人よ、攀よぢ難がたいあの山がいかに高いとも、 飛躍の念さへ切せつならば、 恐れるなかれ不可能の、 金きんの駿しゆ馬んめをせめたてよ。 登れなほ高く、なほ遠く。たとひ賢さかしらに なんぢが心、山さん腹ぷくの 泉のそばを慕ふとも、 悦よろこびはすべて飛躍である。 途みちのなかばにとまる者は、やがて途に迷ふ。 かつは苦くるしみかつ悶え 錯あやまち怒いかることあつて 燃立つ心に命がある。 きのふの目めあ標て、あすの日は途みちの障しや礙うげぞ、 籠の戸いかに固いとも、 思想はたえず相さう尅こくし とはに盡きぬはその饑きか渇つ。 變化あれよ、向上あれとは、この世の大たい法はふ、 不動の今がいかにして、 現げん世ぜの榮はえを引きはす 大だいコムパスの支點となる。 過ぎし世の智ち慧ゑといふもの何の益えきかある、 授くるものは梭しゆ櫚ろの葉の 危あぶなげも無い勝利のみ。 これを越えて飛べ、熱烈の夢。 人苟いやしくも飛躍せば、たえず己に超越せよ。 われとおのれに驚けよ、 頭かしら果はたしてこの熱に、 堪へるか否かを問ふ勿れ。 不斷の慾よくのたえまない人の心を、 攀よぢ難がたい山の上から、ましぐらに、 未來めがけて不可能の、 金きんの駿しゆ馬んめは推おし上げる。