬまゝ筆をとりはべりぬ。
印先生
左右
猶先日中ハ人丸赤人など時※(二の字点、1-2-22)相集り(歌)よみついに一巻とハなして、ある翁をたのみ其一二をつけしに飯立市となりたり。幸ニやつがれがうたハ第二とハなりぬ。其哥ハ、
心からのどけくもあるか野べハなを雪げながらの
春風ぞふく
※(二の字点、1-2-22)()
世と共にうつれバ曇る
春の夜を
朧月
とも人ハイウなれ

先生にも近時の御作何卒御こし可成や。先日の御作ハ家の主が、彼一巻の内ニハいたし候と相見へ申候。かしこ。







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Yanajin33
Hanren
2010826
2011617

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