ヒウザン会とパンの会

高村光太郎




 
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 ()※(「王+干」、第3水準1-87-83)()()
 
 ※(「王+干」、第3水準1-87-83)()
 
 ※(「王+干」、第3水準1-87-83)
 宿()()
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 使西()()()
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泥でこさへたライオンが
お礼申すとほえてゐる
肉でこさへたたましひが

人こひしいと飲んでゐる


 ○


無理は天下の醜悪だ
人間仲間の悪癖だ
酔つぱらつた課長殿よ




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モナ・リザは歩み去れり
かの不思議なる微笑ほほゑみに銀の如き顫音せんおんを加へて
「よき人になれかし」と
とほく、はかなく、かなしげに
また、凱旋の将軍の夫人が偸見ぬすみみの如き
冷かにしてあたたかなる
銀の如き顫音を加へて
しづやかに、つつましやかに

モナ・リザは歩み去れり


モナ・リザは歩み去れり
深く被はれたる煤色すすいろ仮漆エルニこそ
はれやかに解かれたれ
ながく画堂の壁に閉ぢられたる
額ぶちこそは除かれたれ
敬虔の涙をたたへて
画布トワアルにむかひたる
迷ひふかき裏切者の画家こそはかなしけれ
ああ、画家こそははかなけれ

モナ・リザは歩み去れり


モナ・リザは歩み去れり
心弱く、痛ましけれど
手に権謀の力つよき
昼みれば淡緑に
夜みれば真紅しんくなる
かのアレキサンドルの青玉せいぎよくの如き

モナ・リザは歩み去れり


モリ・リザは歩み去れり
我が魂を脅し
我が生の燃焼に油をそそぎし
モナ・リザの唇はなほ微笑せり
ねたましきかな
モナ・リザは涙をながさず
ただ東洋の真珠の如き
うるみある淡碧うすあをの歯をみせて微笑せり
額ぶちを離れたる

モナ・リザは歩み去れり


モナ・リザは歩み去れり
かつてその不可思議に心をののき
逃亡を企てし我なれど
ああ、あやしきかな
歩み去るそのうしろかげの慕はしさよ
幻の如く、又阿片をく烟の如く
消えなば、いかに悲しからむ
ああ、記念すべき霜月しもつきの末の日よ



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わが顔は熱し、吾が心は冷ゆ
辛き酒を再びわれにすすむる

 







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   1989411
   199459102
3


20061120

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●表記について