末っ子 山本周五郎

 今日は、山本周五郎の「末っ子」を配信します。縦書き表示で、全文読めますよ。
 武家に育った末っ子の小出平五は、侍なのに商人の才覚があって、若いころから転売や骨董商の副業をしていて、将来のためのお金を貯めつづけていた。
 骨董の目利きが得意な平五は、叔父のために「新庄家伝来の家宝である古刀の貞宗」を、用意してきた。
 これがじつは……
 

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追記   ここからはネタバレなので、近日中に読み終える予定のかたはご注意願います。骨董の目利きが得意な平五は、叔父のために「新庄家伝来の家宝である古刀の貞宗」を、用意してきた。
 これが骨董屋から安値で買った名刀の贋作なのでした。贋作を真作であるとだましてみんなに披露して、親戚縁者を驚かせてやろうと思っていたんです。だがそこに本物の骨董鑑定家である多賀が、予想外にやって来てしまった。平五は叔父に大迷惑をかけてしまったと思ったんですが……多賀の鑑定では、じつはこの二束三文で売られていた古刀は、正宗の逸品であるということ明らかになった。となると元の持ち主に、この骨董が名刀であったことを伝えないとならなくなった。この名刀をどう扱うかで逡巡していたところ、運悪く父親が、この全てのいきさつを知ってしまって怒り狂って勘当すると言いだしてしまった。
 父は、平五をあまやかして育てたから、転売屋になったんだと大いに怒った。平五はここで、侍を辞めて家を出て、道具屋をすることを決心します。平五の発言はこうです。
「みんなで私があまやかされていると云いながら、誰一人あまやかしはしなかった、いちどでも私をあまえさせてくれたことがありましたか、お母さん、そんな記憶がいちどでもありますか」「私は末っ子で三文安いかもしれないが、決してあまやかされたことはない、ということをわかってもらえばいいんです、では失礼します」
 平五は家を出て道具屋になる。名刀を元の家の持ち主のところへ持っていった。この細江の家には、幼なじみで嫁にしたい「みの」も居るのでした。
「みのを嫁に欲しい」と平五は言うのですが、母のしのぶは事情を全て聞いてから「お断わり致します」と言うのでした。しのぶは侍魂の色濃い母で、絶対に譲らないので、平五はもはや諦めるしかなかった。
 ところがそのちょっとあとに「みの」が平五を追いかけて来た。彼女も勘当されてでも、結婚がしたかったという、妙な展開になるのでした。
 平五は妻を娶って骨董屋として成功した。まんじゅうの転売からはじめた商売は、ここに成就したのでした。