二人の友 森鴎外

 今日は、森鴎外の「二人の友」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 明治時代に、ドイツ留学をしてドイツ語を学んでいた「私」と、ドイツ語に堪能な「F君」と、ドイツ哲学を読解したい僧侶の「安国寺さん」の物語です。
 森鴎外にそっくりな「私」が小倉時代に出会った、2人の友のことを記した小説です。小倉に赴任していた数年間と、そのご東京に帰った数年を描いています。
 F君はお金に無頓着で、ドイツ語の研究は日本随一なくらい優れていて、ドイツ語をさらに学ぶために「私」にドイツ語を個人教授してもらおうと、無一文で小倉にまで押しかけてきた。
 「私」はこの青年をおもしろく思って、彼にドイツ語教師の仕事をやってもらうように手配し、近くの宿に泊まれるようにしてやった。ドイツ語の話しで盛りあがって、何日も交流していたところ、F君はどうも異性交遊をしたことが無く、学問にだけ夢中になっていることが分かってきた。
 F君は、語法をむずかしく教えるので、生徒はみな参ってしまう。このF君からもドイツ語を学んでいた僧侶の安国寺さんは、かなり苦悶してドイツ哲学を読解していた。
 芸者の女性の口説き文句の嘘を真に受けたりしているドイツ語教師のF君が、数年たってから女学生と親しくなった。本文こうです。「F君は女学生と秘密に好い中になっていたが、とうとう人に隠されぬ状況になったので、正式に結婚しようとした」ところが、四国の親ごさんがこれを認めない。しかたが無いので、友人で生徒さんでもある僧侶の安国寺さんに相談して、親御さんを説得してもらうことになった。
「安国寺さんを縁談の使者に立てたとすると、F君はお大名だな」と私は言うのでした。本文こうです。
「無遠慮な Egoist たるF君と、学徳があって世情にうとく、赤子の心を持っている安国寺さんとの間でなくては、そう云うことは成り立たぬと思ったのである。」
 二人とも、人生は順調に進んで、もともとの仕事を続けていった。学問は終わりなくずっとやるもんなんだ、というのが見えてくる、小説でした。
 森鴎外は前期作品と後期作品の間に十数年間ほどの休止期間があるんですが、その期間に起きた出来事を書いているように思いました。
  

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