普羅句集 前田普羅

 今日は、前田普羅の「普羅句集」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 文芸誌「ホトトギス」の、初期の代表的な俳人とされる前田普羅の句集を読んでみました。
 俳句や文学は、作家の生活と無縁のもの……自然界や他者を描きだすことが多いはずなのですが、今回の前田普羅の句集は「一句一句に就て私の生活が見出される事であらう」ということがまずはじめに記されています。私的な句集なのか、あるいは実感のこもった句集なのかと思って読みました。新聞記者の仕事が本職だったのですが、退職して句集を出し、また初期ホトトギスの選者となったのが前田普羅氏なのだそうです。
 生活の気配が見えてくる句はこういうものでした。
 
石ころも雑魚と煮ゆるや春の雨
ころげ出て尻皆青き蜜柑哉
つぎ〳〵の運動会や秋の行く
一人来てストーブ焚くやクリスマス
松の木に庭師来て居り昼寝覚
 
 よその家の、写真アルバムを見たような気分になる作品が、いくつもありました。
 また序文で記されている「少年の心は、先づ染織学に動いた。それは色彩を採つて現し世の人の上に施し眺め得る魅惑からだ。電気学に心は走せた。新興科学の秘匣は、ボタンの一と押で解釈されさうだと思つたからだ。メスを執る人ともならんとした。生命の不思議はメスの先で発かれると思つたからだ」という自分史に対応する句はこうです。「人殺ろす我かも知らず飛ぶ螢」これは現代語訳すると「自分の中に人をあやめるような暗い何かが潜んでいるかもしれない……そのことにも気づかずに、蛍は無邪気に飛び回っている」という感じです。あるいは「胡蝶の夢」のように人と虫が入れ替わって思いが記されている句なのでした。
 また以下の妓家にかんする句をAIに現代語訳させるのも興味深かったです。
「妓家 / 明易き人の出入や麻暖簾」
 自分としては、大正時代の風景を写しだした作品が印象深かったです。

 淡雪の中に来て居し電車かな
 そのほかに、家族の安寧を描きだした句もあってすてきでした。
 

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