今日は、水野仙子の「脱殼」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
心情の変化を、不思議な文体で構成している小説でした。ところどころで、詩的な表現に目が止まって、その情感に魅入られます。展開が奇妙で、表現が大げさだからなのか、前半は読みにくいところがあるんですが、全体を読み通してみると、心もちの微妙な変化を捉えた部分部分の言葉が魅力的な、詩小説になっているように思う短編でした。本文をいくつか抜粋してみると、こうです。
猫でも貰はう と ふと思ひついたことが 一つの楽しみになつて /
どんな言葉をもつて、あの人を迎へるだらうと、自分で自分の心を想像などしながら、寝巻も着替へないで、そのまゝ床の中に潜り込んでしまふ /
私の心は、人気のない大きな伽藍のやうに空虚になつて、どんなかすかな物音にも、慄へるやうな反響を全身に伝へる /
私は私の耳が、丁度猫の耳のそれのやうに、ひくひくと動くやうにさへ思ふ。
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