外科室 泉鏡花

 今日は、泉鏡花の「外科室」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 泉鏡花といえば、その名の通りというのか、自然界と性を美しく描きだす、耽美的な近代作家だと思うのですが、今回は、外科手術をする女性を観察させてもらった画家が、その細部を克明に描きだした、妖しい文学作品となっていました。
 麻酔で女性が眠りはじめるところから描きだされるのかと思いきや、麻酔も無しで自らの人体を切り刻むように婦人は要請するのでした。麻酔によって意識が朦朧としてうわごとを言いはじめてしまうところを、家族や親友に見られたくないという理由で、麻酔無しの、ありえない開胸手術が執り行われ、画家の「私」はこれをまのあたりにして慄然とします……。
 

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追記  以降ネタバレを含みますので、近日中に読み終える予定のかたは、ご注意ねがいます。執刀医の高峰はじつは、この婦人と九年前に邂逅しており、まるでダンテとベアトリーチェの映し鏡のように、貴船伯爵夫人は、一瞬のうちに永劫の恋に落ちていたのでした……高峰が婦人の胸を開くところを見届けたいがゆえに、彼女は麻酔を拒絶したのです。手術は思わぬ展開で失敗に終わり……凄惨な愛欲に塗れつつ婦人は身罷るので、ありました。