今日は、坂口安吾の「青鬼の褌を洗う女」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
坂口安吾というと、随筆が有名なのですが、今回は戦後すぐの女性が主人公の、小説です。彼女は戦争時代のゴタゴタを回想してゆきます。
三木昇という映画俳優と友達になった。
という脇役が登場するさいしょの描写が面白かったです。戦争被害の描写はあきらかに事実に即したことを描いているようで、恐ろしい描写でした。彼女は戦争ですべてを失った。そのあとの文章がこうです。
「私にとっては私の無一物も私の新生のふりだしの姿であるにすぎず、そして人々の無一物は私のふりだしにつきあってくれる味方の」……という記述が印象に残りました。災後の描写として浮気のことを何度も描きだす、というのが坂口安吾の自然な物語表現だったのだろうと思うんですけど、これは現代の週刊誌でもたしかにそうなのではないかと思いました。
美醜についてとか、主人公がどうしていつもニッコリ笑うのかとか、平生の無口な人間の言葉の仕組みとかが、作中に事細かに描かれていて興味深かったです。
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