今日は、横光利一の「鳥」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
これはいろいろ奇妙な小説なんです。まず改行処理とかが無いのがよくわからないです。ストーリーとしては、漱石がよく書いた、男女の三角関係を描いているんですけど、なんだか関係性のねじれがすごいんです。
近代文学の魅力は、未成熟な社会とぶつかって原始的な問題で悩んでいる登場人物たちが描きだされる、そこにヒントや気づきがある、というところがあると思うんですけど……どうも今この2020年の4月に読むと、いまの社会の方が、もっと厳しいんじゃないかとか、普段と逆の感想になるんです。作中に描かれているような、嫉妬とか他者との関係に悩むというのは、けっこうぜいたくな話しなんだなとか、思いました。
人間関係がねじれ続けて、三回転くらいして意味不明になっている、その描写がおもしろかったです。本文こうです。
Qが陰でひそかに私の悪口をいったことが、今は私に彼への尊敬の念を増さしめるだけとなった。
ふつう悪口を言われたらキライになるのに、これが一八〇度転倒して……どんどん意味不明な感情が描かれるようになる。このあとの終盤の展開がおもしろかったです。
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