趣味の遺伝 夏目漱石

 今日は、夏目漱石の「趣味の遺伝」を公開します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 漱石は森鴎外と親しかった。鴎外は軍の要職についているわけで、それが本作に強い影響を与えているように思いました。この小説の序盤に、群衆の万歳によってかき消されそうになっている、ある気配を探っている、主人公はいったいなにを思って軍人たちの凱旋を眺めているのか、読んでゆくと「浩さん」という友人のことが記されてゆく。
 「浩さん」は戦争に行って帰ってこれなくなった。作中で浩さんの母が出てきて嘆く。どうも従軍中に喀血した正岡子規と、その家族の生き方を彷彿とさせるんです。子規のような生き方を志す明治生まれの男に漱石が語りかけている、そのために子規が実現できなかったところのイギリス的な恋愛表現が不幸の描写の後に書き継がれるのではないか、と思いました。
 あとこれだけ深刻な問題を記していっているのに、「人間はどこかに泥棒的分子がないと成功はしない」とか「泥棒気のない純粋の紳士は大抵行き倒れになる」とか、他にもあきらかに冗談を書いているところがあまたにあって、それに迫力がありました。
 異聞奇譚である「趣味の遺伝」の謎と、永井荷風の「濹東綺譚」にあらわれてくる謎には、なにかしらの関係性があるんじゃないかとか、いろいろな空想をしました。
 

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