小川未明私は姉さん思い出す

花はなによう似にた姿すがたをば、なんの花はなかと問とわれるとすぐには返へん答とに困こまるけど。ただ微ほほ笑えみてものいわず、うす青あお白しろき夢ゆめの世よに、いまは幻まぼろしと浮うかぶかな。花はなにいろいろあるけれど、燃もえる紅あかい花はなでない。冷つめたい白しろい花はなでない。夏なつはまだ浅あさく、色いろ淡あわく、紫あじ陽さ花いの咲さくころに、私わたしは姉ねえさん思おもい出だす。

底本‥﹁定本小川未明童話全集　3﹂講談社　　　1977︵昭和52︶年1月10日第1刷　　　1981︵昭和56︶年1月6日第7刷初出‥﹁おとぎの世界﹂　　　1919︵大正8︶年7月 ※表題は底本では、﹁私わたしは姉ねえさん思おもい出だす﹂となっています。入力‥ぷろぼの青空工作員チーム入力班校正‥江村秀之 2013年12月26日作成青空文庫作成ファイル‥ このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫︵http://www.aozora.gr.jp/︶で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。