今日は、葛西善藏の「哀しき父」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
自らを「哀しき父」と呼ぶ文学者の、孤独な物語でした。本文こうです。
彼の子供は四つになつてゐるのである。そして遠い彼の郷里に、彼の年よつたひとりの母に護られて成長して居る
父と子は、金魚売りのいる路地でのんびり暮らしていたのですが……「彼等の哀しき離散の日」からさき、父であるはずの彼は孤独に一人で生きることになります。それから「彼は金魚を見ることを恐れ」るようになるのでした。母と妻は、実家の故郷で子育てをしていて、父に手紙を書き送ります。子は洋服がほしくてしかたない。手紙で父に、新しい服をねだるのでした。父は、このまえ送ったマントや玩具や絵本のあとに、子どもの洋服を買って送ることになった。
中盤で、貧困や伝染病による暗い世相が描写されます。母と妻と子から離れて、病がひしめく街の中で金を稼いで、妻子を養わねばならない詩人の物語でした。父である彼は、死の気配を実感しつつ、詩作を続けてゆくのでした。
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