今日は、壺井榮の「風」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
関東大震災の3年後、修造という青年は、ふるさとの幼なじみである茂緒という女性を東京に呼びよせます。貧しい二人はそこから突然の新婚生活をはじめるのでした。仕事も無い、家も無い、家具も無い、ツテも無いというところから二人で貸家を探しはじめるところから物語が始まります。なんだか公共放送の朝の連続ドラマのような、朗らかな二人暮らしが描写されてゆきます。洗濯するための道具さえなくって汚れを落とすことができないくらい貧しい暮らしのなかでも自由に生きて交友を続ける男女の姿が活写される、秀逸な小説に思いました。壺井榮は生活史の細やかな描写がみごとで、当時の貧しい世帯がどのように引っ越して、どうやってお金を工面して、どう暮らしたのかを丁寧に描きだしています。
それから、東京の新しい文人たちがどのように生きてどういう交際を繰り広げたのかが記されてゆきます。
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追記 wikipediaにも載っている、黒色青年連盟の起こした壺井繁治襲撃事件のことも記されていました。